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おもちゃの兵隊、宇宙をめざすの曲

Abstract: In this article, the main theme of the 1987 anime film “Royal Space Force” is analyzed. The primary section of this piece modulates twice within just nine measures, shifting from E-flat major to C major to D major. It is an established empirical fact that transposing a melody from the major scale down by a minor third imbues it with a somewhat melancholic quality. Conversely, transposing it up by a major second gives it a more forward-looking feel. Additionally, transposing it up by a minor second sounds as if it is revealing its true form by shedding a layer. The composer of this piece utilizes this technique, as evidenced by the repetition of modulation from E-flat major to C major to D major. In the film “Royal Space Force,” the protagonist and their comrades are ostensibly student officers training for high-ranking positions, yet they are scorned within the military as a useless puppet corps, leading to indolent days filled with inner conflict. Despite this, they have not abandoned their aspiration to reach space, which the composer seems to depict through this looped modulation. Detailed analysis will follow in forthcoming articles.


香港のリューイチ・サカモト崇拝者さんからアニメ映画「王立宇宙軍」(1987年)のサウンドトラックに関する有益な情報をいただきました。公開当時の日本の音楽雑誌での特集です。

断片的にですが楽譜と、龍一&そのお仲間の方々の自作解題付きです。これはありがたいです。私はモーツァルトではないので(いつものフレーズですみません)耳ですべて記憶して譜面にするなんて芸当はできません。



理想を言わせてもらうと音楽シーケンサーで再生できるようファイル化してもらえると、分析に専念できてもっとありがたかったりします。

メインテーマのメイン部分を、根性でシーケンサーに入力してみたので、私のこの地味な努力にどうか敬意を表しつつお聴きください。


こんな風に転調しています。E♭長調 → C長調 → D長調。


作曲者はずっと後(2005年11月、ニューヨーク)に、緑で括った部分について日本のある音楽分析者から訊ねられて「うーんよくわかんないなドミナントかなあ」ともごもご語っていました。どうやらC長調(青)からD長調(緑)に転調しているって、ご本人が気づいていないようでした。緑のところもC長調のままだって思い込んでるの。

私は気づいたもんね。


長音階の旋律たとえばドミソを、短三度下に移調して弾いてみてください。同じドミソでも、少し悲し気に聞こえませんか。マイナー調っぽくなるの。

赤パート→青パートの転調がそれです。


それから長音階の旋律たとえばドミソを、長二度上に移調して弾いてみてください。多少前向きな感じ、すると思います。

以下の青パート→緑パートがそれにあたります。


さらに短二度上に移調させると、どうなるでしょう? やってみてください皮がぺりっと剥けて元の姿に戻ったぞみたいな感じ、すると思います。

以下の緑→赤の転調がそれにあたります。


通しで聴きかえしてみましょう。


(二周目の最終小節で音が強くなるのは、ここの譜面上にタイがうまく結べなかったからです。私がシーケンサー操作に不慣れだから・・・だと思います、工夫すればきっとできるのでしょうが現時点で自分はその技を知らないので今は大目にみてやってください)


長音階の旋律が、短三度下がりして少し悲し気になって、次に長二度上りして前向きに気持ちが切り替わり、短二度上昇で皮がむけて元の地平に戻る・・・

これが繰り返される。視覚化するとこんな感じでしょうか。


怠惰な日々をうだうだと過ごす、士官候補生なんだか防衛大学校の新設どマイナー学部生なんだかわからない、おもちゃの兵隊の皆さんが、どうせおれらはおもちゃの兵隊だよ知ってるよだからせいぜいチンドン屋でマーチして納税者の皆さんを楽しませてあげるのさみたいな怠惰な日々をうだうだと繰り返すなかに、こころざしはすててないぞ空を見上げる心はいつだっていっしょさみたいな青臭さを、素朴な転調技で照れ隠しする、そんな感じの曲に思えます。

分析するとこの仕掛けがちゃんとわかる(少なくとも私は分析できちゃいました)のに、とうの作曲者がそこをわかっていないのは、面白いですね。



つづくかもしれないぞ

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