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「もしも量子力学を理解できたと思ったならば...それは量子力学を理解できていない証拠だ」

この波動関数をどうやったらアニメーションにできるか、昨日に引き続き悪戦苦闘中です。


$${ψ_{α_1α_2α_3}=exp.i(α_1x+α_2y+α_3z-Et)/h}$$

$${{α_1}^2 + {α_2}^2 + {α_3}^2 - \frac{E^2}{c^2} + m^2 c^2 = 0}$$


今までずっと Python のライブラリのひとつ「Manim」で視覚化しようと奮闘して、素朴なものは作れるようになったのですが…

上の波動関数、それも z 軸方向にもプロットするものとなると、スクリプトをどういじってもエラー判定されてしまいます。

ChatGPTに作成させて、エラーが出るたびに作り直させましたが、この作業が無限ループに入ってしまって、それで Manimフォーラム(英語です)に質問を投稿しました。

「Discordに来いや」と言われたのでですこーどとかいう場所にどすこーいと入会して、リアルタイムでテキストチャット(英語ですしつこくいっておきます)してみて「変なスクリプトやね。わけわからんコマンドが入っとる。なにChatGPTに作らせてる?ハルシネーションだわこれ」と言われました。

Manim の最新版に ChatGPT のスクリプト作成能力が対応できていないせいかなーと私は思っていましたが「そのセンはないね。もともとおかしいよこのスクリプト」だそうです。

今日再び ChatGPT とやり取りするうちに、あることに気づきました。

この子が作るスクリプト、どうやら Manim ではなく Pythonライブラリの別のツールを想定しているようなのです。

問い詰めたら「そうでげす」と反応されました。「matplotlib と numpy を使う想定で作った」

前者は線型代数やベクトル解析向けで、後者は2D、3Dでのプロット作図用であると。


それやったら manim 用ではなく「Python用にスクリプト書いてちょ」と私が指示だしていればそれで済む話なわけですよ。

そうすれば、pythonライブラリのどれを使うかは、ChatGPT が判断して「これとこれインストールしといてちょ」と私に指示してくれるわけだから。

そういうAHOな気づきを経て、さらにまたいろいろやり取りを繰り返した末に、ポール君(24歳)の波動関数を、なんとか動画化しました。

実はこれを作る前に、z軸方向はプロットしないものも作ったのですが、これと基本的に同じアニメーションになって、しかももっとすっきりしていました。

x, y, z は互いに対称なのでこういう風に作画されると、少々とまどいます。

こんな風に今日も悪戦苦闘中です。その汗のなかから、見えてきたものもあります。

ポール・ディラックくんの脳裏には、くだんの波動関数がどういう波を描いているのか、その絵はおそらくいっさい浮かんでいなかったんだろうなって。

量子力学の本質は波動だってことは、同1926年にシュレディンガーが、変分法を使って(本当はそれと違う技を使っていたのですがそのことは過去に何度か触れたのでここでは語らない)波動関数を導出してより、当時の前衛たちのあいだでは急速に受け入れられていました。

ただこの波動関数が、どういう風に波を描いているのか、そもそも何の波なのか、シュもポールもわからないまま、数式の形式から議論していたのです。

もし1926年当時の彼らに、先の GIFアニメ を見せて「こんな波です」と紹介しても、全員が❓だったと思います。

この波動関数を二乗すると存在確率になる!と言い出した、あのマックス・ボルンにこのアニメを見せても、やはり❓顔だったことでしょう。

ちなみに二次元平面にプロットすると、こんな風でした。今日最初に作ったものです。

これを立体化すると、こんな風になるわけですよ。先ほどお見せしましたが再度お見せします。

いったい何なんでしょうねこの波は?

気体分子運動にシュレディンガー方程式をあてがうとなぜか最後に理想気体の状態方程式 $${PV=nRT}$$ が導出できてしまうと、ポールくん(24歳)は論文で結論付けて、当時の前衛さんたちの目を点にしてみせました。

しかしその論証の仮定で現れる波動関数が、いったいどういう波を描いているのか、彼が一切イメージせず、そもそもいちいち気に留めていなかったことが、実際にアニメーションにしてみると、うかがえます。

これが仮に脳裏に浮かべられたとして(そんなのフォン=ノイマンでも不可能だと思うし)生真面目に「この波は何を表しているのであろう」と思索していったら、とても先には進めなかった。

深入りしない彼の簡素な思考スタイルが、吉と出たのだなって。

後にファインマンが「量子力学がわかるという輩は、本当はわかっていない」("If you think you understand quantum mechanics, you don't understand quantum mechanics.")と発言しています。たぶんこれのことでしょうね。具体的な波を描けないまま、数式でとにかく議論していくしかない世界だと。

それに精一杯抗ったのが、かのファインマン・ダイアグラムと経路積分だったのかなーって気がします。


アインシュタインは具体的な例を常に思い浮かべて思索するひとでした。数式が主戦場と化している不思議のくに・量子力学を、アルくんが嫌った気持ちがわかる気持ちですわ!


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