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Mid90sを観て

たまたま暇潰しで見た映画に感動してしまうことってありますよね。
昔、いい感じになった女性の家でアバターを時間潰しに観始めたら、あまりの感動で相手そっちのけで映画に2時間半集中し、その後もずっとアバターの話をしてしまったことがありました。

そう、今回もルームメイトと一本映画を見た後、なんとなく時間があまり、適当にみたmid90sが本当に、心にヒットしてしまいました。
(1本目に見たのは中川龍太郎監督のわたしは光をにぎっているという映画でした。こちらも悪い映画ではなかったです。一応名誉のために。)

映像とセリフと音楽が全て完璧で、久しぶりに観終わってから半日経っても心に残っている映画でした。


いい映画っていくつか基準があると思っていまして、(完全に主観です)
1.プロットがシンプルかつよくできている; 2.映像が綺麗で没入できるものである; 3.音楽が良質、という3つくらいの要素がとても大切だと感じています。

「好きな映画」と「いい映画」は絶対的に境界線があると思っていて、前者は誰とどこで観たとか、内容が自分に近かったりだとか主観的な要素が多いのに対し、後者は客観的に時代の世相を反映しつつ誰がみても上の3条件を達成しているものだと思います。(美学でいうDantoのInstitutional Theoriesに近い)

Mid90sに関しては、1時間半弱の時間の制限の中でプロットと音楽、映像の具合が黒澤明の「生きる」に匹敵するくらい計算し尽くされていたと思います。映像は16mフィルムで撮影されており、音楽とファッションも厳選されていて痺れました。

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プロットは1990年代、ロサンゼルスを舞台に少年が思春期の中、社会と対峙し成長していく話。主人公であるスティービーは母子家庭であり母親と兄、イアンとともに過ごしています。兄に憧れる気持ちと同時に恐れる気持ち。兄はおそらくあまり気が強い方ではなく内気な性格で、けれど兄としてのプライドから弟に強く当たってしまう。母親も母子家庭ながらも愛を持って二人に接しているようでした。スティービーはとある機会からスケボーショップの仲間と連むようになり、多少の罪悪感はありつつ、徐々に仲間に認められていき酒やドラッグ、女性関係を経験していくことになります。そんな仲間達も変わっていき、、という内容です。

まず一つ目に父性の欠如。おそらく母子家庭で父親と接する機会がなかったため、父性的な何か、男性社会の生き方みたいなものをスケボーショップの悪いお兄ちゃんたちから学んでいくことになったのでしょう。現代日本社会にもある程度通じる問題かなと思いました。母性と父性の境界が薄くなって社会もホワイト化してくるとどんな問題が起きるか、ということを考えさせられました。ある程度悪いことって成長の中で必要ですからね。

この中で見ていて心痛かったのがお兄ちゃんの立ち位置。弟が悪友と連むようになり、酔っ払って帰ってきた際殴りかかると「友達も女もいないくせに」と言われ、泣きながら叫ぶシーンがあります。兄からすると弟は自分ではなく悪友をとった、そして自分をこされたと思ったのでしょうか。兄弟はいないですが心にくるシーンでした。

二つ目に「友情の変化」。個性豊かな5人の友情関係が崩れていく様子がきつく、でもリアルでした。リーダー格であるレイはスケボーに熱中していき、プロスケーターたちとの交流を深めていきます。一方2番手である口の悪いファックシットはパーティ好きでスケボーよりも享楽的な遊びに熱中していく。そんな2人の溝を全体が感じる演技も圧巻でした。楽しい時間はずっとは続かない。おそらく二人の後ろにも家庭や人種、様々な事情がある。ラストはチームの一人、頭の悪い4th gradeが撮った自主映画を皆で観るシーンで終わっていく。そこには5人の笑顔や悪行、純粋な友情が映されおり、泣きそうになってしまった。

いい映画でした。

You're like at the age before guys become d*cks




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