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The Triple Point of Water / Mandrake Handshake

楽器奏者の端くれとして、音楽を演奏者目線で聴くことが当然ある。目線の種類にもいろいろあって、「このフレーズかっこいいなぁ、俺も弾きたいなぁ」みたいな目線、ライブで観客と対峙してるイメージの目線、あとはスタジオでメンバー同士が向き合って演奏しているときの目線がある。

それぞれの目線は、どんな目線で聴こうと自分が選んで聴けるわけじゃなくて、自然とその目線が頭の中にイメージとして浮かんでくるものなので、音楽の内容によって勝手に変わる。

そのなかでもスタジオでメンバー同士が向き合って演奏している目線で音楽を聴くことになった場合に、個人的にはいちばん楽しいというか、いいバンドだなぁと思うことが多い。

バンドの活動が生活の軸になっていた20代のころ、週に2、3回のスタジオ練習をしていたので、それも同じ曲をとにかく何回も何回も演奏するような練習をしていた俺たちにとって、基本的に練習は楽しいものではなかった。ただ、今日は妙に演奏すればするほどスタジオ内の空気が良くっていくということがときどきあった。

逆に言えば、そうじゃないことのほうが多くて、そういときはどうすればいい演奏ができるのかを、探手探りするように楽器を演奏するということを繰り返していた。

自分を含めたメンバーのコンディション、スタジオの環境など、掛け合わせたらキリがないくらいの要因があるので、良い時も悪いときも明確に原因を見つけてその日中に解決させることはなかなかむずかしい。

音楽を聴いていて、メンバー同士が向き合って演奏しているイメージが浮かんでくる場合は、自分たちが良い練習ができたときの記憶に結びついているのだと思う。Mandrake Handshake の音楽は、まさしくそういうイメージを浮かばせる。

たぶんこの人たちは、良いスタジオの空気を発見する方法を知っているのだと思う。セッション的要素が多くて、演奏がちゃんとグルーヴしないとやっていて辛くなるだろうから、その方法が見つかっていないとバンドとしてなかなかしんどいもにのがあるだろうから、そのポイントがバチっと合う、とてもいいメンバーたちで作ることができた、内側に対していいバンドなんだろうなと思う。

ある意味では刹那的で、危うくて、そんなかっこよさがあるんじゃないだろうかと思っている。

あと、バンド名がすごくいい。

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