岡山市に「こども園」が増えている。その理由を岡山っ子育成局に聞いてきた。
岡山県岡山市で「こども園」が増えていることをご存知ですか?
共働き世帯の増加と保育園の不足により、近年全国で需要が高まっている「認定こども園」の存在。
岡山市では、現在認定こども園の数を増やそうと、こども園推進課のみなさんが日々奮闘しています。
「こども園を増やすことで、どんないいことがあるんだろう?」という問いを胸に、岡山っ子育成局のみなさんのお話を伺いました。
岡山っ子育成局について
岡山市において、保育・幼児教育、子どものための施設の利用支援、こども園の整備、地域における子育て支援、青少年育成、こども福祉などを担当している部署。
取材では、こども園推進課参事の田中哲也さん、こども園推進課・副主査の流尾正亮さん、幼保運営課・保育専門監の鳥羽美稚子さん、幼保運営課・幼児教育課専門監の原田利枝さんにお話を伺いました。
認定こども園の特徴とは?
——本日はよろしくお願いします。まず、こども園について簡単に教えてください。
田中さん(以下敬称略):認定こども園は、幼稚園と保育園の両方の良さを併せ持ち、教育・保育を一体的に行う施設です。保護者の就労の有無にかかわらず利用することができ、幼稚園要件と保育園要件の子どもが同じクラスで生活することが特徴です。
——こども園整備は、待機児童問題の解決のために進めているのですか?
田中:近年、保育園のニーズが高まる一方で、幼稚園の利用者数が減少する傾向となっています。
岡山市では、このような就学前施設に対する保護者ニーズの変化に対応するため、また、一定規模での集団教育・保育を行うことができる環境を整えるため、両方の機能を合わせ持つ幼保連携型認定こども園への移行を進めています。
こども園の整備にあわせて保育の受け皿数を増やすことができる場合もありますが、待機児童問題の解決だけを目的としているものではありません。
岡山市の取り組みと待機児童問題
——岡山市での待機児童問題がかなり改善されたようですが、どのような取り組みの成果なのでしょうか?
田中:働きたいという保護者の思いに応えるため、主に認可保育園等の新設募集を行うことや既存施設での受入れ数を増やしていただくことで、保育の受け皿確保を進めてきました。また、民間保育士の処遇改善を行うなど、保育士確保にも取り組んでいます。
令和3年4月での待機児数は31人となり、ピークだった平成29年4月の849人を思えば概ね解消という状況になったと考えています。
また、岡山市では、限られた人員や財源で、将来にわたり、安定的に良質な就学前教育・保育を提供していくため、セーフティネット等、公としての役割を担う市立認定こども園を36ある中学校区ごとに1園ずつ整備を進めるとともに、その他の市立幼稚園・保育園については、民でできることは民に任せることを基本に民営化や統廃合を検討し、施設配置の最適化を進めています。
地域や保護者の理解があってこそのこども園
——こども園の整備はどのように行うのでしょうか?新設より増築が主流なのですか?
流尾:市立認定こども園を整備する場合は、原則として、移行する幼稚園や保育園の敷地や園舎を有効活用することとしています。なお、新設か増築かについては、定員数に応じた園舎規模や園庭面積が確保できるか、既存園舎の築後年数はどうか、コスト比較においてどちらが有利かといった観点から判断しています。
いずれにしても数年に渡る工事期間が必要となるため、保護者や地域の方に向けた説明会を開催し、こども園移行にご理解をいただけるよう丁寧な説明に努めています。
——こども園を作ることに関して、保護者の方から、他にどんな質問や懸念点が寄せられますか。
流尾:幼稚園要件と保育園要件の子どもが同じクラスで生活することになりますが、園での生活時間が異なるなど、一日の生活スタイルに違いがあるため、子どもたちが新しい環境になじめるのかといったご心配をいただくことがあります。
園の先生方は、環境の変化による子どもたちへの影響がないか注意しながら、子どもたちが安全で快適に生活することができるよう工夫しています。
また、こども園に移行する多くの場合、工事期間中は仮設園舎で生活していただくことになりますが、仮設園舎で子どもたちが安全に生活することができるのかといったご質問をいただくことがあります。そのほか、園庭の利用の制限や、園行事のやり方を変えなければならない状況もあるので、子どもたちへの影響を心配されるご意見をいただくことがあります。
市では、保護者の方の不安を少しでも解消することができるよう、仮設園舎の設置や設備の整備に配慮しています。
岡山市こども園における質の高い教育・保育とは
——こども園における質の高い幼児期の学校教育と保育の提供、とは具体的にどのような内容なのでしょうか?
原田:岡山市立こども園では、幼保連携型認定こども園教育・保育要領に加えて、岡山っ子育成条例や岡山式カリキュラムを共有しています。
鳥羽:それに基づいて、育てたい子ども像や、教育において大切にしたいことを共有しています。就学前の教育は、人間の根幹の部分を作るもの。子どもとの信頼関係を大切に、きめ細やかに子どもの気持ちを尊重する教育を行っています。
就学前教育は学校で行われる学力テストのように、教育の成果が数値化されるものではないので、「活動を通して、子どもがどこまで育ったか」を測ることはできません。しかし、各園の教育目標に向かって、知識・技能の基礎や学びに向かう力、非認知能力等が育まれるような教育・保育を心掛けています。
こども園にも公立園と私立園があり、それぞれ教育の特徴は異なります。保護者の方はそれぞれの考えやニーズに合わせて園を選びますし、何を幼稚園、保育園、こども園に求めるかは違います。それぞれの保護者の方々にとってベストな選択をしていただけるようにサポートするのが、行政の役割だと考えています。
「幼稚園・保育園・こども園」それぞれのかたち
——岡山市はどうしてこども園に注力するようになったのですか?
田中:幼稚園、保育園に対する保護者ニーズの変化に対応するとともに、施設を集約できる場合は効率的な運営につなげることができるからです。また、就学前人口が大きく減少する地域などでは、一定規模での集団教育・保育を維持することができると考えています。
市立の幼稚園、保育園については、官民の役割を考慮しながら、こども園への移行を進めているところですが、私立の幼稚園、保育園、こども園とともに社会全体で子育て家庭を支援できる環境になればよいと考えています。
——岡山市の取り組みは、他の地域のこども園推進に応用することはできると思いますか?
流尾:岡山市の取り組みも「目標を達成しました!」という状況ではありませんので、言えることがあるかどうかわかりません。
大切にしているのは、保護者や地域の方に丁寧な説明や対応を心掛け、理解をいただきながら計画を進めるようにしていることです。幼稚園や保育園は、長い間、保護者や地域の方に支えられて運営され、地域とのつながりが強い施設です。こども園へ移行した後も、地域の方に愛される施設になってほしいと思っています。
また、こども園移行に向けた説明会では、環境の変化を不安に思われる方や、こども園移行の必要性について疑問を持たれる方もおられます。岡山市では、データに基づく分かりやすい資料作りに努めながら、ご意見やご質問に丁寧にお答えし、コミュニケーションを大事にしています。
インタビューを終えて
こども園は、社会的に取り上げられている待機児童問題を解決する手段だと考えられています。しかし、実際には、未来を担う子どもたちの最初の学び場としての選択肢であり、幼稚園、保育園、こども園が共存していくことが大切です。
また、岡山市のこども園推進課のみなさんが、しっかりと保護者や地域の方々の声にも耳を傾け、多くの人に愛されるこども園を作ろうとされている姿勢が印象的でした。
実際に、子どもたちが楽しめるように工事中の壁にみんなでカラフルにお絵かきをするイベントが開催されたことも。
時代に合わせて、子育ての形も変わり、選択肢が広がっているように感じました。
「教育」って本当に幅広い。 僕たちの観点で、「この人は教育者だな〜」って思った瀬戸内エリアの人を取材してお届けします👇
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