「いかに世界で勝つか?にしか興味がなくて」SMZ株式会社CEO清水正輝インタビュー
はじめに
この記事は、
となっています。
今回のインタビューは、電動モビリティの開発・販売事業を展開するSMZ株式会社CEOの清水正輝さんにお話を伺いました。
”次世代の電動モビリティ” 「事業内容」
「まずは詳しい事業内容からお聞きしてもいいでしょうか?」
「はい、うちは電動モビリティの開発と販売をやっておりまして、今はeスクーター、電動キックボードとかのマイクロモビリティを中心とした次世代の電動モビリティの開発をやっています。」
「次世代の、というのはどういうことなんでしょうか?」
「いわゆる電動っていう意味でもそうなんですけど、次の時代で広く使われる、今までにないようなモビリティっていうのを作っています」
「なるほど、それがキックボードになるんですね。」
「キックボードに乗る文化って日本じゃあんまりないと思うんですけど、アメリカとかだとふつうに使われてるんです。東京でもシェアリングサービスが普及してきているんですけど、便利なんですよ。めちゃくちゃ。
すごく快適で、便利で、人々の新しい移動手段になるなっていうのは昔から感じています。」
「アメリカというと、グローバルなところも視野に入れての展開をしているんですね。」
「そうですね。うちはいかにグローバルで勝つか?に力を入れてます。」
「あまりふだんキックボードに馴染みが無くて、どんな所が便利な乗り物なんですか?」
「ふだん、自転車って乗ります?」
「あんまり乗らないんですよね…….」
「あんま乗らないですか笑。自転車もいいものなんですけど、やっぱり漕がずにスーッと進むってめっちゃ楽なんです。移動の快適性が圧倒的に違ってきて。
もちろんペダルを漕いだり運動したりしたい人もいるので、そういう人達は自転車だったり歩いたりすればいいと思うんですけど、より快適に、効率的に移動したいっていう人達にはすごいもってこいといいますか。」
「最近日本でも法改正がされて、16歳以上であれば免許不要でヘルメットも努力義務で、誰でも自転車みたいな感覚で乗れるようになってきたので。」
「たしかに、自転車を漕いで移動し続けるのが体力的にしんどい時ってある気がします。」
「具体的にはどんな製品を開発しているんですか?」
「ちょっとごちゃついていますが、国内向けのVERACITYというブランドに、原付モデルのパワフルなVXとコンパクトなV-Liteがあります。
グローバル向けに今開発しているのが、Arma。世界最小のA4サイズに折りたためる電動キックボードっていうのを作っています。」
「折りたためるんですか!?」
「折りたためます。どこにでも持ち運べるポータブルモビリティっていうのを、まだ世界にその市場が無いんですけど、その市場ごと作りに行こうとしています。」
「A4サイズだったら、鞄の中にしまうことなんかもできるわけですよね。電動モビリティのパイオニアって感じですね!」
「はい、パイオニアになろうとしてるっていうフェーズです。」
実際にSMZさんの私有地の中でVERACITY V-Liteを運転させてもらいました。
「キックボードって聞いて想像してたより全然速度出ますね!?ほんとに自転車くらいのスピードでめっちゃ楽しい~~!!」
「これって、充電とかはどうするんですか?」
「本体から取り外したバッテリーを室内に持って帰って充電する感じですね。なので、マンションの人とかも充電がしやすいです。」
「バッテリーを取り外せないタイプだったら、マンションの駐輪場を使っている人は部屋まで本体ごと持って行かないと充電ができなくて、大変なので。」
「それは部屋が上層階だと本当に面倒そうですね……」
「ユーザーのことを考えた設計になっているんですね!」
”いかにして、世界で勝つか?” 「モビリティへの想いと、キックボードをつくるわけ。」
「海外だと、キックボードは日本よりも普及しているものなんですね。」
「そうですね。良くも悪くも。」
「良くも悪くも?」
「アメリカとかは2017年ごろからキックボードのシェアリングサービスが急拡大して、事業者が9ヶ月でユニコーン企業になるとか、物凄い成長速度だったんです。
だけど、今あらゆる問題でシェアリングが禁止の地域が増えていて、フランスのパリではキックボードがズラーっと並んでいたり、捨てられていたりするのが景観が崩されると、禁止に。他にも、さっき言ったシェアリングサービスで急成長したBIRDっていう会社は最近経営破綻して、結構色々。」
「中々厳しい風が吹いてるところもあるんですね。」
「もちろん人々には普及していってるんですけど、シェアリングサービスでは厳しい側面も結構あるというところです。」
「そんな厳しい流れがあってなお、グローバルでの展開を視野に入れているのはどうしてなんでしょうか?」
「とにかく、ぼくはいかに世界で勝つプロダクトを作るか?にしか興味が無くて、だから、別に電動キックボードじゃなくても良かったんです。
どうやったら世界でナンバー1を取れるかにひたすらフォーカスを当ててものづくりの企画をやっていて。
もともとソフトウェアのエンジニアだったので、最初はIT系で企んでいたんですけど、僕も乗り物が好きだったんで、ピボットと言いますか、完全に畑違いですけど大きく進路を変更してものづくりで日本から世界一を取ろうというような路線になったわけです。」
「最初から、キックボードでいこう!というつもりではなかったんですね。」
「昔から乗り物は好きだったんですか?」
「もう小っちゃいころから大好きで、乗り回してましたね。」
「父親とか兄が自動車関係で働いていて、うちにもスポーツカーとかバイクがたくさんある環境で育ってきたので、もちろん自分も大好きで。」
「家にバイクや車がいっぱいあるって、なんかすごい最高ですね…….!」
「山に持って行って乗ったり、その辺で乗り回したり。」
「えっ、子供の頃からその辺で乗ってたんですか?」
「金光町はオッケーなんです(冗談)」
「そうなんだ!笑」
「そうなんです笑。」
「パソコンで将来18歳になったら乗りたい車をひたすら調べたり、車屋さんにこういう改造したらどのくらいかかりますか?っていう見積り依頼をしたりとかは小5~6のときからずっとやってましたね。」
「あの、ここの駐車場に止めてあったかっこいい車って清水さんのものなんですか?」
「あれは代車です。ぼくも欲しい車とかめっちゃあるんですけど、今は欲しいものを好きなように手に入れていい時期じゃないので。」
「ひたむきな姿勢ですね……カッコいい。」
「苦しいですけどね。」
「学生時代の清水さんについても聞きたいです。高校生活はどんな感じだったんですか?」
「ずっと遊んでましたね。バイクです。」
「あまり詳しくないんですが、それはもう乗り回すみたいな?」
「そうですね、自分たちでカスタマイズとか。本当に大好きでしたね。」
「一緒にバイクで遊ぶ仲間もいたんですね。
あまり馴染みがないものでイメージが付きづらいんですが、どういう遊びをするんですか?」
「もうひたすらツーリング行ったり走ったりです。ただ目的地もなく走ることがすごい楽しかったんです。本当に楽しかった。」
「目的地もなく走る、ロマンがありますね…….!」
「いわゆるカスタマイズとか、メカを改造する楽しさ。みたいなものってなんとなくアニメや漫画の中の世界のような気がしていたんですが、実際にやっても楽しいことなんですね。」
「もちろん楽しいと思います。ただ好き嫌いはありますし、中には整備やカスタマイズができなくて、やってほしいっていう人のを整備してあげたりみたいなこともあります。」
「聞いてるだけでとても楽しそうですね…….!」
「高校も工業系のところに進まれたんですか?」
「岡山山陽の自動車科です。すごいのが、基本的に5教科が英語と国語しかないんですよ。
あとは全部車の勉強なんです。エンジンとか、燃焼とか。」
「2教科じゃないですか。自動車に関わる上で必要なことを学ぶのが中心なんですね。」
「いちおう名目としては、整備士になるために車について勉強して整備士資格を取ろうっていう学校なので。」
「自動車について学ぶところに入ったのに、今度はまた、なぜソフトウェアにまつわるお仕事をすることになったんですか?」
「バイクはめちゃくちゃ好きで触るのも楽しかったんですけど、兄がトヨタの整備士をやっているんです。それで、「好きなことでも、仕事にしたらちょっと違うぞ。」っていうことを教えてもらったんですね。」
「趣味でやってたことを仕事にしたらなんだか楽しめなくなった、というのはよく聞く話ではありますよね。」
「ですです。で、たしかに自分のバイク触るのは好きだったんですけど、人から頼まれてカスタマイズとか修理をするのがめちゃくちゃ楽しかったわけじゃないんですよ。」
「それでなんか整備士は違うかなあ。って悩んでいて、そのときにもう一つ好きなものがあったんです。それが、パソコンです。」
「バイクとか乗ってる一方で家帰ったら自作のPCでオンラインゲーム。みたいなのも中学生のころからやってて。だからパソコンは好きだったんですけど、プログラミングの知識とか、そもそもプログラミングっていうものの存在を知らなかったんです。それを19歳くらいのときから、ハッカー、カッコええなって。」
「ハッカー!?たしかにすごいかっこいいですけど!?」
「かっこいいですよね。かっこいいなあと思ってサイバーセキュリティの本を手に取ったら、これめっちゃおもしろそうじゃん!って。みたいなところからプログラミングをめっちゃ勉強し始めて、ソフトエンジニアになったって感じです。」
「フリーランスみたいな形でお仕事をされてたんですか?」
「最初はもちろん就職したんですけど、1年半くらいですぐやめて独立して、フリーランスです。あとは東京行って。」
「なるほど。フリーランスになったことにはどういった背景が?」
「そもそも、会社に縛られるとかあんまり好きじゃないんですよ。
経営者になりたい気持ちは10代前半くらいからずっとあって、それは何かを成し遂げたいってよりかは、どっちかと言ったら欲しい車とかバイクのことを考えたら経営者にならないと絶対買えんっていうのがわかってたので。
基本的に誰かに言われてやるよりも自分で生み出したいっていうのはあって、独立しましたね。」
「そして乗り物に立ち返ってくるんですね。」
「結局4、5年くらいITで広く浅くいろんなプロジェクトを経験して、AIからデータ分析からwebアプリから、あらゆるソフトウェアの開発をさせてもらったんです。
だけど、起業するなら世界一が良かったんですよね。世界一のなにかを生み出したい、世界一のプロダクトを作りたい。だから、ITで日本から世界一を取るのはいろいろ考えたけど結構ハードル高くて、英語も出来なかったので、少なくとも僕じゃ無理だなって。」
「それで創業した会社もやめようかなと思ってたんですけど、できることにじゃなくて、好きなことにチャレンジしてみようかな。みたいなところですね。」
「その中で、企業としての成長をキックボードから図ろうという想いがあったんでしょうか?」
「背景としては、キックボードって見てわかる通りちっちゃくて、部品点数も車とかに比べたら全然少ないじゃないですか。だからいわゆる自動車とかに比べたらめちゃめちゃ安く作れるんですよね。」
「開発する上でのハードルはあまり高くないんですね。」
「その代わり参入障壁が低いので競合とかも多いんですけど。」
「僕の中では車とかバイクを作りたいという想いはありつつも、それを作るための知識も経験もなければ、どうしてもお金がなかったんです。できることからはじめようってことでキックボードからはじめたっていうのが最初の経緯で。」
「ふだん自分たちで作ったキックボードに乗ることもあるんですか?」
「ああ、全然乗ることありますよ。ぼくも他社さんのものをいっぱい乗り継いできた中で、日本とか、日本の法律に適したものを作っているので、そういう部分は良いなあって思うことはあります。」
「製品は全てここの倉庫で作られているんですか?」
「いえいえ、国内向けのプロダクトはいまは全部中国の工場で作っているんです。それとは別にグローバル向けのモデルとか、新しいモデルを開発するときはひたすらここでやってますね。」
「新製品の開発や販売って言うのはだいたいどのくらいのスパンで考えていくものなんでしょうか?」
「グローバル向けのモデルは完全に自社で0から設計してるので、めちゃくちゃ時間かかってるんですよね。」
「国内向けは中国のモビリティメーカーさんと共同開発してて、向こうのノウハウとかリソースを使えるんで、こっちの方が早いんですよね。数か月で作れることもあります。」
「キックボードを購入されるのには、どういった方が多いんでしょうか?」
「例えばこの原付モデルのキックボードだと、こういう乗り物が好きな人。」
「たしかに、かっこいい見た目ですね!」
「見た目もそうなんですけど、電動キックボードでこんなパワフルなのってあんまりないんで、乗ってて結構面白くて。乗り物好きの人向けに売っています。」
「こっちにあるV-Liteは、他社の特定小型原付と比べてコンパクトなんです。現状は都会中心に、マンションに住んでいる人とか、キャンプに行く人とかがよく購入されています。」
「生活に根差した使いやすい乗り物なんですね。」
「そうですね、通勤・通学でもふつうに使われるようになって欲しいなと思っています。」
「今やっているプロジェクトに関しては、順調なんですか?」
「全然順調じゃないです。全くもって。」
「厳しい風の中に…….」
「23年の12月から丁度3期目に入るんですけど、今が一番きついです。いろいろ上手くいかないことが重なったりして、あれ、お金やべえぞ。みたいなフェーズに陥ってますね。」
「ただ、ここを乗り越えたらもう、みたいなところはありますね。」
「鯉の滝登りみたいな。」
「滝登ってます、今。」
「今やっているキックボードの事業がうまくいって、ちょっと一段落ついたあとの、未来の展望とかはあったりされますか?」
「もちろん持ってます。それはもうさっき言った通り、いかに世界一を取るかみたいなところで、たとえば車を作るってなっても、今からEVを作ってもぼくは勝てないと思ってるんですよ。」
「テスラも強いし中国のメーカーもめちゃめちゃ強いし、あらゆる国のあらゆるデカい企業がEVに参入してて、ふつうのEVを作ったんじゃ勝てないと思っているので、充電インフラが整ったところで、EVから乗り換えられるような電動の乗り物っていうのを考えたりはしてます。EVをリプレイスするってぼくは言ってるんですけど。」
「そんなことってできるんですか!?」
「いや、できるかどうかはやってみないとわからないんですけど、やりたいな。やるならそれくらいやらないとなって。」
「本気で世界一を取ろうとする心意気……かっこいいです……!」
SMZさんのインターンでやるお仕事!/事業に込める清水さんの想い
「最後に、わたしたち学生が実際に短期インターンという形でSMZさんに関わりたい!と思った時、どのようなお仕事で力になることができるんでしょうか?」
「そうだなぁ、モビリティを触る系はどっちかと言うとその後に活かしづらいところがあると思うんです。
もちろん好きな人には整備系とか出荷前の製品の検査とかも全然やってもらったりできますし、他だとマーケティングとかSNSの運用をやってもらったりとか。その辺は自分で何かやりたいときにも活かせますし、他社さんでも流用できるので。」
「では、こんな学生に来て欲しい!っていう想いなんかはあったりされますか?」
「いやもう、やる気あったら何でもいいですけどね!」
「なるほど!車とかバイクとか大好き!ってわけじゃない人のインターンでも全然大丈夫なんですね。」
「もちろんもちろん。いまうちも20人弱メンバーがいるんですけど、乗り物めっちゃ好きです!!みたいな人はやっぱり少数ですよ。」
「そうなんですか!?ちょっと意外です。どういった気持ちでお仕事をされている方が多いんですか?」
「やっぱりうちのビジョンへの共感っていうのがすごく大きくて。ぼくが世界一を目指していると。日本に新しい産業を作らなければならない!みたいなところを言っているから、そこに共感してくれて一緒にやりたい!って言ってくれる人が多いですね。」
「清水さんの中には日本のものづくりに対して、もっとやっていかなきゃ!みたいな気持ちがあるんですね。」
「そうですね。ものづくりに限らずですけど、単純に言ったらどんどん衰退してんなあみたいな。」
「経済の問題だったりいろんな問題が絡み合ってて、だんだんアメリカみたいになってきてる。アメリカ、貧富の差がやばいんですよ。大金持ちのホテルの前でホームレスが薬物やってるみたいな世界なので、日本もいずれそれに近くなるんだろうなみたいなことを考えると、それは、どうにかしないと。」
「たとえばこの先、車でもトヨタの一強じゃなくなって、日本の基幹産業である自動車が勝てなくなると、30年後、50年後どうなるんだろうみたいな。だから、今からいかに日本に産業を生み出すかっていうところを考えていきたい。」
「社会、世界全体の動きも捉えながら事業を展開しているんですね。」
「単純に悲しいですよね、日本が負けてることに。」
「ぼくたちが生まれた平成初期のころって、世界の時価総額ランキングトップ50がほぼ日本の企業だったのに、もう一社もないんですよ、トヨタでさえ圏外。未来ないよね、みたいなとこはどこから見てもあからさまで、人口も減っていくし。そんなところで、どうインパクトを起こしていくか。」
「何ができるかはわかんないです。わかんないですけど、やろうとしないとやれないと思うんで、一石投じたい。そこにチャレンジするのは人生懸ける価値あるよね。
みたいな感じです!!!」
「日本の社会全体をより良い流れに持って行く力の一端としてやっている事業でもあるんですね…….!!」
「本日はありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
まとめ
SMZが気になる!というあなたへ
「この記事を読んで、SMZ株式会社でインターンがしてみたい!と感じていただけた方には、こちらの公式Instagramアカウントへメッセージを送れば、簡単にインターンに関する相談ができちゃいます!」
「乗り物や、ものづくりに関わる仕事に興味のある方はぜひ!お気軽にご相談ください!」
「こちらのマガジンから、これまでに取材した方々の記事を読むことも!」
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