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装丁の想定

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PrivateWorks / 実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ
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装丁の想定『飛ぶ教室』

『飛ぶ教室』 著:エーリヒ・ケストナー今回は岩波少年文庫の2013年版(第10刷)を読みながら制作しました。 ケストナーがこの小説を書いたのは1933年。 『アンネの日記』のアンネが日記帳を手にしたのが1942年なので、だいたいそれくらい昔っぽく見えるビジュアルにしたいなと。 ドイツの学校は基本的に制服がないらしい(日本では「ギムナジウム」ときくと『ポーの一族』みたいな制服を思い浮かべるかもだけど)ので、1920〜1930年ごろのトラッドスタイルを参考にしたり、船長に引き取

装丁の想定『雨ふる本屋』

梅雨なので、2016年の作品ですが雨にまつわる児童書を。 『雨ふる本屋』 著:日向理恵子 原作の吉田尚令さんのイラストと作品全体の雰囲気、自分が小学生だったらまちがいなく手にとるなぁ〜と思う佇まいでした。 文章も詩的でかわいかった。 「自分だったらこんなふうに描きたいな」という思いと、「物語本編と吉田さんのイラストが好き・原作もぜひ読んでみてほしい〜」という布教的な思いが混在して、主人公ルウ子ちゃんのキャラデザは原作寄りです。 赤いボーダーの服と赤い長靴が印象的。 制作過

装丁の想定『病気の魔女と薬の魔女』

4/30は「ワルプルギス(ヴァルプルギス)の夜」。 ドイツのブロッケン山では魔女たちが集まり、お祭りをします。 その日に間に合えばよかったのですが5月になってようやく完成。 『病気の魔女と薬の魔女』 著:岡田晴恵 コロナ禍で出会ったファンタジー小説です。 本書にはコレラ、ペスト、マラリア、チフス、梅毒、結核、天然痘…とさまざまな病気の魔女が登場します。 が、私がつい注目してしまったのは「コロナの魔女」。 コロナの魔女は「軽いかぜ程度のコンタギオンしか持たない」と立場が低い

装丁の想定『ふたりのロッテ』

12/13は双子の日。 ネットでは11/25が「いい双子の日」なんて言われていたりするけども。 『ふたりのロッテ』 著:エーリヒ・ケストナー私はタイトルに惹かれて実写映画から入りました。 実写版はいくつかあるようですが私が見たのは『Charlie & Louise: Das doppelte Lottchen』。 双子の名前が「シャルロッテ」と「ルイーズ」で、時代設定も現代よりにアレンジされています。お転婆なシャルロッテの愛称が「チャーリー」で、いかにも真面目なルイーズの格

装丁の想定『レモンと実験』

「装丁の想定」 実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ。2010年くらいから細々と描き続けています。 10/5はレモンの日。 ということで2014年のこちらの作品をば。 『レモンと実験』 著:A・ハリス・ストーン アメリカで出版されたこども向けの科学絵本。 レモンを使った様々な実験がたくさんのイラスト付きで紹介されています。 理科の実験器具でおなじみのビーカーやフラスコ、リトマス試験紙、ハッピーバード(水飲み鳥)やレモン搾り器、レ

装丁の想定『秘密の花園』

「装丁の想定」 実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ。2010年くらいから細々と描き続けています。 こちらは2017年の作品。 日本図書設計家協会主催「第3回 東京装画賞」応募作です。 この年は課題図書3冊ぶんすべて制作・応募しました。 『秘密の花園』は受賞はなりませんでしたが… 『秘密の花園』 著:フランシス・ホジソン・バーネットイギリス植民地時代のインド。乳母と使用人まかせで育ったつむじまがりのメアリは、十歳にして両親を亡くし

装丁の想定『あ・うん』

「装丁の想定」 実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ。2010年くらいから細々と描き続けています。 こちらは2015年の作品。 日本図書設計家協会さん主催「第3回 東京装画賞」にて東洋インキ賞をいただきました。 『あ・うん』 著:向田邦子 サラリーマンの水田仙吉 その妻・たみ(「阿吽」と称される夫婦) 仙吉の親友でたみに懸想している門倉修造 …の3人を中心に、昭和初期の庶民の暮らしを描いた小説。 昭和初期のお話なので、そこはかと

装丁の想定『バスカヴィル家の犬』

「装丁の想定」 実在する本の表紙に使われるイラストをイメージして、個人的に制作した絵のシリーズ。2010年くらいから細々と描き続けています。 こちらは2017年の作品。 日本図書設計家協会さん主催「第5回 東京装画賞」にて東洋インキ賞をいただきました。 実在する本の装画を描き、ブックカバーとしてデザインした状態で応募するコンペです。イラストだけでなくカバーデザインまでやるコンペはちょっと珍しいですね。 『バスカヴィル家の犬』 著:アーサー・コナン・ドイル 名家バスカヴィル

装丁の想定 『人間椅子』

noteでご紹介する作品第1号は、2016年作のこちら。 『人間椅子』 著:江戸川乱歩要するに、椅子の中に潜む人間のお話。 乱歩の中でもお気に入りです。まー気色の悪いお話なんですが、語り口調がテンポよく読みやすい。そしてオチが清々しく、意外と読後感が爽やか。 乱歩初心者にもよいのではないかなーと個人的には思います。 直観でゾワッと、気持ち悪い!と思ってもらえたら嬉しいなぁと思いながら描きました。グロいのではなく、上品ながらもおぞましい、触感に訴えかけるものにできたらいいな