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【読書レポ】イベント参加券を買ったらCDがおまけについてきた

1.CDは10年後も残っているだろうか
CDは、音楽を記録するための媒体としてカセットテープなどの過去の媒体と比較して、長く用いられていると感じます。しかしながら、音楽を聴きながら移動する人の姿も日常の光景です。その際に使われているのは、CDではなくiPhoneなどを通してではないでしょうか。
 
多くの人が実際にCDで音楽を聴くのかどうかは分からないが、少なくともCDを買わずともストリーミング配信サービスやリリース前に楽曲を聴くことができる以上、CDの権威は以前より強くないことがわかります。
 
今回は、CD発売の際にイベント参加券などを同封するなどして1人で複数購入することを促した「AKB商法」をテーマにした本を紹介します。

紹介する本:『AKB商法とは何だったのか』 

2.AKB48のアイドルとしての商品は
今回は、第1章第3節「批判」を取り上げて紹介します。
 
AKB48は、自身が音楽ではなく、あけすけに自分を売りにすることが批判されました。代表的な例は、お笑い芸人のナインティナインの岡村隆史が、総選挙システムを逆ホストクラブと分析したことです。この批判は、CDを販売する音楽グループであるにもかかわらず、実際はメンバーの魅力でファンを獲得しているという解釈です。そしてこの批判がされるとき、若い女性に疑似的に恋愛をし、カネを貢ぐ男性という構図が想定されています。さやわか(2013)は、この批判に対してAKB48の女性ファンの存在を指摘し、以下のように反論する。

先に挙げた芸人たちよりもAKBの活動についてテレビや雑誌で見知っているせいか、一般層のほうがハードな世界で努力するメンバーを素朴に応援しているように見える。AKBはもはや一般のファンから支持を集めてしまっており、男性ファンからの搾取だけが人気を支えているという意見はもはや批判として十分にAKBを捉えていない。だからこの点でAKBを糾弾する者がいたとしても、今一つ人々を説得し切れない。

AKB48の特徴は、メンバー同士がストイックに歌やダンスの能力を磨き、シングル選抜総選挙で上位を目指したり、大勢のファンに会うときいつもにこやかに対応するその努力が支持されていることです。同じ秋元康がプロデュースしたお気楽なクラブ活動のイメージがあるおニャン子クラブと違い、彼女たちは「マジで」活動しています。この本気さが人々を惹きつける原動力なのではないでしょうか。
 
音楽グループなのに音楽を売っていないという戦略は、日本の音楽産業の構造に対応させたからです。AKB商法と揶揄される手法は、AKB48のみならず今日では、一般的な楽曲CDの販売戦略です。当初、劇場を拠点として毎日活動していたことからCD販売をしていませんでした。それでもライブ活動で十分な人気を得ていました。しかしながら彼女たちは、音楽業界の中では黙殺されていました。そこで業界内で権威をもつ音楽チャートを意識して、CD販売に動き出しました。
 
彼女たちの「マジ」に一般の人々が参加できるイベントが、シングル選抜総選挙です。最初のシングル選抜総選挙の投票用シングルは『涙サプライズ!』でした。以降、常に何らかのイベントとつなげることで話題をうみ、人気を広げました。ここで起こる批判は、楽曲が軽視されているのではないかというものでした。
 
この批判に対してさやわかは、チャートで測ることができない音楽の人気について大型ロックフェスを例に言及します。

注目したいのは、こうしたフェスに参加しているミュージシャンが実に多種多様だということだ。大御所から新人までさまざまだが、いずれにしてもたったいま大ヒットを出しており、CDを売りまくっているミュージシャンばかりではない。
しかしもちろん観客はそんなことで不満を漏らしたりしないし、むしろ喜んでライブを鑑賞する。
音楽チャートに登場しないからといって、フェスで喜ばれないミュージシャンというわけではない。ということは逆に言えば、音楽チャートを見ていてもフェスのような音楽業界の動向はさほど正しく捉えられないのではないか。

 
続けてさやわかは、音楽チャートは、売れた音楽を見るのにはわかりやすいが、はたして売れる音楽と良い音楽は、密接な関係があるのかについて疑問を呈します。

3.音楽を持っている?
ここでは、良い音楽とはどんなものかについて議論しません。上記で紹介した音楽の楽しみ方の登場によって、あらためてわたしたちはどこで、あるいは何を用いて、音楽を聴いているのかについて考えてみましょう。CDの不振が嘆かれて久しいが、変わらずCDは販売されつづけているし、音楽は巷に溢れかえっています。飽和状態と表現できるほどだと感じます。
 
では、CDで聴くこととインターネットに接続して聴くことの何がわたしたちの中で異なるのでしょうか。それは、音楽を所有する感覚だと思います。CDは、購入して自分のものにしてしまえば資産として保有できます。CDそのものが壊れない限り、自分のタイミングで聴けますし不要に感じれば手放す―中古として販売できる―こともできます。ダウンロード販売も保存媒体が変化しただけのように見えますが、原則、自分のみが再生することが想定されています。月額課金制度は、所有する概念はなく、フェスのように音楽が聴ける場所へアクセスして聴くという発想です。支払いを止めれば今まで楽しんでいた楽曲は1曲も聴けません。
 
わたしたちは、音楽そのものを手に入れて聞く楽しみよりも、自分のものにならなくていいからより多くの豊かな音楽に触れたいという欲望が優位になっているのではないでしょうか。それは隠れたミュージシャンの発見や多様な楽しみ方への気づきでもあるように思います。リアルなサウンド、リアルな熱狂へアクセスする手助けに話題に富んだイベントが働いているのだと思います。

参考・参照文献:さやわか 2013 『AKB商法とは何だったのか』 大洋図書 kindle版 

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