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今こそ「働きながら本を読むべき」理由

伊藤羊一さん、尾原和啓さんの『努力革命 ラクをするから成果が出る! アフターGPTの成長術』(幻冬舎)を読みました。

この本では、ChatGPTのテクニックはざっくりとしか解説されていません。その代わり、生成AIの台頭により従来の「努力」の概念が根本から覆されるという、ChatGPTのもたらす変化、その意味を知ることができます。

著者は、ChatGPTによって「『80点』が合格ラインでなくスタート地点になる」と指摘します。これまで「議事録作成やスケジュール調整、市場リサーチ、資料作成などの仕事に時間を使って、上司の判断を仰ぐところまでが、仕事の大部分だった」状況が一変し、そこまでをAIが担うようになるのです。

ChatGPTの活用により、アイデア創出のプロセスが劇的に効率化されます。「誰でもアイデアの100本ノックどころか、1000本ノック、1万本ノックだってできる」ようになるため、アイデアの「叩き台」づくりが圧倒的に簡単かつスピーディになるのです。だからこそ「失敗を楽しむ力」が重要になります。「『あいつ、999回も失敗したらしいぜ』『すげー!』というように、小さくすばやい失敗の数が多い人こそ賞賛される社会」になるわけです。

では、AIの台頭は人間の仕事を完全に奪うのかというと、そうはありません。意人間にしかできない唯一の領域は「意思決定」です。分析を進め、選択肢を絞りつつも、最後は論理的思考力や合理性を超えた決断が必要になります。ここで重要になるのが「偏愛」の力です。

未来に正解はありません。それは自分自身でつくるものだからです。「だって、やりたいからやるんだよ」「自分が好きだからやるんだよ」と言えるかどうか。それが「飛ぶ」勇気になります。

伊藤羊一、尾原和啓『努力革命』

「哲学」と「世界観」を持つこと。「何をするのか」ではなく「なぜやるのか」を問うこと。自身の価値観を明確に持つことが、AI時代を生き抜くカギになると著者は主張しているのです。

ここで考えたいのが、「働いていると本が読めなくなる」問題です。三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)では、現代において自分に関係ない情報は「ノイズ」であり、労働のための読書は必要とされていないと結論付けられています。

1980年代以前に長時間労働に従事する人々が本や雑誌を読めていたのは、それが労働や社会的地位上昇の役に立つ「知識」を得る媒体だったからだ。しかし1990年代以降、労働や成功に必要なものは、自分に関係のある情報を探し、それをもとに行動することとされた。だが今後、80年代以前のような「労働のために読書が必要な時代」はもうやってこないだろう。

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

でも、本当にそうでしょうか? たしかに情報はChatGPTに調べてもらえる時代です。しかし、意思決定のための「哲学」「世界観」「価値観」、そして「偏愛」を育むためには、教養という「ノイズ込みの情報」が必要なのではないでしょうか? 生成AI時代において、教養を得るための読書の価値は、むしろ上がっているといえるはずです。

これは山口周さんが『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)などで、「真・善・美」の美意識を持つべき、「役に立つ」より「意味がある」が重要になる、と主張していたことに重なります。

この記事にも書きましたが、「本を読む」は決して「働く」の邪魔になるものではなくて、相乗効果を生むことはできるはずです。生成AI時代にこそ、読書はもっともっと重要になるのではないでしょうか。

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