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中小企業は味わい深い

今年も4月から大学の前期授業「中小企業論」が始まります。

働く経験の少ない学生さんにも、リアルな中小企業を感じつつ、ざっくりとでも中小企業の概観を学んでもらえたらなぁ、という思いです。

「中小企業」と一言で表現しても、見え方はさまざま。

過少過多な「中小企業問題」のようなネガティブな面が強調されることもあれば、イノベーションの担い手として、ポジティブな面も評価される。

まさに多様な存在。

単純に大企業と比較すれば、規模の経済や範囲の経済などの経済効果では、中小企業に勝ち目はない。

でも、実際に中小企業は、キラリと光る魅力を持って活動し続けている。

そんな「味わい深い中小企業の魅力をどう伝えるか
ちょっと大げさですが、自分のミッションです。

地元の魅力ある中小企業


生き残っている中小企業には、どこかにキラリと光る魅力があるもの。

それは、身近なくらしのなかにある中小企業も同じ。

卑近な例ですが
まずは地元の「靴の修理屋」

経営者は、もと靴職人さん。
高い修理技術だけでなく、靴や革製品の広く深い知識も豊富。

はがれた右足の靴底の修理をお願いすると、持ってきていない左足の靴底の状態を気にして、メンテナンスのアドバイスをくれます。

わずかな接客を受けただけで「靴大好き!」なオーラがにじみ出ている。
そして、とても良心的な価格設定。

ただ、デメリットは修理期間がかかること。

一人でお店を切り盛りしているので、ちょっとした修理も最低1週間以上かかります。

丁寧な仕事も理由だと思いますが、接客時のお客さんとのトーク時間が長いのも原因の一つかも、と勝手に理解しています。

効率性は悪いけれど、経営者もお客さんも、楽しそうに話している。

お客さんも「靴のことをフランクに聞ける」というプラスアルファの魅力も感じている気がします。

もう一つは地元の「焼き鳥屋

こちらは、愛嬌はほとんどなし。むしろ接客がとても面倒そう(笑)

親子で店頭に立って、もくもくと焼き鳥を焼き続けています。
住宅街にポツンとありますが、50年以上?続いている。

スーパーでは買えない、炭火焼の焼きたてのおいしさも魅力ですが、自分のお気に入りは、さりげないサービス。

保育園帰りに子どもを連れて買い物すると、唐揚げがおまけに入っている。(1人で買いに行くと、そのおまけはない)

「唐揚げサービスしといたよ」ぐらい一の言あってもいいのですが、声掛けは一切ない。毎度、家に帰って袋を開けたときに気づきます。

その日の残り具合でおまけが決まるのでは、というアバウトなもの。

焼き鳥という商品だけでなく、寡黙ながらも愛?を感じるサービスがファンを引き付けます。


靴の修理屋も焼き鳥屋も、大手チェーンの標準化したサービスとは違う強みがある。

この中小企業のオリジナルな強みこそ魅力の源泉ですね。

減り続ける中小企業

そんな中小企業は減り続ける存在。

中小企業白書によると、中小企業は1999年に484万者であったのが、2016年に358万者に減少。特に規模のより小さい小規模企業の減少率が高い。

2020年版 中小企業白書「企業規模別企業数の推移」

思い返せば、小学生のとき、友だちの家に遊びに行くと「1階が工場、2階が自宅」という家も多かったですね。

学年が上がるにつれて、町工場が閉まり、新学期が始まると、いつの間にか転校していた友だちがちらほら。

当時は気きづきませんでしたが、町工場のまちにも、じわじわと中小企業の減少が進んでいました。

中小企業の数が減るのは、経営悪化による倒産もあれば、事業拡大や事業承継のためのM&Aなど、生産性向上にポジティブな面もあり、一概に悪いことでもない。

とはいえ、特に、新しい産業を牽引する中小企業や、地域の暮らしに必要な中小企業は、継続してほしいものです。

中小企業への期待

中小企業への期待は大きい。

特に1999年の中小企業基本法の改正以降は「過小過多で、一律にかわいそうな存在」から「独立した多様で活力ある存在」と認識が大きく変化。期待はますます大きくなっています。

(それぞれの中小企業からすれば、勝手にひとくくりにして期待をかけないでくれ、と言われそうですが)

①市場競争の苗床
:多数の中小企業が新たな市場をつくり、経済の新陳代謝を促進させる
②イノベーションの担い手
:スタートアップなど、革新的な技術で新しい商品・サービスを生み出す
③雇用機会の創出
:雇用を生み出す場であり、雇用の受け皿になる
④地域経済社会の担い手
:地域の産業や商業の集積の担い手であり、地域社会に貢献する

といった視点で、中小企業への期待が語られることも多い。

人口流出や高齢化が進み、特に大企業が少ない地方では、社会課題の解決の担い手としても期待されています。

変化が激しい時代、規模が小さいからこそ大企業に比べてフットワーク軽く、新しい活動のしやすさが魅力ですね。


最後に

『中小企業』を上から下から、右から左から・・と、事例をまじえながらさまざな角度から見る。

そして、多元性のある中小企業を通して、日本の社会や経済、身近な生活を考える一助になったら・・と妄想を膨らませています。

さてさて、今期も授業直前までテキストづくりに励むことになりそうです。

おわり。




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