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悪いデザイン、悪くないデザイン

起業支援に取り組む中小企業診断士の集まり『スタラボ

今月の座談会は、デザインの専門家でもある中小企業診断士 佐々木 謙さまにご登壇いただきました。

テーマはこちら。

創業支援にもきっと役立つ!?
中小企業診断士が知るべき
悪いデザイン、悪くないデザイン

タイトルが「悪いデザイン 【良いデザイン 】」ではない意図も、話を聞いて・・うーん納得。
デザイン素人にもわかりやすい内容ながらも、デザインの本質がギュッと高濃度に詰まっている感じでした。

実は、3年前のスタラボ創設時に、佐々木さんが自己紹介されたときから『デザイン&診断士』の二刀流!?に興味津々。今回、座談会でお話いただき、念願がかないました。

中小企業診断士 
佐々木 謙 様


大学卒業後、ベンチャー企業にデザイナー兼コーダーとして入社。その後、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ(現リクルート)へ転職し、ディレクターやプランナーとして、インターネット広告の企画・制作を多数手がける。
2011年に独立し、大企業のWebサイトやスマホアプリの案件を中心に従事。
2018年に中小企業診断士登録。経営とデザインの仲介をテーマに各種支援を行う。2021年、茨城県水戸市を拠点とするデザイン会社の設立に参画し、取締役に就任。

以下、佐々木さんの座談会のエッセンスです。
(掲載許可を受けています)

どちらが悪いデザインか?

質問「どちらが悪いデザインでしょうか?」 

        A                B

一見すると、Bの名刺が悪いデザイン、と思ってしまいがちだが・・
(答えはのちほど)

そもそも
「デザインとは何か」
「悪いデザインとは何か」

「デザイン」の定義は、世界中の多くの人がいろいろな定義をしている。(誰が、どう定義しているのか、を見るのもおもしろい)

自身が一番しっくりくるのは、ジョン・ヘスケットのデザインの定義

デザインとは、 デザインを作るためにデザインをデザインすること

ジョン・ヘスケット「デザイン的思考」

「デザイン」を一言で定義するのは不可能ということがよくわかる。

デザインの理解には、次のポイントをおさえることが大事。
・デザインはスタイリングやデコレーションとは異なる
・ デザインは成果物だけではなくプロセスも指す
・ プロセスの中でも特に構想や設計が重視される
・ 構想や設計には目的がある

シンプルにいえば

デザイン=目的を達成するために構想・設計すること

なぜ悪いデザインに着目するか

逆に「悪いデザイン」とは
目的が達成されないデザイン
と、言える。

なぜ悪いデザインに着目するかといえば、

野村監督が話したことで有名になった

『勝ちに不思議の勝ちあり
 負けに不思議の負けなし』

の言葉どおり、良いもの(勝ち)にはさまざまな理由があるけれど、悪いもの(負け)には悪いなりの理由がある

悪いデザインの主要因をいえば次の3つ

『ターゲットがあやふや』
『利用シーンがあやふや』
『目的があやふや』

逆に「悪くないデザイン」の主要因は

『ターゲットが明確』かつ『ターゲットに合っている』
『利用シーンが明確』かつ『利用シーンに合っている』
『目的が明確』かつ『目的が達成されそう』

つまり、悪くないデザインとは、ターゲットと利用シーンに合っていて、目的が達成されそうなデザイン

ここまでみてきて、改めて最初の質問をみると

質問『どちらが悪いデザインでしょうか?』

A ビジネスシーンでよく見かける、ごくごく普通の名刺
B カラフルな色使いで、まる字ですべて、ひらがなで書かれた名刺

もし・・・・
ターゲットは、ひらがなしか読めない未就学児
利用シーンは、ハロウィーンパーティーでの配布
目的は、中小企業診断士という職業を知ってもらうこと

という前提であれば、Aが悪いデザインになる。
一見すると、ビジネスでは使いにくそうな名刺であっても「前提」となるターゲット、利用シーン、目的によっては、Bのほうが悪くないデザインになる。

創業支援とデザイン

飲食業やサービス業の創業を考えたときに、実はデザインするものは多い。例えば、ポスターやメニューなどの店舗用印刷物、チラシやパンフなどの販促用印刷物のほか、WebサイトやSNS用の画像などのインターネット関連など。

デザインには、「事前準備」⇒「デザイン提案」⇒「デザイン制作」⇒「決定」という流れのなかで、実は発注者側(創業者)が主体的に関わるプロセスが多い。

それらのプロセスを診断士がサポートできると、創業者に喜ばれるかもしれない。

診断士が「悪くないデザイン」の視点で相談に乗ることで、次のようなメリットが期待できる。

・デザインの目的が明確になり、目的の達成確率が高まることで、売上増加につながる
・無駄な制作物が減り、コスト削減につながる
・デザインの専門知識がなくても、有益な助言ができ、経営者から信頼を得られる
・プロにデザインを依頼する前段階として、デザイナーからも信頼を得られる

デザインの相談を受けたときには、ぜひ「悪くないデザイン」の視点を活用してほしい

最後に 

冒頭の「どちらが悪いデザインでしょうか?」
の問いは、見事に間違えました(笑)

おかげさまで、目的が達成できれば、ぱっと見がちょっと悪くても「悪くないデザインになる」ことを忘れずに覚えておけそうです。

佐々木さんの笑いも交えた軽妙な語り口に魅了され、1時間があっという間でした。振り返ると、今回の『座談会』そのものが見事にデザインされていた印象です。

話をお聞きして、この「悪くないデザイン」という視点は、創業支援や中小企業支援にも応用できそうです。支援の現場では、全力をつくしながらも、すべてが良い支援になるとも限らない。支援者として、パーフェクトな良い支援を目指しつつも、どんな場面でも少なくとも『悪くない支援』を提供できるように取り組みたい、と思ったところです。
では『悪くない支援』とは何か・・・・
新たな問いが生まれました。

「悪くないデザイン」の提唱者 佐々木さま。
本日はありがとうございました!

おわり。