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鷗外の食卓(翻訳篇) 9 『死』アルチバシェッフ・ミハイル・ペトローヴィチ

 卓の上には清潔なきれが掛けて、その上にサモワルといふ茶道具が火に掛けずに置いてある。その外、砂糖を挟む小さい鉗子かんしが一つ、茶を飲む時に使ふ匙がニ三本、果物の砂糖漬を入れた硝子ガラス壺が一つ置いてある。寝台の上には明るい色の巾が掛けてある。何もかもひどく清潔で、きちんとしてある。その為に却つて室内が寒さうに、不景気に見えてゐる。

「お茶を上げませうか」と、見習士官が云つた。

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『死』アルチバシェッフ・ミハイル・ペトローヴィチ 森林太郎訳

出典 えあ草子・青空図書館 青空文庫

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