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記憶仕様のないまだ見ぬ未来は

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忘れたいことがある。想起するたび記憶は強化され、忘れることが出来ない。忘れたいほどのその記憶のひとつひとつ、蓄積された過去から移りゆく現在、揺らぐものを想起するたび、きっと私はそ…
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記事一覧

②胸の孔

私は小さい頃胸に穴があいていた。 比喩ではない。 先天性の心臓病だった。 3歳のときに胸の孔…

かずさ
5年前
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③「離れるとはそういうことだと思う」

ねえ 最近、思い出した事があるよ あのときどうして、道ばたで叫んだのか、 わー、と、のどが…

かずさ
5年前
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④往生

思えば往生際の悪い子だった。 床の上に寝転がって泣き喚いて、 いやだいやだいやだいやだおね…

かずさ
5年前
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⑤花火

2014/8/3 花火なんかなくなってしまえと呪ってみたものの、昼には雨はすっかりあがり、空も泣…

かずさ
5年前
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⑥ベル

だいぶ前 ママがもう手に負えなくなってしまって 病院へ連れて行ったとき 車の中でママはずっ…

かずさ
5年前
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⑧心臓をくばる

わたしのように気の小さい人間は、心臓も小さいように思われるかも知れませんが、心臓は逆に肥…

かずさ
4年前
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⑨無縁墓

ひと昔前だったら、携帯電話のない時代だったら、こうやって家の前でずっと待っていることだってままあることだっただろうし、走って追いかけることもできないくらい重い十二単衣を着るような身分に生まれていたらこんなふうに心臓が爆発しそうになるくらい走って追いかけたりしなかったし、いつでも連絡が取れる便利なツールを手に入れたのに、もう2度と連絡が取れなくなったし、そうやって時代のせいにしたり家のせいにしたりしても結局ばかはわたしだし、分かり合えないって、そんなことで別れるなんて、分かり合

⑩Home town

小学生の時、買ってもらったばかりの服の袖をハサミでズタズタに切り裂いた事がある。 母が近…

かずさ
4年前

(11)Inside outside

屋上で一人たばこを吸いながら、風に舞う煙草の灰を見ていた。灰は風に乗ってふわりと浮かび上…

かずさ
4年前
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