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④往生

思えば往生際の悪い子だった。
床の上に寝転がって泣き喚いて、
いやだいやだいやだいやだおねがいかえらないでと、
それはそれは切実だった。
3歳の頃、手術の為に長期入院していた時
お見舞いに来てくれる両親との別れを惜しんでは毎日泣き喚いていた。
小児科病棟の食堂の前で、
みんなが晩ごはんを食べているのを横目に、
顔も髪の毛も耳の中もぐっしょり濡らし泣き叫んで、
みんななんでふつうに食べてるのなんでさみしくないのなんで平気なの、
責めるような目で食事をとる子ども達を見ていた。
毎日どんなに泣き喚いても、両親は帰っていく。
100回願っても100回叶わない。
あの頃すでに気づいていても良さそうなものなのに、
30年経った今でも私は往生際が悪い。

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