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#0072【ラ・ファイエット(フランス、18C後半-19C前半)】

1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。

フランス革命前期の指導者ラ・ファイエットを紹介します。ラ・ファイエットは、後に「両世界の英雄」と呼ばれます。ヨーロッパ世界とアメリカ世界の両方で名を馳せた人物です。

1776年にアメリカでイギリスに対する独立宣言が出されると、その理念に共感したラ・ファイエットは義勇軍を編成してアメリカに亘り、独立戦争に加勢します。当時20歳の若さでした。フランスの正式参戦後は正規軍の指揮下に入って1781年のヨークタウンの戦いで大勝利を得て翌年にフランスに帰国します。フランスでは、英雄としてアイドル的な人気を得ます。

1789年に32歳になっていたラ・ファイエットは三部会に第二身分(貴族)代表として参加するも、第三身分主体で形成された国民議会にも合流します。その後、バスティーユ襲撃で興奮している民兵たちを国民衛兵隊に組織化し、その初代司令官にラ・ファイエットは任命されます。

革命勃発に慌てた特権階級は、1789年8月4日に「封建制廃止(特権の放棄)」を宣言します。続けてラ・ファイエットがフランス人権宣言の起草に着手しました。自由・平等の精神、国民主権、罪刑法定主義、表現の自由、所有の不可侵などを明記したこの人権宣言は8月26日に可決され、アメリカ独立宣言とともに近代憲法の礎として、現代に至るまで大きな影響を及ぼしています。

しかし、フランス革命は、当初あくまでも国王の存在を認めたイギリス型の立憲君主制を目指したものでした。貴族出身の英雄ラ・ファイエットは議会・軍隊において絶頂にありましたが、革命の動乱は、彼をそのままの地位に留まることを許しませんでした。

国民衛兵隊を使っての治安維持で度重なる不手際を起こし、さらに1789年10月にはパリの主婦がヴェルサイユへと押しかけ国王一家をパリへと連れていく事件が起きました。暴動する民衆を前にラ・ファイエットは傍観するのみでした。

1791年6月にヴァレンヌ逃亡事件が発生すると成立目前であった立憲君主制をベースとした憲法制定に黄色信号がともりましたが、何とか可決に持ち込み成立させます。立憲君主制を求める勢力は、革命終結を宣言しますが、さらなる改革や共和制を目指す勢力から反発を受け、反対勢力は署名活動や抗議集会を開きます。

これに対してラ・ファイエットは国民衛兵隊を使って反対勢力を銃撃し退散させます。アイドル的人気を誇ったラ・ファイエットはこの件で民衆からの人望を失いパリ市長選挙にも落選してしまいます。一方、フランスでの革命が自国に広がることを恐れた周辺国は、フランス革命政府に対して武力行使も辞さない姿勢を見せます。

ルイ16世と立憲君主制支持者は、失った民衆からの信望を取り戻すべく対外戦争での人気回復を目論み、1792年4月にフランスはオーストリアに宣戦布告をしました。ラ・ファイエットも北東の戦線司令官として戦地に赴きます。

しかし軍隊指揮の主力を担っていた貴族たちが亡命して弱体化していたフランス軍は連戦連敗を喫します。そこにオーストリアから「フランス王室に危害を及ぼしたら、パリを徹底的に破壊する」と脅迫の手紙が届きます。これを知ったパリ市民は、王室がフランスを裏切ってオーストリアに味方していると考えました。そして、1792年8月10日に「第二の革命」が勃発します。

パリのチュイルリ宮殿にいた国王一家をパリ民衆が襲撃しました。議会は国王一家をパリ外れのタンプル塔へ逃がし、王権の停止を宣言します。

国王一家に身辺の警護はつきましたが、事実上の幽閉状態となり囚人同様の境遇に落ちていったのです。この日を境に、フランス革命前期に立憲君主制樹立を目指した指導者たちは退場していくことになりました。

王室一家救出をラ・ファイエットは計画するも、部下の兵士たちは従おうとしません。やむを得ず彼は8月19日にオーストリアへと亡命し、長い雌伏の時を過ごすことになります。亡命時点で35歳の若さでした。

このチュイルリ宮殿襲撃の様子をたまたまパリで見守っていた22歳の青年将校がいました。彼の名をナポレオン・ボナパルトといいます。

以上、今週の歴史小話でした!フランス革命史の続きはまた書きます。

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https://note.mu/1minute_history/m/m814f305c3ae2
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