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今読むことをオススメする7冊の本

この7冊の本が、どれだけ皆さんの役に立つかは分かりませんが、僕にとって生き方や考え方に大きな影響を与えた日本人作者の本を紹介します。
(西洋関係はまた別途。)
長くなりましたが、この文章を読んで、各書に興味を持って頂けたら幸いです。

①三島由紀夫『葉隠入門』
②山本七平『「空気」の研究』
③中村天風『運命を拓く』
④中村元『ブッダの人と思想』
⑤田中芳樹『中国武将列伝 上下』
⑥神谷美恵子『生きがいについて』
⑦吉田松陰『講孟箚記』

①三島由紀夫『葉隠入門』は、三島由紀夫が書いた武士道を説いた江戸時代の書物『葉隠』の解説書。戦前・戦中にもてはやされた葉隠は戦後には古びた封建的な前時代的な書物だと打ち捨てられていました。そこに三島は、

「これは自由を説いた書物なのである。これは情熱を説いた書物なのである。(同書より抜粋)」

と喝破します。
三島は武士道に何を見出したのか。彼の解釈を通して、自分の中の倫理観・道徳観を見つめるのに効果的な本です。あと、単純に三島の文章が読みやすい。彼の文才の凄さを感じることもできます。


②の山本七平『「空気」の研究』は、物質としての空気ではなく日本社会に蔓延する「空気」とぃうものについて考察した内容です。著者の山本七平という人は戦中もキリスト教徒としてあり、従軍経験もありますが、その視点からどうして日本は負ける戦争に突入してしまったのか、その決定を促した「空気」とは何だったのかが問題意識の根底にあります。

「「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。(同書より抜粋)」

と喝破します。会議の空気では反対できなかったけど、居酒屋の空気では「とはいってもこうだよねー」と別の結論が導出されることは皆さんも経験のあることだと思います。新型コロナでも醸成されている見えない空気。現在を考える上でも示唆に富む本です。


③中村天風『運命を拓く』は、知る人ぞ知る哲人中村天風です。現代においても天風会として彼の活動・行動が受け継がれていますが、この本は彼の波乱万丈の人生の伝記と彼の講談録となっています。迷信を否定し、積極的な気持ちで行動することの大切さ、悲しみに執着することの空虚さを説いています。僕はこの本のおかげで楽観的になれた気がしています。

「一生は何百年生きたとしても、二度とは来ない。そう思ったならば、せめて生きている間だけは、どんなことがあっても、ニコニコ笑って行こうではないか。(同書より抜粋)」

天風先生は好き嫌いあると思いますが、僕はいつも力強く励まされています。


④『ブッダの人と思想』は日本仏教研究の泰斗、中村元先生によるもの。NHKの番組でブッダの人と思想を解説した本です。非常に平易で分かりやすい言葉を使って初期仏教、すなわちブッダがどんな人物で、どんな思想を展開したかを語ってくれています。ブッダは単なる思想家ではなく、実践家であり行動的な変革者であったことを知れます。

「慈しみの心は、実際に生活する日常の中に生かされてこそ、その目的を達成します。(同書より抜粋)」

写真も豊富に扱っており、原典からの参照も分かりやすい翻訳で紹介してくれているので、心の平安を手に入れる実践に役立つ書物といえます。


⑤田中芳樹『中国武将列伝 上下』は、完全に私の趣味ですね。中学生のときにこの本と出会い、自分の中でのヒーロー像が広がったことをよく覚えています。この中に登場するような人物に恥ずかしくない行動を取りたいなと思いながら、全然至らない自分がいます。

「(前王朝の幼子たちがフビライ汗に土下座している様子をみてフビライの皇后が泣いているので)フビライ汗が、「あの者どもを憐れんでいるのか」と尋いたら、「そうではありません。人の世に千年もつづく王朝はないと聞いております。いずれ私たちの子孫がこのような姿にならないと誰がいえましょう」と答えたので、フビライ汗は憮然とした(同書より抜粋)」

我々の社会が、世界が、無常であることを教えてくれる珠玉のエピソードも満載です。話し言葉で書かれているので、非常に読みやすいですし。


⑥『生きがいについて』は、僕の尊敬してやまない女性神谷美恵子さんの代表作です。精神科医としてハンセン氏病患者との交流を通して、生きがいとは何かを解いた名著です。

「りっぱな社会的地位につき円満な家庭を持っているひとが、理くつの上では自分の存在意義を大いにみとめながら、心の深いところでは生きがいが感じられなくて悩むことがある。(同書より抜粋)」

いま、現代に美恵子さんがいらしたら、どんな言葉を紡いでくれるのか。社会が表面的にどう変わっていっても本質的なところは何も変わらないんじゃないかと思考を深めてくれる一冊です。


⑦『講孟箚記』は、ですね。「こうもうさっき」と読みます。幕末の偉大な思想家吉田松陰による「孟子を講義した際のノート(箚記さっき)」という意味のタイトルです。松陰はペリーの黒船に乗って米国渡航を企てるという破天荒なことをしたのですが、江戸幕府との関係悪化を危惧したペリーは松陰の乗船を拒否します。結果、松陰は罰せられ、地元の長州にて牢獄に入れられます。しかし、松陰はここでなんと囚人たちに対して孟子の講義を始めちゃうんですね。アツい。アツ過ぎる松陰。その松陰が孟子はこう読むんだよと解説してくれている名著です。講談社学術文庫の現代語訳が読みやすいです。

「浩然の気は、本来、天地の間に充塞しているものであって、人がそれを自分の気としているのである。されば、人たるもの、私心を除き去ることができるならば、その気は至大となって、天地の気と同一体になるものである。(同書より抜粋)」

松陰先生があればこそ、倒幕は達成され、明治維新・近代日本が成り立ったんだなということを、この本から感じ取ることができます。


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