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ユメノキロク

子供の頃に見た夢では

私は小さい女の子で 龍と仲良しだった

でも村人達は皆、龍を恐れていた

この村から数年に1度だけ
1人の勇者が選ばれる

勇者は巨大な石の壁で囲まれた
試合会場の中へ入り龍と戦い
勝ったら、皆が憧れる『黒旗』の
一員になれると言われていた

黒旗の隊員は、黒い兜の様な装備を身につけ
山の上で暮らしている

毎日特殊な訓練を受ける事ができるらしい

山に掲げた大きな黒い旗が村からも見える
村とは違い、夜でもその山はきらびやかだった

(10年位経って、その夢の続きを見た)

私は龍の子供と姉弟の様に育った、
12才位の男勝りな女の子になっていた

龍の背に乗り、空を飛び回ったり

試合会場の中には水がたまっていて
その中に降りて水をかけあって遊んだりした

龍とは頭の中でつながり
話をすることが出来た

夕方になると龍は自分の巣へと帰り
私も家へ帰った

村ではある噂が広まっていた

「黒旗は、ただの誘拐だ」とか、
「実験台にされている」と。

勇者に選ばれ黒旗の一員になったその家族も
何年経っても会えず不信感を抱き始めていた

私の父も黒旗の一員になって以来
一度も帰って来ていない

母はずっと父の帰りを待ち続けていた

私はこっそり、
勇者を選ぶ試合に立候補していた

勇者になれるのは男性が絶対条件なので
男性だと偽って。

それからは、男らしい人を見つけては
歩き方を真似をしたり
戦う練習を積み重ねた

仲良しの龍がいつも付き合ってくれた

もし勇者に選ばれ、いざ龍と戦う事になっても
戦わずに負けたふりをする様に
頼もうと考えていた

私は自信に満ち溢れていた

そして、試合の日

なんと、他の立候補者は1人

おとなしそうな太った男の子で
渋々参加させられている様だった

試合は私の圧勝!

それなのに、黒旗の隊員に
選ばれたのは男の子だった

男の子の母親は「よくやった!」と
鼻が高い様子

試合を観に来ていた村人達は
つまらなさそうに帰って行った

後日、いよいよ数年ぶりに
石の壁の扉が開かれる

不穏な噂はあるものの
一大イベントに村は盛り上がりを見せていた

私はある考えを思いつき、龍に伝えた
龍は私の身を安じて涙を流してくれた

そして決戦当日

試合会場の周りには
沢山の村人達が集まり賑わった

ファンファーレが鳴り響くと
噂は忘れ去られたのかと思う程
歓声が上がった

2人の黒旗の隊員の間には
不格好に武装した勇者が
今にも帰りたそうな顔で立ちすくんでいる

その頃、私は龍の背に乗り
試合会場を見下ろしていた

母には何も勘づかれぬ様に
いつも通り家を出てきた

入場のラッパが鳴り響くと
勇者達が試合会場の門に向かって歩みはじめた

ついに試合会場の扉が開かれた
中の様子は私と龍以外は誰も見た事がない

私は空から様子を伺いながら
潜り込むタイミングを見計らっていた

まだ戦う龍の姿はない
私は試合会場の中に降ろしてもらった

勇者も重い足取りで入ってくると
扉が閉まった

と、同時に天井が現れた
想定外の出来事に驚いた

仲良しの龍は不安そうにこちらを見ている
私は笑顔で敬礼した

完全に逃げ場はなくなってしまった

勇者は怯えて震えだし、立っているのもやっと

すると突然、大きな龍の鳴き声や
火を吹くような音がなり始めた

会場の外からは歓声が上がっている
でも、龍は現れない

勇者は状況が理解できない様子

足元には浅い水が溜まっていて
中から機械が現れた

瞬時に勇者の足を掴んだかと思うと
私の足も掴まれた
潜り込んだ事に気づかれていたらしい

私達は水の中に引きずり込まれたかと思うと
暗い洞窟のような所へ落とされた

そこには黒旗の隊員が待っていた

それぞれの肩に機械をとりつけられ、
どこかへと続く長い通路を歩かされた

所々に階段があり、蟻の巣のような構造の
地下なのかもしれないと思った

勇者は急に立ち止まると
「もう何なんだよ!もう疲れた!
帰らせてよ」と、怒り始めた

すると隊員が片手で勇者の首元を掴み投げ飛ばした
無言で無表情だけど物凄く威圧感があった

勇者は再び歩き始めた

しばらくして調理場に着いた

私だけ入る様に指示され
勇者はそのままどこかへ連れて行かれた

調理場では数人の坊主頭の
やせ細った人達が
黙々と料理を作っていた

肩には同じ機械がとりつけられている

私の存在に気づかない程
正気を失っているみたいだった

私は調理場から抜け出すとすぐにアラームが鳴り響いた

すぐに大柄な女性がやってきて
「無駄なことはやめろ、さっさと作れ!」
と、私を突き飛ばした

女性が向こうを向いた瞬間、
フライパンを手に取り、ゴン!と頭を叩いた
けれど、全く動じていない

当然ながら怒った彼女は
怒鳴りながら再び私を突き飛ばした

女性が去った後、肩の機械が
センサーに反応するのかも知れないと思い、
機械を外すために何度も壁に体当たりをした

諦めかけていた時、少し亀裂が入った

何度も何度も壁に体当たり
肩から外れないけど 壊れた様で

もう一度調理場を出ると
警報器はならなかった

隠れながら施設内を探った

皆坊主頭でひたすら働かされていた

噂通り、実験台となっている者達も居て
見るに耐えなかった

私は写真を頼りに、父を探した

この夢の続きは、何年後かな



















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