見出し画像

ゆめのきろく

母と妹と雑貨屋さんへ来ていた

そこは小さな雑貨屋さんで
バラ売りのお菓子屋さんのように
ハートの容器に入るだけ詰めて
数百円、という仕組みだった

店内にはずらりとクリアケースが並んでいて
それぞれに きれいな色の
ビー玉や石のパーツが沢山入っている

あれも綺麗、これも綺麗と母に見せていると
「好きなの選んでいいよ」と言ってくれたので
早速ハートの容器を片手に選びはじめた

石の入ったクリアケースの蓋を開けて
好きな色の石を探していると
奥の方に光りが見えた

「光ってる!お母さん見て!この石光ってる!」
と、 光る石に指先がふれた途端

眩しく光り輝き、視界がまっ白になった
気づくと暗い森に立っていた

小さな光が、まわりにたくさん見える

それは狼の目だった

狼に遭遇した時、自分の首を差し出すと
噛み殺されるか仲間として迎えてもらえる
という事を思い出し、家族を想いながら
首を差し出した

けれど、まわりの狼達は全く気にしていない様子

わたしはそっとその場を離れ、森を出た

すると、向こう側に住宅地が見えた

アパートやマンションが建ち並ぶ、知らない町

「お母さーん、どこー?」と叫ぶと、
「アオーン」という鳴き声が出る

ふと、自分の手を見ると
狼の手に変わっている事に気づいた

私はすぐに助けを求めようと、
住宅地のある町へと降りようとした。その時、
『人間に見つかるな、殺されるぞ』という
低く響く声がどこかから聞こえてきた

確かに、見つかったら危険だ

それに、この姿で帰っても
家族を怖がらせるだけだと思い、
とにかく人気のない所を探す事にした

暗くて細長い道を歩いていると
大好きな家族の顔がうかんできた

もう会えないのかないと考えると
涙が止まらなくなった

すると、まっ白で眩しく光る光が
私に向かってきた

もしかしたら、戻れるかもしれない!と
思い立っていると
『危い! よけるんだ!』とまたあの声がした

私は道路脇によけると、すごいスピードで
バイクが通りすぎていった

ありがとう、と声の主にお礼を言いたいけれど
言葉を話せず落ち込んだ

また暗くて細長い道を
行く宛もなくとぼとぼと歩き続けた

すると、足元が明るくなってきた

上を見上げると、光る実のなる木が並んでいて
その実が道をやさしく照らしていた

もしかしたら、狼には木の実が
こんな風に光って見えるのかもしれないな、と
思うと少しだけ気分が明るくなった

再び目の前にまっ白で眩しい光の円が現れた

私はよけようとすると、またあの声がした

今度は 『光りに向かって走れ、急げ!』
と聞こえてきた

その言葉を信じ、光へ向かって走った

目の前はまっ白になり、眩しすぎて目を閉じた
家族の元へ帰りたい!と強く願った

そこで、目が覚めた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?