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隣が大家時代

 友達が少ない。それに同意して「わたしもそうなんですよ、7人とかですもん」と答えた相手を船の上から海に突き落としたこともある。

 少し前に引っ越した。郊外の、なんのへんてつもない集合住宅のひと部屋だ。住みやすい。快適である。引っ越してよかったと思う。

 懸念点は、大家が隣に住んでいることだ。

 もちろん友達がいないのだから、自宅でパーティーを開いて騒ぐこともなく、まわりの住人に迷惑をかけることもない。かなり手前味噌だが、大家からしても望ましい住人だという自負がある。

 それでも、大家が隣に住んでいるのはいやだ。なにか監視されているような居心地の悪さがある。

 いつか「たまには騒ぎなさいよ」と理不尽なことを言われるのではと思うものの、大家はまだそう言ってこない。ただ隣に住んでいる。ちょくちょく庭の落ち葉を掃いてくれている。

 当然、ごみの捨て方に不手際があれば大家は怒るだろう。まあそれは助かる。ごみはちゃんと捨てたいからだ。しかしこれが「出窓がきちんと拭かれていない」とか「ベランダに不用品が置かれている」と言われ出したらわたしも黙っていない。そんなものはこっちの勝手だ。勝手の範疇だ。

 しかし大家は、まだそこまでは言ってこない。

 ただ隣に静かに住んでいるだけだ。

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今田健太郎/1mada
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