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オノマトペピアノ (ショートショート)

地球滞在最後の行動として街角ピアノを弾くことにした。それは大勢が行きかう通りの隅にあった。幸い誰も弾いていない。
ピアノは全く弾けない。でも音を出してみたい……私は迷いなくピアノに近づき座った。あこがれの黒と白で彩られた長い鍵盤に地球人に擬態した両手を置いて、ピアノにAI脳を与え、音を出すことによる攻撃能力を与えた。それは5秒ほどで完成した。さあ、弾こう。

ポーン


核爆弾が1個落ちた。

ポンポポン


たくさん落ちた。地球人に擬態した足でペダルを踏む。

ボボボボーーーーン


周囲が焦げ臭い。天井から黒いほこりと火煙が噴き出てきた。その瞬間私は透明バリアを張ってピアノを空中に浮かして保護した。周囲は火で包まれているが、ピアノの音だけは鮮明に聞こえるように調整して再度鍵盤に向かう。

こんなに素晴らしいモノが地球にそれこそたくさんあるのに、戦争ばっかりするから……残念だな…


塵になった地球からピアノ1台のみ助けた。これが精一杯だった。




ありがとうございます。