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16.なんだかわからないけど、好き

「なんだかわからないけど、好き」
そんな感覚を持ったことはないだろうか。それは人に対しても、動物に対しても、物事に対しても。私は「場所」に対して、そんな感覚をよく持つことが多い。好きな理由は?と聞かれても、「んー、なんだかわからないけど、好きなんだよね」と回答してしまう、あの感じ。

都内に住んでいた頃、路線でいう東西線~中央線の、中野駅から西側のエリアが大好きだった。高円寺→阿佐ヶ谷→荻窪→西荻窪→吉祥寺→三鷹、と続くこの各駅。このエリアから1時間は離れている反対方面に住んでいたが、毎週末の休みには一人で出掛け、各駅を探検するくらい大好きだった。
杉並区から武蔵野市、三鷹市。
なんだかわからない、でもなく、文房具店が多く、サブカルチャー文化が漂う緩さを纏った雰囲気がたまらなく好きという、理由がはっきりわかった上で好きな街ではあったが、吉祥寺は有名な井の頭恩恵公園、ここは何度も何度も足を運んだが、「なんだかわからないけど、好き」な場所だ。

JR吉祥寺駅方面から井之頭公園に入り進むと、すぐに井の頭池に辿り着く。
池の反対側まで七井橋という長い橋が架かっており、その中央に立って池からの景色や水面をただ眺めるのが、なんだか本当に好きだった。

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風に揺れる水面に映る自分の影がもう一人の自分のようで、しばらく向き合ってみたり。木々のさわさわとした音や、水面のきらきらとした揺れをみていると、自分も自然の中の一部になったような、不思議な気持ちになる。
井の頭公園に着くまでに考えていた、ゴミのようなくだらない悩みや鬱憤も、その中では存在すらなくなってしまい、どうでもよくなる。
モヤモヤすると、井の頭池の水面に映る自分の影に会いたくなって、公園の自然や風に身を任せる時間を求めていた。

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今住んでいる土地や地元には、井の頭池のような気持ちがすぅ、っとなる池や川はない。景色がきれいな川はたくさんある。だけど、水面に影を映した時のあの感覚には、出会っていない。なんだかわからないけれど、好きという、説明のし難い感覚ってなんだろう。そういうものは、大切な気がする。

おわり

☆いつも #1ニチ1エッセイ を読んでいただき、ありがとうございます。さらに、「スキ」を押していただいたり、フォローしてくださる皆様、心より感謝です。嬉し恥ずかし、ますます書きたい意欲に溢れます。今後共、よろしくお願いいたします。

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