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歌集「遠ざかる情景」#2 解説(後編)

山河鳴く 碧空を飛ぶ 雲の陣 駆け行く風は ただ優しけり 
山河鳴き 流れる雲の大軍勢 駆け行く風は 伝令なりか 
鳴く山河 空に並ぶは雲の陣 風の伝令 陣中駆ける
青き空 陣を張る雲の大軍勢 山河は鳴くよ 嘶きの如く
嘶きの如く 鳴く山河 青空の 陣に 構える雲の軍勢

石川啄木の「不来方のお城の草に寝ころびて~」の歌をイメージして、詠んだ。あくまで、希望溢れる若い心を謳い、まじりっけのない明るさを表現したかもしれない。「戦」と言う、人間のエネルギーを表現したことで、さらに爽やかさを増したと思う。
汚れることを知らぬゆえに、希望に溢れ、そんな気持ちを目に見えぬ未来に託していく。そんな、人間の若さとたくましさを謳った。

路地裏で 毬つく仔らを 見る老婆 しわがれた腕に 汗が流れり
毬をつく 仔らを見る老婆 路地裏の 陽射しは老婆の 腕に汗する
毬をつく 音鳴る路地裏昼下がり 老婆は汗かき 仔らを見ている
ひっそりと 老婆が眺める 路地裏の 仔らが毬つく 午後三時半
老婆見る 毬つく仔らは 楽しげで どこか物憂げな 路地裏の昼

人が慌ただしく行きかう、都会の風景。そんな風景の中に、
一瞬だけ垣間見える、この世界の“片隅“を謳った。
流行の服を着た若者たちや、サラリーマン、それに最新の情報や、流行歌手の明るい歌声が響く都会。額に汗して、日々を生きる大人たちと、内心彼らに憧れながらも、背伸び故に反発する子供たち。それらが交差し合う、それ故、湧き上がる活気。都会には、それがある。
しかし、その隙間、隙間には、必ずこの歌のような風景があると私は思う。
少し薄暗い、路地裏にある小さな日常。あまり日も差さぬ路地裏では、子供たちが、遊び、それをしわがれた老婆が見ている。彼女の人生はそろそろ終わりを迎えるころであり、逆に子供達には、未来がある。そんな、ささやかな始まりと終わりと表現できたと思う。
毬放つ 幼子の手を 握りしは うなじ見せたる 小袖着る母
とてとてと 歩く幼子 毬放ち うなじ見せたる人は 母かな
柔らかき 足とてとてと 幼子に 毬投げている 母らしき人
とてとてと 幼子毬を 持ちあゆむ 母らしき人は それを見ておる
母らしき人が 手に持つ 毬を見て とてとて歩き 笑う幼子

私の親戚の家をイメージして、歌った。着物を着た人はいなかったが、薄着の女性たちと、その子供たちが遊ぶ様子は、たしかに温かな人間の営みがあった。そんな情景を謳った。


夕闇よ その向こうにある 薄灯 “希望“と呼んで 良いか?世界よ
薄明り 夕闇の先に 明々と その向こうにいる 我は寂しき
明々と 夕闇に灯る 薄明り その向こうにいる 闇に住む我 
明々と 薄明り灯る 夕闇と “やみ“に溶け込む 我ただ一人
夕闇に 薄明り灯る 十二月 闇に溶け込んだ 我が見ている

街に点々と灯る、窓の灯と、暗闇からそれを見ている自分。暗闇は、どこか肌寒く、また、灯にはやはり温かみがある。家の外へ出れば、誰もがいったんは家を失う、炎天下の下でも、暗い夜でも、人は守るものを失い白日に晒される、それゆえに恋しく思う、灯の灯る家。そんな寂しさを詠んだ。

夏盛り 畳に上に寝転びで 縁側から吹く そよ風涼し
夏盛り 畳の上に寝ころびて そよ風涼し 縁側の外
夏盛り 縁側には蚊取り線香 そよ風はこぶ 詩情の香り
縁側に 蚊取り線香 そよ風が 運んでくるは 真夏の匂い
そよ風が はこぶ匂いは 夏空の 日射しのような 線香の香

ただ、ただ、爽やかな気持ちを詠んだ。線香は蚊取り線香のことだ。夏の日差しの中、家の中でくつろぐ自分。蚊取り線香の、少し青臭く、煙たい香り、それがかえって心地よい。冷たいそよ風がやさしく、吹き抜ける。夏の幸福な、一瞬を詠んだ。

夢追いし 夏の夕陽が 頬染める 「もう帰ろう」で 終わる一日
頬染める 夏の夕陽が 頬染める 「もう帰ろうか」 その日も終わり
「もう帰ろう」 夕日が夏の日々染める 夢追いし日も そろそろお仕舞い
夢を追う 足を止めるは 夏空が 夕に染まりて 「もう帰ろうよ」
足を止め 夢を追うのは また明日 夕刻だから 「もう帰ろうよ」

夏の日、友達と遊んだ帰る道を詠んだ。長い夏休み、今日遊んでも、また、明日がある。そうやって、毎日遊び呆けていた。「もう帰ろう」そう思って帰るけれども、また明日も休みだ。
子供の頃の楽しい情景を詠んだ。

総評
体力的な問題なのか、論評が杜撰になっている。今は、この状態が続くかもしれない。創作と言う行為自体に、微妙な体力を使うのは事実だ。正直、辛い。
全体的に、マンネリかと、もう少し、悲しみや情景を滲ませていきたい。
コメントは、元気を貰えるで、正直、嬉しいです。悪口でもいいので、よろしければ、コメント待ってます。

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