歌集 『遠ざかる情景』#6 解説

多少文章が、ガタガタです。すいません(笑)

我が子の爪、あの子の肌を裂く夕刻、謝ることかな、笑い合うかな?

もし自分の子供がよその子供を傷つけたら、恐らく親になったら誰でも、心臓が凍るであろうその出来事を歌にしてみました。

やっぱり、謝らなきゃいけないのか、もしかしたら怒鳴り込むんじゃないのか。親というものの、現実を歌ってみました。

 

電灯に怪音震わせ飛ぶ虫たち、撃墜された玩具を見逃がす

子供の頃、田舎に帰省した時のことを思い出して歌いました。

ある日の夜、その家の電灯に群がる虫の中にガムシがいて、それをカブトムシの雌と間違えたことがきっかけで思いつきました。
子供にとっては、玩具である虫でも、大人になるとどうでもよくなり、あっさり逃がしてしまう。
そんな心情の変化と、捕まったら、終わりという彼らの運命を爆撃機の撃墜と重ね合わせてみました。虫の羽音を聞くと、何だか怖くなりますよね(思わないかな?)。それが、戦闘機と重なったのでそれも……。

煙吐く話もせぬあの子を見る日、タバコが玩具に見える早朝

子供の頃、旅行なんかに行くと、知らない子供が自分の持ってない、玩具で遊んでいるのを見て、うらやましくなることは多い筈です。そんなもどかしさは、大人になっても続いており、タバコを吸う、誰かを、子供の頃、おもちゃで遊ぶ子度と重ねて読んでみました。

俎板の檜の香に血と肝の臭み混じりし夕餉の支度

職とは、命を繋ぐこと、そして、それは犠牲というか、流血を伴うこと。それを思って歌いました。
夕ご飯を作るという、日常的な行為の中に、板の上に生き物の死体を乗せ、その血肉を刃物で切り刻む。文章にしてみると案外グロテスクなその行為、しかし、それは今も日常として続いている。
ある意味不条理なその光景が日常になっていく、やっぱり生きるとはグロテスクなのだ。そう思って歌いました。

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