私(クリエイター)が価格表を出せたワケ
先日、「私(イラストレーター)はなぜ価格表を出さないのか」という記事を書きました。
その中で、私がクライアントワーク(=依頼を受けてする仕事)の場合は、
毎回クライアント様のご希望に合わせてフルオーダーメイドで制作するため、あらかじめ内容を予想する事ができないから、料金も出せないのです。
と言っています。
ところがですよ。
実は私は、一部のサービスについて、価格表を作って公開しているんです。
できへん言うてたやんか…嘘やったんか…?
違います違います。
先の記事では、「『フルオーダーメイドのご依頼』に対しては価格表を作るのは難しい」という事の説明です。
つまり、フルオーダーでなければ、価格表は作れるんです。
価格表が作れる条件とは
先の記事では、フルオーダーメイドの商品に価格表が作れないのは、クライアント様のご希望や条件次第で内容やコストが大きく変わるため、と書いています。
では、こちらで条件を限定してしまう…つまり、セミオーダーならば、内容やコストはクライアント様のご希望等に影響されにくいという事でもあります。
私が見積もりをする上で考慮する項目は、ざっと以下の通りです。
①イラストのサイズ、色数、枚数
②描画する内容(人数、背景の有無、描き込みの程度)
③資料提供の有無、調査やデザイン起こしの要否
④イラストの使用用途、使用期間
⑤著作権の譲渡の有無
⑥実績公開の可否
⑦納品スケジュール、受注時の繁忙度
⑧打ち合わせの頻度、リテイクの数(見込み含む)
⑨継続案件かどうか、今後やこれまでの付き合いの有無
この内、こちらである程度限定できてしまう条件といえば、
①イラストのサイズ、色数、枚数
②描画する内容(人数、背景の有無、描き込みの程度)
③資料提供の有無、調査やデザイン起こしの要否
④イラストの使用用途、使用期間
⑤著作権の譲渡の有無
⑥実績公開の可否
⑦納品スケジュール、受注時の繁忙度
⑧打ち合わせの頻度、リテイクの数(見込み含む)
あれ? ほぼ全部じゃない…?
作業内容を絞ることで、工数の予想が立てられる
例えば、SNSのヘッダーとかアイコン、チラシやパンフレットの表紙・カットなど。これらには定番のサイズがありますよね。
さらに、描き込む人数や背景の有無、リテイク数に制限を設ければ、作業時間や労力も予測しやすくなります。
例えばTwitterのアイコンなら。
サイズや用途は決まっているし、描く内容も「顔のアップ、人物一人、背景なし」の場合がほとんどです。内容がシンプルなので、打ち合わせや資料もそんなに必要ありません。
それに誰から頼まれてもそんなに工数が変わるとは思えないので、定額で決めてしまえそうです。
不確定要素が減る
= 工数の予想が立てられる
= 大体の金額が出せる
→ 価格表にできた!
こう書くと簡単そうに見えますが、この場合はこう、こっちに当てはまるならいくら、のように、たくさんの商品をセミオーダー化していくのは骨が折れます。
なので、どの条件を絞り込んで価格表に落としこむかは、クリエイターそれぞれの制作方法、働き方や得意分野によってかなり違ってくると思います。
セミオーダーの価格表を作るメリットは結構大きい
価格表を作るメリットはいくつかありますが、私が特に大きいと思うのが
・見積もりコストの削減
・問い合わせのハードルを下げる
この2点です。
見積もりコストの削減は、つまるところ時間の短縮です。
過去の実績や相場、自分なりの基準、そしてクライアント様に納得してもらえそうかどうか。
そういうものをああでもないこうでもないと、調査したり調整したりしながら計算するのって結構時間と労力がいります。
これが削れるのはとてもありがたい。
それに、クライアント様も条件や資料を送ったり、見積もりが届くまで待つ時間が減りますのでスピーディです。
問い合わせのハードルを下げるについては、最初にある程度の基準を示す事で、クライアント様が予算や内容の予測を立てやすくなり、問い合わせのとっかかりにしやすくなるんじゃないかな、って。
「仕事を頼みたいけど、いきなり高額なオーダーをして、仕上がりが満足できなかったらどうしよう…」
そんな不安も、
「この内容・このクオリティで、この料金です」
と示す事で、
「この金額でこのサイズなら、それより小さいものはもう少し安いかな?」
「この描き込みでこの料金なら、もっと密度を上げてもらうにはこれ以上の予算がいるな」
「よし、価格表の条件との相違部分にどれだけコストがかかるかを聞いてみよう」
という風に緩和されるのではないでしょうか。
また、クライアントが発注先を複数の候補者の中で迷っている場合は、
「AさんとBさんなら、価格表が出てるAさんの方が、見積もりを待つ時間もやりとりも減らせるから頼みやすいな。Aさんに依頼しよう」
ということも十分にあり得ると思います。
(これについては、「より安い値段で頼める所」を探されると不利になるかもなので、一概には言えないんですが…)
経験値が溜まれば価格表を作れる
唐突に引っ張り出してきました、“経験値”。
新しく始めたサービスほど料金を出しにくい理由って、(技術力とは無関係に)まだ経験値が溜まってないからなんじゃないかな、と。
自分では「これぐらいの工数、コストだろう」と予測していても、案件の数だけ不測の事態は起きるもので…。
その度、「もらいすぎたかも」or「これじゃ赤字だ」って悩んできました。
でも、数をこなせばこなすほど、不測が予測の範囲内に収まっていって、工数とコストを安定させられてきたと思います。
実際、価格表を作るまでにLive2Dモデルを何体も作りましたし、サービスの内容や料金も何度も見直して調整しました。
なので私は、価格表を作るメリットがデメリットより大きいと感じられ、かつ工数の予測が立てられるぐらいに経験値が積めたオーダーについては、価格表を作ることは可能だし、実際に順次価格表を作っていこうと思っています。