紙飛行機
広い部屋の中を、紙飛行機が滑ってゆく。
天蓋付きのベッドから対面の壁に向かって真っ直ぐに。
そのままぶつかり、鼻面をひしゃげさせながら落下する。
壁沿いの床は、さしずめ紙飛行機の墓場だった。
床に散らばるそれらを片付けながら、執事が主に声を掛ける。
「坊ちゃん、シシリー様から贈り物です」
応えはない。執事は構わず続けた。
「今度は絶対に気に入る、とのことですよ」
広い部屋の中を、紙飛行機が滑ってゆく。
変な軌道を描いて。
室内を俊敏に飛び回る小さな竜が、宙空でそれを捕まえ、爪と牙でビリビリと破り裂くと、辺りに紙吹雪が舞った。
天蓋の向こうから聞こえる、微かな笑い声。
床に散乱する紙屑を片付けながら、執事は目を細めた。
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Twitter300字ss 第85回 お題「紙」 ジャンル「オリジナル」
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Twitter300字ss企画内にて今年いっぱいの連作延長戦、竜の棲む世界を舞台にしたシリーズ6作目です。よろしければ次回もお楽しみに(´-`)
【前のお話:王座】
https://note.com/1_ten_5/n/n6b11af89d8f4