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Twitter300字ss

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Twitter300字ssの投稿作品置場。毎月のお題に沿って各執筆しております。どのお話も300字きっかり、サクッと読める掌編小説です。お味見にぜひ(´-`) (※毎月第1土曜… もっと読む
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#Twitter300

来し方 行く末

 砂漠の谷底で、空を見ていた。
 何も持たず薄物一枚の私に、氷点下の夜は超えられまい… キャラバンは私を捨てたのだ。

「おいっ、大丈夫か?」
 抱き起こされ、薄目を開けた。
 ぬるい水が口元を伝う。
 私は跳ね起きると、水筒に齧り付いた。
 私を死地から拾ったのも、またキャラバンだった。

 拾い拾われ、留まる者も去りゆく者も、入れ替わり立ち替わり…
 長い長い間、そんな風景を見続けてきた。

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竜の眼

 言い伝えでは、この島の端にある小山は、大昔に傷つき流れ着いた竜なのだと言う。
 島民は皆、この話を信じている。

「それにしても蜥蜴が多いな」
 浜辺を歩く足元で、ちょろちょろと細長い黒緑色が走る。
 背の金属質な虹色が美しい。
 小さな島だ。一日あれば歩いて一周できる。
 で、朝から歩いてその場所に来てみたのだが…
「竜には見えん」
 ついて来た村の子供が笑う。
「でも見てるよ」
「え?」
 

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採掘人

「糞野郎」と罵られるのは慣れている。
 実際の所その通りなので、ぐうの音も出ない。
 だが、客に困ったことは、一度もない。
 この黒紫色の希少な宝石が、どこで採れるかを知っているのは、俺だけだからだ。
 護衛を担ってくれる幼馴染にも、詳細は教えていない。

 俺は秘密のその岩山で、竜糞の小山を探す。
 ある鉱石を食べるその竜は、消化できなかった宝石を糞の中に残すのだ。
 背丈を越える小山を掘り返し

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オアシスにて

オアシスにて

 頬杖をついて泉で戯れる一人と一匹を眺める。
 否、はしゃいでいるのは人間だけか。
 仔竜は概ね大人しいものの、かといって特に懐く風でも無い。

 習性で砂に潜ろうとするが、一度乾涸びた影響か鱗の隙間が広がってしまい、そこに砂が挟まるのが不快らしく、しょっちゅう身体をくねらせては地面を転がりまわっている。
 見兼ねたリロが、両手で抱えて泉で振り洗いしてやっているのだ。

 水に浸けた身体を揺らすと

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