採掘人
「糞野郎」と罵られるのは慣れている。
実際の所その通りなので、ぐうの音も出ない。
だが、客に困ったことは、一度もない。
この黒紫色の希少な宝石が、どこで採れるかを知っているのは、俺だけだからだ。
護衛を担ってくれる幼馴染にも、詳細は教えていない。
俺は秘密のその岩山で、竜糞の小山を探す。
ある鉱石を食べるその竜は、消化できなかった宝石を糞の中に残すのだ。
背丈を越える小山を掘り返し、掘り返し、掘って掘って、やっと見つけた小指の先ほどの一粒。
大物だ。
沈みかけの夕日に翳し、石の中に火が灯るのをニンマリと眺める。
「平穏無事に戻りました」
俺を見るなりの盛大な顰め面。
「おまえ… ほんっと、くっせぇ!」
ひでぇ幼馴染だよ。
--------------------
Twitter300字ss 第89回 お題「石」 ジャンル「オリジナル」
--------------------
Twitter300字ss企画内にて今年いっぱいの連作延長戦、竜の棲む世界を舞台にしたシリーズ10作目です。よろしければ次回もお楽しみに(´-`)
【前のお話:オアシスにて】
https://note.com/1_ten_5/n/n716b31a1cdc7