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穴熊とバイアグラは硬さを求める。

そのバケモノは、山道で襲ってきたり田畑を荒らしにきたり、そういう野蛮な行為には決して及ばない。
人間を喰らうこともせず、ほかの動植物を襲わず、それでも最強の名を欲しいままにする、とんでもないバケモノ。

そんなバケモノ、いったいどこに……。
そいつはなんと、将棋盤の上に現れる。
盤上片隅にて、ひっそりと固まっているのだ。
あちらからは決して襲ってこないが、しかしこちらが攻撃を仕掛けると、とんでもないしっぺ返しをくらうことになる。
そのバケモノの名は「穴熊」、読んで字の如く穴に入った熊である。

穴に入った熊のどこが最強なのかと訝しむ向きもあるだろう。
やつの真骨頂は、端倪すべからざる硬度!
なんといっても硬いのだ。
硬さはすなわち攻撃力である。
なぜなら、王将が安全であればあるほど、暴力的に攻めていけるというもの。

ところで、ペニスをご存知だろうか。
ペニスもまた、硬さがすなわち攻撃力となる好例。
核に血液を蝟集させ、硬度を最大にすることで、恐ろしくドラスティックな突きを繰り出す。
硬さの暴力。
愉悦に喘ぐヴァギナが目に浮かぶ。

閑話休題。
とにかく硬い穴熊の暴力は、将棋界の情勢を一転させた。
「居飛車穴熊」の台頭である。
それまで、居飛車はどちらかというと攻撃優先の戦略で、囲いは「舟囲い」など薄いものを採用するのが常套手段だったのだが、昭和50年ごろから田中寅彦という居飛車穴熊のパイオニアが現れたことで注目を集める。
田中氏に追随する形でプロ棋士がこぞって研究を重ねていくうちに、居飛車穴熊の優秀さが評価されていき、現代に至る。
将棋もペニスも、攻撃力を研ぎ澄ませるために硬さが肝要なのだ。

硬さがないとどうなるか。
将棋ならば頓死、ペニスならば中折れ。
どうせなら、長持ちさせたいものである。

人生に硬さが足りないとき、ぜひとも思い出してほしい。
穴熊とバイアグラ。

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