NHK出版「学びのきほん」シリーズの一巻。平易な文章で難しいことを言うタカハシさんのスタイル。そのなかでも、より分かり易い方に、そしてより難しい方に連なる内容です。さすがというかやはりというか。このレベルで発言できる小説家をわたしは他に知りません。
面目躍如は3時限目から6時限目。永沢光雄『AV女優』の言葉を皮切りに、坂口安吾『天皇陛下にささぐる言葉』、武田泰淳『審判』(カフカではない)、藤井貞和『雪、nobody』を読みながら、「社会」「国家」と我々の読みについて、見過ごしてしまう立脚点を釘を打つように示している。そして加藤典洋の言葉で締めくくる。ぜんぶ、いい。
どこまで読者がほんとうのところを理解できるかは、その人の心構えに依拠している。わたしも何度も間違える人間なので、何度も読むべきだろう。ほんとうに、読んでいるか、と。
いつも思う。