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SNSの有名人アイコンって大丈夫? 3つの視点から考えてみた

<2022年2月6日 更新>
法律関係に明るい友人からアドバイスをもらい、修正しました。

普段、よくTwitterに入り浸っているのですがアイコンって分かりやすく個性が出るポイントですよね。

自分の写真、風景、自作のイラスト、好きなキャラクター...
そして、「芸能人・有名人」の写真

好きな人だったり、似ていると言われたことがある人だったり、出落ちとして使っていたり、理由は様々ながら体感として目にする機会が多い気がします。
いや、実際に多いでしょう。

元々、自分なりの考えで使わないようにしていたのですが、気になったので実際に利用は〇か×か、根拠となりそうな情報調べつつ、噛み砕きながらまとめてみました。

少し長くなった上に分かりづらい箇所もあるかもしれませんが、ぜひお読みください。

法律関係の記述については、素人なりに調べた情報ですので、解釈に誤りがある可能性がありますので予めご了承ください。
また、その場合はご指摘いただけますと幸いです。

結論から言うと、SNSのアイコンに有名人の写真を使うのは × !! 野放しになってるがやめるべき

さっそく結論を出しましたが、私が調べた結果としては「法律上は違法だが、訴訟に持ち込む人はいないのが現状」といった所です。
なので、端的に『×』と表現させてもらいました。

更新前は法律的にはグレーの解釈だったので『×寄りの〇』としていましたが、新たな情報を元に検討した結果、結論から変更させてもらいました。

今っぽくありよりのあり!!
とか言い切れるとよかったのですが...無理でした!(諦めの境地)

ここからは、なぜこの結論になったのか、「パブリシティ権」「著作権」「写っている人の思い」の3点に分けて説明していきます。

パブリシティ権の侵害に当たることは少なそう

よく聞く肖像権(見た目に帰属する権利)に関しては大まかに言うと「芸能人・有名人の場合、プライベートの画像でなければ営利目的の使用でなければ問題ない」とされています。

が、今回のパターンで気にするべきは、それと似た「パブリシティ権」(有名人が自分の名前や容姿を使って商売をする時、他の人にその名前や容姿を使わせない権利)というもので、【無断で使用】していて且つ【顧客の吸引力の利用を目的】している場合はパブリシティ権の侵害と判断されるようです。

この場合、SNSのアイコンする時に【顧客の吸引】を目的にしていることは滅多にないと思うので、侵害してに当たることは少ないと思います。

というのも過去に、とある週刊誌のダイエット記事にピンク・レディーの振り付け画像が使用された事がパブリシティ権の侵害として訴えられたが、違法とされなかった。という判例があるのです。

(出版社であれば、掲載許可を取ることなんて日常茶飯事&当たり前な気もするんですが……急いでたんですかね...?)

その時、東京地裁としては以下の理由でパブリシティ権の侵害ではないとの判決を下しました。

・記事のメインが「ピンク・レディーそのものの紹介」ではなく、楽曲の振り付けを使ったダイエット法の解説だったこと
・雑誌全体(約200ページ)のうち、写真等を利用したページが少なかった(3ページ)こと

パブリシティ権とは?肖像権・著作権との違いを徹底解説! | THE OWNER

またその際、以下の3点に当たる場合をパブリシティ権の侵害としたそうです。

(1)ブロマイド写真の売上妨害
(2)無断でキャラクター商品にする
(3)商品などの宣伝広告に利用する

ピンク・レディー事件(1)東京地裁 | 写真著作権判例集

ものすごくざっくり言うと、先程の「客引き目的でその人を使っていない」ことに加えて、本人の商売に影響がなければ一応OKといったところでしょうか。

ただ、これはSNSが今ほど普及していない頃の出来事だったので、そこから広がるであろう事象を気にする必要はなかったのかもしれません…
(もしや、「アイコンで興味を持ってフォローしました!」みたいな人がいた場合、客引き目的になる…?)

著作権は条件を満たしていればOKだが…

写真ということは、それを撮った人がいて、撮った本人か掲載メディアの運営元が写真の「作品としての権利」を保有しているわけです。

アイコンでの使用は「私的使用のための複製」として行っているため、版権元に許可を取った場合や著作権フリーが明言されている場合はもちろん、引用元を明記する場合もOKとされています。

が、そうでない場合は著作権の内容を具体的に定めた権利(「支分権」というらしい)を犯すことになってしまいます。

まず、有名人の顔をアイコンにする際には、「写真やネット上にUPされている画像をご自身のPCやネットワーク上などに複製」して使用することになるので、複製権を侵害することになります。

著作権法 第21条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

複製権とは | 公益社団法人日本複製権センター(JRRC)

さらに、TwitterやSNSといったインターネット上のサイト・サーバーに、「権利者に無断で画像等をアップロードする行為」を行った場合は公衆送信権を侵害することにもなってしまいます。

著作権法 第23条
1項:著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2項:著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

第23条 | アース国際特許商標事務所

ちなみに、過去に「個人で楽しむ範囲」はOKと判例で承諾されていますが、その範囲は3〜4人までを指しているということで、不特定多数が閲覧できるSNSはアウト確定な間口の広さです。

ちなみに、ネタツイで見かける画像たちは...?

2020年6月に成立した「改正著作権法」で違法ダウンロードなどの対象が増えたのですが、Webサイトのスクリーンショット・低画質の画像・数十ページある漫画の数コマは著作権者の利益を不当に害しないと認められる「特別な事情がある場合」としてその対象からは除外されました。

ということは単に漫画のコマを使うだけならまだしも、こちらも顔写真と同様、作品のイメージを損ねてしまうような使い方は避けるべきだと思います。(そもそも、ネタツイが営利目的になることはないだろうという前提)

参考:改正著作権法が成立。違法ダウンロードなどの対象を拡大:教育とICT Online

法律上はいろいろとアウトでした

ここまで、パブリシティ権については場合によるものの、著作権に加えて複製権と公衆送信権までも侵害することになることを説明しました。

ここまで来ると、別の疑問が出てくると思います。


じゃあ、なんで誰も訴えられてないの…?

© ぱくたそ

なのに、なぜここまで誰も訴えられてないのか

この理由は率直にいうと、訴訟にかかる費用が見合わないからだそう。(費用倒れと呼ばれているようです。)

今回は取り上げた状況のような民事上の訴訟で請求されるのは基本的にお金です。(建物を明け渡せ!物権を返還しろ!みたいな例外あり)

訴訟・裁判自体もそうですが、訴訟を起こすためには相手方の情報(氏名や住所)を知る必要があるので、多くの人が個人情報を出していないネット上の人を訴えたい場合は、その前に発信者の情報を開示してもらうようインターネットのサーバーへ請求を行わないといけません。

これらの手続きは本人でもできるのですが、とてつもない手間と知識が必要なので弁護士に依頼する場合がほとんどです。
その時にかかる費用と訴訟によって勝ち取れるお金を比べたときに、費用の方が多いため、よっぽど悪質なケースでない限り、わざわざ手間と精神力を使ってまで訴える人はいない。というのが現状です。
(こういうことで有名人が訴訟を起こすとなぜか「ちっちぇヤツだ」とか言ってくる人もいそうですよね)

とはいっても、「ダメだ」と明確に示す前例を作るために訴訟を起こす事も考えられますし、今後あまりにヒドいバカ野郎アカウントが出てきた場合は、悪質だと判断されて真正面からバトルを仕掛けてくる有名人の方が現れるかもしれません。

ストレートに想像すると、芸能人の写真をアイコンに使って暴言を吐きまくり炎上を繰り返すアカウントがいて、それに足を引っ張られてアイコンにされている芸能人本人のイメージが悪くなったとしたら...売上の妨害に繋がりかねないですし、その時は新たな基準ができるかもしれませんね。
(勝手にその事態を想像して、両キ〇タマがひゅんとしました)

昨今の誹謗中傷が関連した事件などの影響もあり、政府の指針としは今後、「それらが要因となっている発信者情報の開示請求をしやすくしよう」といういう動きが出始めているので、近いうちに状況がガラッと変わるかもしれません。

写っている人としても「やめてほしい」

一旦、法律のことを置いといて(置いといちゃダメなのですが)、有名人がどう考えているのか。ということを、考えてみましょう。

訴訟のハードルが高いことを前提にした時、この"本人たちの意向"は、我々ネット民が行動を検討するヒントになるのではないでしょうか。

この点については2人の芸能人が出したコメントを紹介します。

最上もが さん(SNSにて)
「自分の写真をアイコンにされるのが嫌か?」という質問に対して
「正直、嫌です!」
「ファンの人の事は1個人として見てるので、自分の顔だとその人のことをあまり認識できず寂しいから」

最上もが、アイコンが使用されることに「正直、嫌」と拒絶反応 理由にほっこりする人も

星野源 さん(自身のラジオ番組にて)
「僕の個人的な思いとしては嫌です」
「『みんなやっているからいい』みたいになっているけど、テレビや雑誌の画像、僕らがツイッターに上げた画像をとって上げるっていうのは法律的にはダメなんだよね」

星野源さん苦言 SNSアイコン、画像無断使用:朝日新聞デジタル

このように、理由は様々ながらも自分の写真をアイコンにされることは、本人たちとしてはよく思っていないようです。
(歓迎している方がいるかも知れないので、もしその意図を持ったコメントがあれば教えてほしいです)

まぁ......、自分の顔写真を使ってあれやこれや言ってる別人がいると想像ら...嫌ですよね。
シンプルにそう考えてみればいいと思います。

方針をしっかり示すLDH

そして、EXILEや三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(初めて正式名称を知った)などが所属するLDHは「SNSを利用されている皆さんにお願い」というタイトルで、アーティストや作品の画像・動画についてのやっていいこと・ダメなことをまとめて公表しています。

これはあくまで一つの芸能事務所としての見解ではありますが、LDH所属の有名人でない場合も一つの指標にできる情報ではないでしょうか。
LDH所属の方々が写った画像に対する扱いが知りたい場合は、こちらで確認してみてください。

LDH...
今の時代に即しつつ、
半端なく丁寧で抜け目ない会社だ...!!
これは多方面で成功を収めるわけだ...!!

ちなみに、星野源さんは「どうしてもアイコンに使いたい場合は、自分でイラストを描くといったことをしてほしい」ともコメントしているので、イラストが得意な皆さんは腕の見せ所かもしれませんね。

個人的には...やらないでおきたい!

ここからまとめです!(わざわざ言う必要があるのか)

有名人の写真をアイコンにする場合、

  1. 売上妨害や営利目的でない利用なら、パブリシティ権の侵害にはならない。

  2. 著作権(+複製権・公衆送信権)の侵害になるが、訴訟のハードルが高いから訴える人がいない状態。(「野放し」ってやつ)

  3. 写っている本人としては、ファン心理だとしてもあまり良いとは思えない。むしろ不快な人も、もちろんいる。

いつか訴訟されるリスクを背負って有名人アイコンを使う場合も、万が一のことを考えると過激な発言は避けるべきでしょうね。
いくら「あくまでアイコンだから本人とは関係ない」と言っても、その人の顔を借りていることには変わりないですから......

というわけで、
素人なりに調べたことをまとめてきましたがいかがだったでしょうか。

個人的には、(本人の目に届くことがなく、訴えられないとしても)写真に写っている人・そのファンのことを考慮して有名人アイコンは使わない方向でいようと思います。まぁ、そもそも使うつもりもないのですが。

自分がその有名人の形象を背負って、ご本人のイメージを全く傷つけないように発言を選ぶことはとてもじゃないが無理な気がしてるので。
(使っている人に対してわざわざ「やめろ」と言って回るようなことはしませんが)

よく考えてアイコンを設定した人からすると「うるせぇよ」と言いたくなる話かもしれませんが、特に考えたことのない人たちが考えるきっかけになって、みなさんそれぞれとしてのスタンスを形成するヒントになってくれたら光栄です。

もしかしたらリアルの世界より広いかもしれないSNSの世界を、安全に・楽しく・心地よく過ごしていきましょう。

と、自宅のソファの上から発信させてもらいました。


近い話題の記事もありますので、こちらもぜひ読んでいってください。

その他、勉強のために読んだページを貼っときます。


余談:アニメアイコンについて

アニメアイコンについては人が写っている写真よりも厳しく取り扱われています。
詳しくまとめられている記事があったのでこちらをご覧ください。

それじゃ、また。

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