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自由な花屋と不自由な灯油屋

毎回花に関する話題を書いていますが
今はすでに花に携わっておらず
全く別の仕事をしております。
これまで何度か転職をしましたが
その度に全く違う職種に
吸い寄せられていきます。

長年勤めた花屋をやめた後
次何をしようかな?と考えた時
「自由のないモノ」を売りたい。
と思うようになっていました。

自由から不自由へ

当時務めていた花屋では
ブライダルは340件/年くらい施工をしており
売り上げも1.7億くらいある
比較的大きなお店の店長をしていました。

人気の施設の婚礼装花を
専属担当している店舗でしたので
毎週沢山の婚礼装花を作り
納品撤去を繰り返す
クリエイティビティな毎日でした。

そんなお店の店長でしたので
使う花や装花デザイン、購入する花器
販売価格やパンフレットデザインなど
かなり自由に決めれる立場にありました。

そこを辞めるとき
散々自由を楽しんだので
次の仕事は自由のない仕事をしたいと思い
色々考えた結果、
不自由なものを売る事に決めました。

アイテムは一つ
単価は統一のルート販売である
灯油の巡回販売が次の仕事です。

商いの根っこは同じ

私、商いの基本はすべて一緒と思っていて
何かを提供して対価を頂く商売であれば
根っこの部分はすべて同じと思っているので
職種に対するこだわりが
あまり無いんですね。
しいて言えば接客が好きなくらいで。

これまで自分が
自由に出来ていた事を
すべて取り払い
値段も売り方も全く融通の利かない
灯油を売る。

花屋の店長時代に
偉そうに後輩たちに言っていた事、
お客様目線が大事だぞ。と言う教えを
自分は実践できるのか?
という検証の場でもありました。

灯油の巡回し販売

灯油の巡回販売は
主に11月~3月までの短い期間のみの販売で
あらかじめ決められたエリアを
あらかじめ決めたルートで
あらかじめ決めた時間に巡回し
希望の方へ灯油を売る。
という仕事です。
期待してた通り、ほぼ自由はありません。

自分の知識と経験を増やすことで
手の中で無限の価値を生み出せる花屋に対し
何もかも決められている灯油販売。

やってみてどうだったかと言うと
これが非常に面白い。

同じ商品なのに
売り上げにめちゃくちゃ差が出る。
「やっぱり商売って楽しいな」
と改めて感じました。

シンプルだからこそ奥深い商い

曜日ごとに巡回するエリアが決まっていて
毎回同じルートを廻るので
すぐ飽きそうと思うかもしれませんが
巡回中は毎日頭フル回転です。

「どうやったら買ってもらえるのか?」

石焼き芋屋や豆腐屋の様に
予め決められた音楽を流しながら
巡回するのですが
この音楽の聴かせ方一つ取っても
めちゃくちゃ奥深い。
というか、
差別化出来るのがこれしか無いから
そりゃもう真剣に考えます。

スピーカーは車の前後に
2つ付いていますので
主に前後にしか音は広がりません。
当然障害物がある所も音が広がりません。
その為、どこに車を停めて音を聞かせるか?
その場所と時間で反応が全然違うのです。

反応は現実でも事実とは限らない

また毎週音を聞かせて
売ってますよーとアピールしても
全く反応がないエリアもあります。
2カ月間毎回丁寧に巡回しても
全く売れないエリア。

「2か月も反応無いからここは売れない」
と思いがちですが
先輩に相談したら
こんな場合もあるよと教えられました。

11月1週目・・・聞き取れず
11月2週目・・・不在
11月3週目・・・まだ寒くない
11月4週目・・・ストーブそろそろ出そう
12月1週目・・・ガソリンスタンドで買った
12月2週目・・・まだあるから次買おうかな
12月3週目・・・待てずに買った
12月4週目・・・まだ残ってる
1月1週目・・・来週は買おうかな
1月2週目・・・買います!

実に10週目にして
ようやく今シーズン初購入。
聞こえてない、買う気がない訳ではなく
そのタイミングではなかっただけ。
こういうお客様も沢山存在します。

買いやすさも大事な要素なので
同じルート、同じ時間を守る。
時間がバラバラだと
買う気があってもいつ来るか分からないと
最初は待っててくれても
段々と待てなくなり、買われなくなります。

商品の不自由さが自由な発想に繋がる

音の聞かせ方はツール活用の最大化
お客様目線で潜在ニーズを取りこぼさない
買いたいと待ってくれるための安心感の提供灯油の巡回販売は
沢山の商いの基本が通用する職種でした。

また、ご年配の購入者が多いので
重いポリ缶を玄関まで運ぶだけで
「ありがとう」が頂けて
日に日に頂く差し入れが増え
待ってたよーと言ってもらえると
この地域に貢献できているな。
と充実感も頂けます。

外に出て気が付く花屋の自由度の高さの

一方で花屋の売っているものは?
アイテムも多数、価格も自由に決めれる。
一年中営業出来て、イベントごとに売れやすいアイテムがある。
これだけ売るための環境が整っている商いで
売り上げに苦しむのであれば
それは間違いなくお客様を見失っている。

ついつい商品の魅力に注力しがちですが
買いやすさが疎かになってないか?
確認が必要です。

求められているのは?
買いやすいタイミングを増やすには?
あなたに作ってもらってよかったと
選ばれる為には?

ブライダル一つ取っても
他業種を圧倒する程の
アイテム数を施工するのが花屋です。

一つ一つ
お客様目線をしっかりと意識していれば
おのずと売れていく=認められていきます。

花は素材の時点でキレイだから
少々サービスが足りなくても
喜んで貰える珍しい商品です。

謙虚に
花の魅力に頼らず
買いやすい売り場
買いやすい商品
買いやすいタイミングを作り
それが売れるためのルートです

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