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長沢芦雪を串本ではなく、大阪で。そんで串揚げでビール。

長沢芦雪という江戸時代の画家が描いた、和歌山県串本、無量寺の虎と龍の襖絵を見たい、見たい、と思いながら、20年くらい経っていた。

関西方面に行く事はあっても、大阪や奈良からさらに南下して和歌山に行く機会はさすがにないし、大阪から串本は4時間くらいかかるらしい。

芦雪の師匠、円山応挙の虎図は四国は琴平の金毘羅さん詣に行く機会があったので、何度か拝見している。金毘羅宮の書院、応挙の虎図もとても良い。

芦雪の虎図は飛び出せ!ヤンチャ感が可愛く、師匠の虎はじーっとこっちを狙って見てる感が可愛い。
どっちも猫っぽい可愛さなんだけど、芦雪の虎のヤンチャ感がたまらなく好きで、こちらも現物を見たかった。

無量寺 虎図襖絵プリントの帯。(自前)
どう見ても可愛い。
誰しもが見に行きたくなるだろう。

まあ、でも、遠い。
なかなかね。串本は和歌山の最南端だしね。
よく吉宗は紀伊からテクテク江戸まで来たと思うよ、偉いよ。駕籠でも、馬でも。

今年、2023年の夏ごろになって、大阪中之島美術館 特別展 長沢芦雪にこの虎図、龍虎襖絵がセットで登場!というニュース。

東京への巡回を期待したけど、物がデカいから来ないような気がして、大阪まで行く事を決めた。
更に、無量寺の襖絵の展示は前期(〜11/5まで)のみなので、特別展初日の午前中には美術館にいた。

ぐずぐずしてたら、絶対TVで紹介されて(可愛いから)人気出て(可愛いから)混み合うに違いないと…速攻で東海道すっ飛ばして、上方に行ける現代っていいよなーとこういう時にしみじみする。

ありがとう新幹線。ありがとう文明の力。

この襖絵の現物を見るまでに結構な長い月日を過ごしたからか、見るまでの話が長くなった。

で、この襖絵を実際に見て、遠目や近くで見て、フロア展示を行ったり来たり2時間ほどウロウロして、思った事…。

「無量寺で、この龍虎襖絵の空間を体験したい。」

現在の無量寺の本堂の襖絵はレプリカで、本物は応挙芦雪館に納められているとの事だったけど、レプリカでも、この大きな龍と虎の間で座して仏さまに手を合わせた時には、違う雰囲気を感じるかもしれないと。

本物を見て嬉しかったのだけど、結局、いつか串本の無量寺に…と、ふりだしに戻る。

美術館の展示室は全体的にゆったり広くて、龍も虎も筆の運びまでしっかり見られて、遠目からの余白も捉えられて、襖や大きい絵を体感できたんだけど…。
だから、現地で見たいとかえって感じたのかも。

虎。龍。犬。猿。蛙。鶴。鶏。亀。牛。人物。風景。

今までは、応挙芦雪ラインの虎や犬のころころした可愛い絵ばかりにフォーカスして見ていたけど、太い線でも細い線でも、大きい画面を貫いていく勢いのある筆の運びで、余白で海や空、空間を感じる広がりがあって、対比して描写物の存在感や場面感が引き立って、面白いんだなと考えた。

細部まで『写実的』ってほどじゃないのに、その描かれた風景に取り込まれてるような、リアルサラウンド感もあった。
お寺のお堂や広間でこんな襖に囲まれてたら、人の世の目線からきり離れて、世間の事を俯瞰しながらお勤めに没入するかもしれない。

猫っぽいと言われる、可愛い芦雪の虎図だけど、禅定のためのあしらいなんだろうか。
龍図は雲海から出てくる龍の畏さがあるのに、虎図は漫画のよう。

禅寺、禅に対してストイックで権威的なイメージを私が持っているからか、キュートさが不思議。
この雰囲気はどこから出てきたのかと。

展示を見終わったあとに聴講した記念講演でいただいたハンドアウトの参考資料に次のような記載があった。

〜芦雪は当時の禅林と密なる交流を保っており、禅宗からとても強い影響を受けた。とくに白隠慧鶴禅師の鵠林との関係は深く、芦雪の美的性質と禅林文化の精神性の間には、明らかな共通性が認められる。

大阪中之島美術館 「特別展 生誕270年 長沢芦雪 ー奇想の旅、天才絵師の全貌ー」記念講演資料 河野元昭「長沢芦雪ー創造的伝統主義者ー」(『聚美』25 2017)

白隠禅師といえば…

…勢いや表情の方向性が確かに似てる。
他の作品も。
白隠慧鶴さんの達磨図なども可愛い。漫画的なキュート。

2016年の六本木ヒルズの村上隆、五百羅漢図展も勢いの中に小さーく五百羅漢図があって、毛筆の禅の丸(円相)もあった。長沢芦雪展にも芦雪の「方寸五百羅漢図」という作品があり、これは超ちっさい。

五百羅漢図って精神のコアと漫画的な可愛さ、デフォルメした勢いは禅のトンマナみたいなもんだろうか。
禅の思想はよくわからないけど、権威的ではなく意外とカワイイOKでファンキーなのかもしれない。

まあまあそのうち、串本に行ってみようと思いながら、帰りの大阪駅新幹線改札内の「串かつだるま」でずらし旅セットとビールをいただいて帰宅。

ずらし旅の体験クーポンで、串かつ、豚かつ、天然エビ、
ウィンナー、鳥つくね、牛ひれ肉の6本と巾着がついてきた。
ここ、ビールうまかった。

串かつ食べて帰ろー程度で、意識してなかったけど、「串かつだるま」、だるま、達磨。
禅な1日だったみたい。

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