Nコンのはなし

Nコンとは「NHK全国学校音楽コンクール」のことを指す。
コーラス部がめちゃくちゃに強い小学校出身の私にとっては幼い頃から身近なものだった。全国レベルの合唱を毎年聞かされていると音楽的な知識が無くてもシンプルに感動するのだ。全国レベルのコーラス部がクラスに何人かいて、その人たちと一緒に歌うとなぜか上手くなった気にもなって、音楽の授業がやけに楽しかったことも覚えている。

その中でも個人的に好きな課題曲を3つ紹介したい。

① いのちのいっちょうめ

新しいクラスで 友だちができたり
25メートル ぜんぶ泳げたり
牧場で子ウシが うまれるところや
ねっこから ねっこまで にじを見たとき
ウー ワーッ エーッ オーッ
ぼくらの こころは 空までさけぶ
レントゲンじゃ 撮れない 胸の奥から

いのち いのち いのちのいっちょうめ
ほんとうのきみが 住んでる場所さ
ときどき忘れて 迷子になるけど
一歩 一歩 いのちのいっちょうめ

金メダルとったら どんな気持ちだろう
宇宙へ行けたら もっとすごいかな
わたし今日電車で 席をゆずれたよ
新記録 みたいに うれしかったよ
ウー ワーッ エーッ オーッ
なにかが できるって 花たばのよう
もらっても あげても 勇気がわくね

いのち いのち いのちのいっちょうめ
大好きなきみが 帰って行くみち
会う人みんなに 笑顔ができるよ
いっこ いっこ いのちのいっちょうめ

2010年/小学校の部課題曲より

2010年、まさしく私が小学校4年生の時の課題曲「いのちのいっちょうめ」、体育館で体育座りでコーラス部の合唱を聞いたときに言葉にできないほどの感動を得たことを今になっても思い出せる。恐らく今になっても音楽を聞くことが好きな理由の根源はここからきていると思う。小学生の部の課題曲としてはど真ん中、大人になって見返してもいい詞だと思う。

その中でも特に好きなのが、

なにかが できるって 花たばのよう
もらっても あげても 勇気がわくね

こんなにカッコよくて勇気を与えてくれる詞があるだろうか。幼かったころ、出来ないことの方が多かった私たちにとって何かが出来るようになることは成長で、言葉にはしないけど嬉しかった。そんな複雑な感情を端的に曲に落とし込む言語感覚、脱帽です。

② 次元

教室の壁の世界地図
一筆書きでつなぐ星
トイレの扉の男と女
心の形を表すマーク

誰もが輪郭を知っているもの、の ほんとうのかたちを誰も知らない
世界を創った瞬間「神様」
選挙でバンザイ「国会議員」
四月一日きょうから「先生」
私の誕生日だよ「お母さん」

誰もが呼んでいるその名前、を 与えられる、ほんの、1秒前は

その線が取り込み逃した空間のにじみ
その言葉が掴みきれなかった時間のふるえ
輪郭をなぞるだけでは 名前を付けるだけでは

だから私は想像する
線をひかずに、呼び名を決めずに xでもyでもない、
私の思考が伸びうる次元で その物体の奥行を、
その肉体が歩んだ歴史を あらゆる空間と時間を抱え込んだ
立体としての世界の構造を
私は想像する 私は想像する
xでもyでもない、
私の思考が伸びうる次元で
たったひとつの命同士になるまで、私は

2016年/高等学校の部課題曲

歌詞を見た瞬間に震えるという経験はあるだろうか。朝井リョウが作詞をしたと聞いて納得した。この歌詞を2016年時点で書いていた朝井リョウ、どんな世界の見え方をしていたのだろう。全てがパワーワードであり、パンチライン、これを高校生たちはどのような気持ちで歌ったのだろう。朝井さんの言葉は無駄がなく、読みやすいからこそ合唱との親和性も高い気がする。高校生の部って感じですよね。最高です。

③ 明日のノート

一番好きな人じゃあないと やや遠回しにフラれた週末
コンビニの雑誌コーナーで 表紙の誰かが笑ってた
愛は勝つと歌う友だち 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

平均点との追いかけっこに とうとう負けた夏休み明け
全然勉強してないはずの あいつとあいつが笑ってた
勝ち負けの問題じゃないというけれど 問題じゃないなら勝たせてほしい
失恋のせい 友だちのせい 親のせい 世の中のせい
青春は せいせいせいだらけ あーせい こーせい いわれても無理!

消えたくなる日もあるけれど マイナスの気持ち知ったことはプラス
未来のページは真っ白で 書かれる言葉を待っている
落書きだって かまわない 自分の言葉を なぐり書き
そこから始まる 明日のノート
消したくなる日もあったけど とことん縮んだからこそジャンプ
未来のページは真っ白で 書かれる言葉を待っている
落書きだって かまわない 自分の言葉を なぐり書き
そこから始まる 明日のノート

2024年/高等学校の部課題曲

俵万智さんの作詞、本当に凄い歌詞ですよね。
Nコンのサイトに以下のようなメッセージも発信されています。

十代の心は十代の肌をしている。むきだしで、なめらかで、傷つきやすく、だけど回復する力もある。イヤなことや思い通りにならないことも多いだろうけど、どんな経験にも意味はあって、いつかあなたの糧になる。みなさんより少し長く生きて、もう消えないシミやらシワでいっぱいの、私からのエールとして書きました(そのシミが作詞の原動力!)。

「明日のノート」には何を描いてもいい。立派じゃなくていいし、「いいね」なんかつかなくていい。だってそれは、世界でたった一つの、あなたのためのノートだから。

Nコン課題曲紹介/俵万智さんからのメッセージより

説教臭さもなく、生活に根付いた言葉だと感じます。
このnoteに書き殴っていることもなんだか歌詞とリンクする気すらします。そこから明日が始まる、心の深いところに言葉が響きます。
小学生の部の明るい曲も好きですが、高等学校の部ならではの良さもありますね。

他にも証など、超有名な課題曲もあるのですが知っている人が多いと思うので省いてしましました。ぜひNコン一度でいいから見てみてください。
小学生のうちに出会えたことはめちゃくちゃラッキーでした。感謝。

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