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#14 それは自転車の手放し運転のように駆け抜けた


andymori(アンディモリ)は、2007年に結成された日本のオルタナティヴ・ロックバンド。2014年10月15日解散。和製リバティーンズとも呼れる。バンド名はアンディ・ウォーホルと「メメント・モリ」(藤原新也によるインドの写真集)を繋げた造語。 〜Wikipediaより〜

たまたま付けたラジオ番組。andymoriのボーカル、小山田君はその番組のパーソナリティだった。柔らかい喋り方をするその青年は、どうやらバンドマンらしい。雑誌を読みながら何となく聞いていた。オープニングのトークが終わって、曲が流れた。

「それでは、andymoriで "ベンガルトラとウィスキー"」


流れたその曲はきいたこともない歌だった。少年のような透き通った声に、ギター、ベース、ドラムの音が鳴り響く。手放し運転の自転車のような危なさだった。退屈な何かをこのバンドはぶち壊してくれるんじゃないか。ボクはこのバンドのぜんぶを見逃したくないと思った。彼らは目を離せばどこか遠くへ行ってしまうかもしれない。そんな気がした。

それからandymoriは瞬く間に人気バンドになり、2010年に発表した2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」は、第3回CDショップ大賞において最高賞を受賞した。その後、ドラマーの脱退やアルバムのリリースを経てandymoriは解散を発表した。本当に、あっという間に解散した。

「このバンドでできることは、全部やりきった」

解散ライブは日本武道館だった。andymoriは、僕の目の前で輝いて消えていった。だけど、その光は眩しすぎて、目の裏側に残像として残っている。

このバンドの美しさの正体は、壊れてしまうような儚さにあった。少年のように透明な声も、飾りっけのない詩も、いつか壊れてしまう気がするからこそ美しさを感じてしまう。そしてそれが、多くの人を魅了したとボクは思う。

andymoriが解散して、小山田君は「AL」というバンドを組んだ。今年、2020年にはソロ名義のアルバムをリリースした。

彼は一度、4.5mの高さから河川に飛び降りて、自分の命を投げ出そうとしたことがある。全てのライブは中止になった。ボクは彼の抱える暗さの全てを知ることはできないけれど、またこうやって彼が生きている時代に、彼の新曲を聞くことができる事を嬉しく感じる。

小山田壮平の歌には独特の匂いがある。それはきっと、生と死の匂いだ。生きている素晴らしさと、いつか死んでしまう宿命。そしてそれらを愛することをandymoriはボクたちに伝える。

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