もりです

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人類は月へ行ったか

「なぁ、アポロって知ってるか?」 昔、一人の友人がいた 彼とは幼い頃に会ったきりで、今となっては名前も思い出せない だが、あの日の出来事だけは、不思議と鮮明に記憶している 「アポロ、知ってるだろ?宇宙船だよ。テレビでよくやってる、月に行ったってやつ」 そいつと僕はかなり仲が良く、放課後は二人で近場の海岸へ遊びに行くことが日課になっていた 仮に彼をカイと名付けよう カイは随分と変わった奴で、無邪気で無鉄砲で、子供らしい性格をしている反面、唐突に何やら小難しい奇妙な話をすることが

    • 抱いた想いの名前

      鳥の声 眩しい昼の太陽が、暑いという訳でもなく、優しく光っている よく手入れされた芝と木々の間に敷かれた石畳の道 すっかり使い慣れた松葉杖で体を支えながらその真ん中を歩くと、まだ春には遠いというのに、早めの花がちらほら見えた 入院なんて、一体いつ以来だっただろうか 傍のベンチに腰掛けて、大きな病棟を仰ぎ見る 勤務先の火災から四ヶ月と少し 全身を覆っていた包帯も随分少なくなり、今ではこうして歩き回れる程にまで回復した 火傷の跡もほとんど消え、医者の話では松葉杖ももうじき必要なく

      • 恋人

        今日、初めての恋人ができた 何も持っていなかった私を、彼は一番だと言ってくれた 彼といると毎日が幸せで、空っぽの私は満たされていった ある時、彼が事故に遭った 「もう歩くことはできないだろう」と医者は言った 悲しむ顔を笑わせたくて、私は彼に足をあげた 両足を切断した 歩けなくなった私を、彼は生涯守ると言った 出掛けることは難しくなったけれど、それでも私は嬉しかった ある時、彼が怪我をした 「もう肩から先は動かないだろう」と医者は言った 悲しむ顔を笑わせたくて、私は彼に腕

      人類は月へ行ったか