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「生」でしか分からないことをnoteで【オーロラ編】

 リアル感、ライブ感。技術の進歩が著しい中で綴りたい。「生」の良さを体感した話。

オーロラを見たか
 死ぬまでに体験したいことの一つに、「オーロラを見る」を挙げている人も多いんじゃないか。
 大学生の自分も同じ思いだった。

 2019年2月。自分は卒業旅行でアイスランドにいた。6日間の滞在で、初日の夜からそれを体験した。
 唯一首都でオーロラを見ることのできる国、それがアイスランドだった。もっともこの国に来たのは別の目的があったわけだが。ブルーラグーンという、世界最大の温泉に入りたかった。言ってしまうとオーロラはおまけだった。
 
 初日は空港で。「あれ、オーロラじゃね?」「どうかなあ」くらいのぼやぼやとした感じだった。それからいきなり濃くなって、緑色のカーテンが上空にかかった。

 ゆらゆらと、カーテンの下の方が白く輝く。赤い色もちらちらと。形を変えながら、ヘビみたいに移動していく様を僕らは興奮してずっと眺めていた。

 運が良かった。その言葉では言い表せないほど。オーロラが見れる確率は3日に1度くらい。天候が数日変わらなかったりするから、何日も見れなかったりもする。
 今回の旅は6日間。うち見れたのはなんと5日間だ。終わりの方は「あんまりすごくないから車ん中いようぜ」なんて。贅沢な男たちだった。

 とにかく写真を撮って回った。辺りは360度星だらけ。気温はマイナス2度前後。澄んだ空気は興奮で火照った顔を冷ますには心地よくて、天然プラネタリウムを存分に満喫した。

 そこまでは記憶に残ることもない〝ただの最高の旅〟にすぎなかった。

きたる感情の爆発
 
最後の夜だった。セルチャルトナルネースの灯台付近に車を止めた。辺りには同じようにオーロラを見る人がちらほらと。すでにそれはうっすらと広がっていた。

 オーロラは形を変える。空一面にだって広がる。

 突然何重にもカーテンが連なり、オーロラが一面、渦のように回っていた。金銀の紙吹雪のような強い光が空を覆う。緑だけじゃない、赤やオレンジ、白も混ざって。好きな歌手のライブの時もああいった演出は興奮するけど、あれを遥かにしのぐものだった。
 360度見渡す限りオーロラ。生き物みたいって言われたりもするけど、アニメで見るような天国からの祝福みたいな、神秘的なものを感じた。
 最後の写真みたいに、終わりは水平線の方に消えていき、薄く緑がかったもやがあるだけ。時間にしたら3分から5分くらいのものだろう。それでも自分にとったら名作映画みたいな濃さだった。
 
 その夜は意外なほどによく眠れた。オーロラの様子が変わるたび叫んでたし、それほどまでに感情を使い果たしたのだと思う。宿に帰った後は盛り上がるわけでもなく、各々がその幸せを噛み締めていたのだ。改めて盛り上がったのは翌日朝だった。

オーロラ爆発から
 
オーロラ爆発。カーテン状よりもっと活動レベルが高いと見られる、コロナ状のもの(今のご時世でなんだけど)。一つ筋のオーロラが突然破裂したかのように激しく広がって、空を包み込む、究極の現象と言われている。
 月に数回、もしくは年に数回と言われている「レベル5」のオーロラを見た!と最終日の朝、話は持ちきりになった。
 真下からオーロラを見ると、ひらひらの部分は見えず線っぽくなることも、本当に凄いものを見ると人間は直感的な言葉しか使えなくなることも。あの光景は写真や動画なんかじゃ分からない。これらすべて、生で見た者だけの特権かもしれない。

 人間は感情移入することで何かを得ようとする。ただオーロラを流した映像よりも、バラエティ番組で気持ちの代弁者がいることでより形になるのだと思う。
 唐突に映画「花束みたいな恋をした」の話をする。この映画では、リアル感に基づいて作られている。実在する人物の名前や商品、展覧会が多く出ている。「この展覧会行ったな」とか、「この人の作品私も好き」とか、「この駅よく通ってた」とか。
 そこに、どこにでもあるような、自分がするかもしれない現実的恋愛模様を作り出して感情移入するよう仕向けられている。
 「生」は感情が大きく揺さぶられる。人生の中で心が震える瞬間を、人は「生」で立ち会う。だからこそ、感情移入は「生」に近づく方法の一つじゃないかと思っている。

 noteで「生」を題材にする難しさを知った。だって生は生が一番だから。でも、アイスランドでの出来事に誰かが感情移入してくれたら。コロナで出歩けない今だからこそ、noteで「生」を綴りたい。

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