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百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者(読書メモ)

百戦錬磨のプロ経営者による経営指南書です。

本書は新日本プロレスリング株式会社社長兼CEOのハロルド・ジョージ・メイ氏が、これまでのキャリアを振り返りながら、自身の経営論について熱く語った1冊です。

新日本プロレスのV字回復までのストーリーというよりは、マーケティングや経営観といったビジネス寄りの内容でしたが、様々なグローバル企業で活躍してきた著者ならではの着眼点や考え方は勉強になりました。

では、いつも通り印象に残った内容をピックアップします。

マーケティングは「売る科学」

マーケティングには様々な解釈があるなかで、この表現は言い得て妙だと思いました。マーケティング畑出身の著者による事例も豊富で面白かったです。

経済の基本は商品やサービスを生産し、流通・販売して利益を得ることです。そしてマーケティングとは世界中の何十年や何百年にもわたる経済活動のノウハウ、理論、成功例などを蓄積し体系化したものであり、物やサービスはどうすれば売れるのかということを徹底追求した科学だと思います。
私はマーケティングが天職であると若い頃から感じていました。商品を売るために世の中のあらゆる物を見て心に刻むこと、誰に何を売りたいのか商品のコンセプトを徹底的に考えること、データを活用し数字で周りを説得すること、パッケージデザインや色、ネーミングにも妥協しないこと、商品ができた後は自ら販売先を探し売り込みに行ってプロモーションをすること、プロモーション方法やツールにも工夫を凝らすこと。これらのことが楽しくてたまらず、これまでさまざまな商品を世の中に出してきました。
成熟した市場でそれ以上は成長の見込みがないように見える商品でも、新たな売り場の開拓や潜在的な使用ニーズを掘り起こすことで市場が 1・ 5倍や 2倍になることがあります。マーケティングに関わる人は売り場を観察することと業界の常識に縛られないこと、そしてもし自分のアイデアが不発に終わってもチャレンジし続ける強いハートが必要です。

ビジネスにはマメさが必要

仕事におけるちょっとした気遣いや心配りが、最終的には大きな差となる気がしてます。本書で事例がある通り、「メールではなく電話する」「印刷物に手書きで一筆添える」などといったアナログな対応を使い分けることも大事だと再認識できました。

料理にひと手間をかけるとグッと美味しくなるように、ビジネスもひと手間の工夫がモノを言います。そのひと手間が人の心を動かしさまざまなことを可能にするのです。料理が勝手に美味しくなったりしないように、ビジネスも勝手にミラクルが起こってV字回復したりはしません。
最近では取引先への連絡方法はほとんどがメールだと思いますが、私は時々あえて電話をかけることがあります。先方はメールではなく電話がかかってきたので何事かなと思われますが、直接話す方が距離が縮まったり、よりスピーディーに大きな話がまとまることがあります。
さらに毎年会社から出す取引先への年賀状は印刷されただけのものを出すことが多いですが、私は必ず一言メッセージを添えるようにしています。本来、年賀状は一年の感謝やつながりを保つために送るのに、プリントされた葉書だけではその意味があまりないと思うからです。

情報収集力

著者の一番の強みは「情報収集力」だと思います。とにかく情報感度が高く、集めた情報をビジネスに活かす力が群を抜いてる気がします。

一見無関係に見える遠い世界の出来事が、巡り巡って意外な形で身近に影響を及ぼすことがあります。地球の反対側で起こった事象でも、それが自分のビジネスに影響があるかもしれない、事前に知ることでトラブルを回避できたり新しい事業につながるかもしれない、そう思いながら毎日情報収集をしています。
実際、これまで何度も幅広い情報収集のおかげで思いがけないビジネスチャンスをつかんできました。「時は金なり」と言いますが、私はそれに加えて「情報と人脈は金なり」だと思います。
情報収集は世界のニュースや経営者との会食、講演会の交流からだけではありません。社員ともコミュニケーションを頻繁に取り、なるべく直接報告を受けること、逆にこちらの情報や要望も事あるごとに伝えるようにしています。毎朝私は会社に行くと入口から自分の席まで毎日オフィスの中を歩くルートを変えて、遠回りをしながらできるだけ多くの人に声をかけて話すようにしています。

社長の役割

①先を見据えること
②リソースを用意すること
③妨げを取り除くこと

全て納得でした。社長にしかできないことがシンプルに言語化されてます

一つはずっと先の未来を見て組織を率いることです。社長とその他の働く人との一番の違いは「意識する時間の範囲」の違いです。生産でも営業でも経理でも、通常は数週間先から数カ月先、長くても1~2年先のことを考えて動いていますが、社長は日々のオペレーションと同時に5年後や10年後のことも見据えなければなりません。ショートターム(短期間)だけでなくロングターム(長期間)で将来図を描き、時間がかかることにも早くから準備を進め、足場を築くのが社長の最も重要な仕事だと思います。
もう一つの社長の仕事は準備中や進行中の各事業にリソース(ヒト・モノ・カネ)を用意することです。必要な人材や資金、技術、生産拠点や物流システムなど実務担当者とコミュニケーションを密に取りながら、自らが推進力となって、幾つものプロジェクトが実現できるよう手を尽くします。たくさんの計画があっても実現できるのはそのうちの半分ほどで、しかもそれがヒットする確率はもっと低いので、なるべく多くの種をまくよう促すこと、リソースは限られているので優先順位を決めて配分することが仕事です。
三つ目の仕事は「妨げを取り除く」ことです。
〜(中略)〜
困難にぶつかった時に担当者が人知れず悩んで問題を先送りにしたり諦める前に、すぐに相談してもらえれば社長としてできることはあります。取引先に出向いて直接話をしたり、もっと良い取引先を探して替えることもできるはずです。経営者同士の人脈で問題が解決することもあります。暗礁に乗り上げる前に躊躇せず相談してほしいです。だからこそ日ごろからの社内のコミュニケーションが重要なのです。

まとめ

最近はプロ経営者という言葉をよく聞きますが、なかでも本物のプロ経営者は手数(フレームワーク)と実行力が桁違いということを改めて理解しました。

プロレスファン以上に経営者層へおすすめしたい1冊となりました。

あと最後に余談ですが、個人的におすすめしたいプロ経営者本も紹介します。

①ザ・会社改造

②USJを劇的に変えた、たった1つの考え方

③星野リゾートの教科書

※星野さんは正確には創業家一族ですが、やってることはほぼプロ経営者と一緒なので同じ括りにしてます。

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