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暖房の効きすぎた映画館で「ラストレター」を観た。

何はともあれ、時間ができると映画を見るのが習慣だった。

数年前までは半額デーを心待ちに、TSUTAYAへ足繁く通ってたのが、今では動画配信サービスでどこでも映画を手軽に観れてしまうのだからすごい。恵まれた時代だ、と思うものの、映画館という空間で大きいスクリーンに没頭する時間は未だ何ものにも変えがたい。

昨年、引っ越してからはふらっと映画館に行く、ということが出来なくなってしまい、どうしたものか…と思っていたけど、車を1時間弱走らせれば観れないこともない。
これまでは東京や名古屋に行った時にタイミングがあったものを観ていたけど、今年になってから観たい作品が多すぎて「もう我慢ならない…!」と車を走らせた。

初めて訪れるその映画館は、チェーンのシネコンではなくおそらく老舗のエリア限定ローカルシネコン。まだ最終上映が残っているのにチケット売り場もフードコートも閉まりかかっていて、スタッフはベンチに座ってプライベートのおしゃべりに夢中だ。
お昼ごはんを食べ損ねていたので、なんとかギリギリポップコーンを買わせてもらい、会場へ。ひとりかと思ったけれど、先客が1名。少しホッとした。

岩井俊二監督『ラストレター』を観た。

監督:岩井俊二
主要キャスト:松たか子、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介、森七菜

邦画ファンで岩井俊二監督作品を観たことのない人はいないだろう。例に漏れず、私も大好きな監督。残酷なテーマすらも美しく描き出しながら、リアルさも保ったストーリテリング。今観ているものは現実なのか、ファンタジーの中にあるのか、曖昧になる。初めて『リリイ・シュシュのすべて』を観た時は衝撃的すぎて吐き気がしたけど…。公開時はインターネットも黎明期に近かったけど、そのプロモーション方法も斬新で最新鋭だったな。

とは言え、実はすっかり上映されているのを忘れていて、ハッと思い出して猛烈に観たい気持ちが抑えきれず。まさかこんなに美しい作品だとは…。いや、岩井作品だというだけで、予測はしておくべきなのだけど、むせび泣くような感動ポイントがあるような作品ではない。観ているうちに、小さい欠片が積み重なっていって、ぐっとこみ上げる瞬間が何度も訪れる、というか。ひとつひとつの言葉が、静かに刺さってくる。言わずもがな、あらゆるシーンの描写がとにかく美しい。

過去作品を観ていると、ぐっとくるシーンも多々あると思う。スワロウテイルを感じる場面もあれば、もちろんラブレターも、花とアリスも、リップヴァンウィンクルも…。

「何が良い」という正確な感想にも何にもなってない文章だけど…「恋」というよりは、いろんな「愛」が含まれた作品だったように思う。

あぁ、SWITCH買いたい。しまった、パンフ買うのも忘れた。どこかで買わなきゃな。

岩井俊二監督特別編集による、主題歌『カエウルノウタ』のミュージックビデオをよろしければどうぞ。主題歌の透明感もたまらん…!

帰り道は霧と雨。最近は運転にもだいぶん慣れてきたけど、下道で帰るんだった…と少し後悔する。その日は無事に帰宅できた安堵と、効きすぎた暖房で火照った身体と、作品の余韻をひきずりながら、布団にもぐりこんだ。

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