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1/30 受験シーズンの広告(2020年ver.)

来ましたね、またこの季節が。以前書いたこの記事へのアクセスが若干あったようなので今年も書いてみたいと思います。

この時期の主役は「カロリーメイト」の広告です(博報堂制作)。

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制作者の意図がブランドサイトに記載されているのだけど、「見てろよ」って良いですよね。受験生って周囲から守られる立場にある存在(気を遣われたり、言い方を変えると腫れ物のように扱われたり)なので、暖かいトーンとか、内からも外からも”上げる(上げてもらう)”感じがあるんだけど、より受験生の内面が吐露されるようなコピーになったのが印象的でした。”上げてもらう”んじゃなくて、”(自分で)アガル”感じです。

受験生は、知のアスリートだ。
目標に向かって日々、考え、悩み、疾走する。
迷うことや、止まりたくなることもあるだろうけれど、
それでも前に向かう、その姿は純粋にカッコいいと思う。

「見せてやれ、底力。」というコピーは、毎年
カロリーメイトから受験生におくってきたメッセージですが、
今年は受験生自身が、そんなこと言われなくても分かってるよ、
見せてやるよ、『見てろよ。』と思えるような、
前のめりでアグレッシブなCMを目指しました。
広告は、数学の証明問題のようなものだと思っています。コピーはその美しい補助線でありたい。今回のテーマは、考える人に食べて欲しいということでした。このコピーが完成した時、なんだか人ごとのように、「ああ、だからカロリーメイトは受験生を応援していたのか」と妙に納得しました。(遅いわ)やっぱりコピーって、発見するものなんですね。見つけるのが遅くなってごめんよ、カロリーメイト。
(catch 福部明浩)

広告を数学の証明問題に例えるあたり、クリエイターの方の思考は独特であるなぁと思います。あと、「補助線」という表現、個人的には好きです。

毎年この時期に思うのが、企業が消費者とどう関係構築(エンゲージメント)するか、とても難しい時代になったと思う。

これだけ情報が溢れていて、しかも消費者の側もほぼ全ての情報を(物理的には)手に入れられる環境が整ったなか、企業が消費者に何を提供できるのか?企業は消費者との結びつきをより強化できるか?というのは非常に重要な命題だ。

しかしながら情報の非対称性は依然として存在する。例えば消費者が手に入れられないモノの1つに「消費者インサイト」が挙げられるだろう。消費者(例えば受験生のA君)は、自分が何を求めているか?どんな商品であればお金を出すか?などは語ることができる。しかし、他の受験生(他校のB君や他県のCさんなど)が何をどう考えているかまでは分からない(というか、いちいちそこまで考えない)。一方で企業は事業を展開していく上で蓄積した知見やノウハウがある(大塚製薬はポカリも販売しているから高校生に強い)。我々は大学受験を人生で1回(浪人すれば複数回)しか経験しない。だから個人でみれば点でしか捉えられない人生のイベントを、企業は毎年受験生に対してメッセージを発信しているので点ではなく、線で、面で受験生という存在を捉えることができている。だから、彼ら受験生に刺さる広告というものを作ることができるのだろう。

カロリーメイトの広告が素晴らしいと思うのは、消費者(つまり受験生とその親など)との距離感が絶妙であるということ。「受験生応援」というと聞こえは良いが、「結局は商品を売りたいがための販促でしょ?」と言われない何かがある。その何かが重要なんだが、言語化できない。。企業の担当者の力であり、クリエイターの力であることは疑いの余地はない。

アドブロックが浸透して「広告=悪、邪魔もの」という認識が一般化してしまったが、こういう良い広告もある。そういう広告を業界内が切磋琢磨することで今後も生み出していけば、「広告はいらない」ということにはならないと信じたい。

そのために出来ることを、地道に頑張ろう。

※個人的には満島ひかりの広告が大好きです。


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