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寿司日乗506〜512

2024年4月15日(月)晴れ

朝、病院へ。季節の変わり目に体調を崩すことにコロナ以降過敏になっているものの、今回はいつもの慢性的なやつで安心する(のもどうかと思うが体力以上にマインドがやられていくあの過程はもう味わいたくない)

私は性根がひん曲がっているので見聞きするものに対し色眼鏡の強い感想を持つものの、直接口にはしないが自分は嫌な奴だなとは思っている。定食屋で母と娘が昼飯を食べていた。娘は髪を引っ詰め姿勢もよく白いタイツを履いていた。会話の内容からもバレエの稽古をやっているとわかる。母は娘にもっとこうしなさい、ああなさいと苦言を言っている。娘は顔色ひとつ変えず黙々と食事をし、凛とした空気を纏ったまま母の小言を聞いていた。かたや母。猫背で足を組み、両肘を机に乗せ味噌汁を啜っている。「なんとも説得力のない光景」と思う私「母の夢を娘に託したのか、本人のやりたいことか母の言うことを真摯に聴く(ように見える)娘の実直さ」に勝手な想像をし聞き耳を立てる。お茶を汲みに席を離れた母。一人になった娘は大きなため息をついて首を360度回した後に右手のフォークを立て机にドン!と一回。親と子も難儀。

2024年4月16日(火) 晴れ

昼、身体が本調子ではないが腹は減るので近所の定食屋に向かうも学生の行列。仕方なし。弁当を購入して昼飯。朝日新聞、ざっと読み気になる記事をメモ。イランがイスラエルに対し、初の直接攻撃を行ったというニュース。イランは、シリアにあるイランの外交施設が攻撃されたことへの報復であり「自衛権の行使」としているという記事を隅々まで読み無言。
そういえば阿久悠は毎日の記録を手帳に記す中でその日気になった新聞記事もメモしていたと本で読んだ。世の中の空気、その時代の流れを汲み取り歌詞にする為とも言っていた(大意)。

以前、飲み屋で(スレッドに)何故日記を書くのかと聞かれた。本にするの?と。私にとって日記ではなく日々のドローイング的なもので日記は個人的につけているし、本にするものは本の為に書くと思うと答えると「ああ、そうか。書くために書いてるってことね」と返ってきた。そうです。
毎日ジョギングするようなことです。

作業にとりかかるも白目のまま終わる。
晩飯を作り早めの晩酌。何も頑張っていないので申し訳ない程度に発泡酒。

2024年4月17日(水)晴れ

咽頭痛がなくなっただけで健やかな気持ち。
店が混む前にといつものファミリーレストランに行き、いつもの席に座る。厨房が近いのでスタッフの往来も多い。私はこの店でいつもイヤフォンをはめているのだが、何も聴いちゃいない時もある。そして私は今日、知ってしまった。
「そのコーンスープ、とんがりメガネの人のだよ!」コーンスープは私の机に運ばれてきました。
ワタクシ、この店に来る時はいつも先端の少しばかり尖ったキャップを被りメガネなんですよ。
私はどうやらとんがりメガネとこの店の朝シフトのガールとボーイに呼ばれている。まぁ、いい。
暫くして猫ロボットがハンバーグを運んできた。
スープも一緒に乗っけてくれりゃよかったのに。
何も傷つきやしない。なぜなら私もガールやボーイにこっそり愛称をつけている。
相思相愛ということにする。みんな、感じのいい人ばかりなのでよし。これは愚痴ではない、とうとう私にも「頻繁に来る客に呼び名つけちゃいがち」のつけられる順番が巡ってきた。みっともない客にはならないようしなければ。
今日はこのことだけ考え寝る前にコナンを観だだけの1日。ズコ〜。

2024年4月18日(木)晴れ

朝から夕方まで作業。
夜、新宿にて晩酌。舞台挨拶終わりYさんと飲酒。移動して阿佐ヶ谷、友人がカウンターに立つ馴染みの店。勤続10年を祝う。久しぶりに深夜まで飲酒。雑談にはハッとする心理が含まれています。

2024年4月19日(金)晴れ

トマト、トマト……トマトのことばかり考えて起きた勢いのままスーパーでトマト缶とトマトを購入。調理して昼飯。

買い物への道すがら、つつじで形成された垣があり、その前を自転車で通り過ぎようとした男子中学生3人組の1人が手のひらを垣に添わせ指先で新緑と花弁をなぞりながら通り過ぎて行った。私はその一緒の光景に幼い頃同じようにしていたことを思い出し泣きそうになってしまった。
蛇行しながら走らせていた自転車、サドルにまたがった時の視線の高さには垣や壁のざらつきが(壁によって異なる凹凸が気持ちよかった)目に止まり指を這わせていた。あの感触を味わいたく私も同じようにやってみるが歩く速さではやはり感触が微妙に異なる。
自転車は目的地まで早く向かう為の乗り物というだけではなく、歩くでも走るでも味わえない、時間のたわみの合間を曖昧で絶妙な速度で走ることができるものであったことを思い出す。私はそれがとても好きだった。春の風のたっぷりとした重たさを肌で感じることができる絶妙な速度も。

指先を垣に当て今年初めて、いやこの数年の中で久々に身体で春を感じた。

2024年4月20日(土) 晴れ

日付がかわり、寝付けないままNetflixで映画を4本観てしまい気づくと朝。どうしてもクロワッサンが食べたくなり近所のコンビニに向かうもない。チェーン店の喫茶に入りモーニングをテイクアウトしようと注文し待つ間、レジ担当の青年は新しく接客しだした老人と険悪なやりとりを始めていた。早朝の勤務は眠たさもあるのだろう気怠さを言動と行動で目一杯表現している青年は老人に対し「SかMかL、(ため息)意味わかります?」と言ってのけた。私は咄嗟に老人に向かって「大きさはどうしますかと聞かれてます、1番大きいのがLですよ」と伝えた。老人は「じゃあMでいいです」とひとこと。青年は無言でガン!ダン!と大きな音を立てて任務をこなす。イラつきがみてとれる。

ただ珈琲一杯を頼むのに青年と老人の間に生まれるディスコミュニケーションの中に断絶される若者と老人の(それは未来の私でもある)社会の縮図を垣間見たようで胸糞が悪かった。「お手数かけました、ありがとう」と言う老人を無視した青年に対し腹を立てたとて何もならないが心の中で「小僧、その全部は自分に返ってくるぞ」と思いました。

2024年4月21日(日)晴れ

昨晩、馴染みの店で晩酌していると馴染みのお客さんに蒲鉾と銀鮭を2切も頂いた。ワタクシは飛び上がり喜びたい程に好きなふたつだったが、大人気ないのはよくないとニコリ微笑みお礼を言う。今朝、銀鮭を白米と出汁、酒、醤油、生姜で炊き込み朝飯。
昼、家の窓を全て開けていると気温の高い午後は特に風の強さも相まって向かいのお宅に綺麗に咲いたツツジの甘い匂いが入ってくる。気分がいい。3時間程作業、のち晩酌。蒲鉾に切れ目を入れて生わさびを注入して頂く。旨い。
ネットにてCaravanのIn The Land Of The Grey And Pink LIVE映像を見つけ鑑賞。カンタベリーロックを収集していた20代前半、SOFT MACHINEとCaravanは特に好きだった。久しぶりにRobert Wyatt、マッチングモウルを聴きしみじみとする。酒がすすみ気づくと寝落ち。

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