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美術特講の前身、WHITE ROOMの軌跡

2021年、美術手帖、美学校の後援を得て、第一級第一線の講師で、基本まるまる2日間を費やして、美術史をやっていました。

WHITE ROOMとは――

今や日本を代表する場所である渋谷スクランブル交差点。そこを見下ろすようにある井の頭線ホームに向かうブリッジには岡本太郎「明日の神話」があり、夜、ブリッジからスクランブル交差点を見下ろすと、ガラス越しに「明日の神話」とスクランブル交差点を行き交う人や車が重なって見える(上記写真は野口博さんにより2021年4月26日撮影)。その情景は、311からコロナ禍に至る災間という時代を象徴するように、まるでそこがゴッサムシティの一角であり、渋谷駅前という谷に、ホアキン・フェニックス演じるジョーカーのように踊りながら落ちてくる人々が行きかっているように見える……。
スクランブル交差点から109を斜めに見て道玄坂を登りきったところにホワイトルームはあります。まっしろに塗りたくられた部屋には、4Kのプロジェクターが備え付けられており、そこでは世界の最前線のアート画像が珠玉の解説とともに見ることができます。

●1月23日(土)、24日(日)は、神野真吾さん(千葉大学准教授)による「西欧美術全史」を開催しました。

「美術作品を見る、美術の歴史を知るということは、単なる「良き教養・趣味」に留まらず、感性的に時代や思想を理解することでもあります。そしてまた、現代の美術をめぐる様々な問題も、そのように見ることができるなら違って見えてくるはずです。」(シラバスより一部抜粋)

●2月20日(土)、21日(日)は、『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中公新書)の山本浩貴さんによる「現代美術史」。まだ言語化されていない現代美術の最前線を誠実な言葉で語っていただきました。
https://tocana.jp/2021/02/post_198319_entry.html

「主に1960年代から現在までをカバーする本講義では、それぞれの時代において、何が、どのような社会=政治的・歴史的・地政学的な文脈の下で「芸術」とされ、何が「芸術」ならざるもの(非芸術、反芸術)とされてきたかを概観します。(略)「芸術」と「社会」を相互に独立した領域と捉えるのではなく、複雑に絡み合いながら「構築」されてきた何かとして描き出します。本講義を通じて、天賦の才を授けられた人々「だけ」が形成することができる世界というイメージを覆すような、私たちが暮らす社会と密接に関わりながら進展してきた、芸術の歴史(の一端)に触れてもらうことができれば幸いです。」(シラバスより一部抜粋)

●3月14日(日)は、松下徹(SIDE COREディレクター)さんによる「日本とストリートアートの歴史」 。この講義はのちに「美術手帖」2023年7月号(美術出版社)の特集「日本のストリートとアート」に結実します。

「日本ではストリートアートというとBanksyだけが取り糺されていますが、そもそもBanksyはストリートアーティストの1人であり、グラフィティとストリートアートへの理解があってこそBanksyについてより深く知ることができます。またストリートアート について考えるとき、一般的に欧米だけを中心としたカルチャーとして捉えられていますが、日本、特に東京はストリートアートの歴史の中で非常に重要な場所です。本講座では現代美術とグラフィティを中心としながら、ファッション/ヒップホップ/インターネットカルチャー/デモ、様々な運動が混ざり合うストリートアートについて解説します。ストリートアート について知ることは「もう一つの美術史」に光を当てることと同時に、東京の記憶を発掘することにも繋がります。帰り道の渋谷の街がいつもとは全く別の風景に映る、そんな講義にしたいと思っています。」(シラバスより一部抜粋)

●4月17日(土)、18日(日)は、加治屋健司氏(東京大学教授)が送る「日本近代美術概論」。東京大学で一学期分を2日間で集中講義しました。

――この講義では、第二次世界大戦後の日本で作られた美術についてお話しします。「現代美術」の範囲は時代とともに変化しており、近年では1990年代以降の美術を指すことが多くなっていますが、そうした現代美術が日本でどのような経緯で生まれたのかも含めて、1945年以後の日本美術の流れを概観します。作家が何を考え、どんな作品をつくったのか、どのように解釈・評価されているのか、その作品は、社会や政治、海外の動向とどのように関係しているのか。日本における現代美術の基本を学び、これからも生まれ続ける美術を理解するために必要な知識を得てもらえればと思います。(本講義シラバスより)

●4月29日(木)、30日(金)は、卯城竜太(Chim↑Pom)さんの「芸術の突破法」、Chim↑Pomとは何かを渋谷で語り尽くしました。松田修さんも協力。この講義はのちに「芸術活動論」(イースト・プレス)として単行本になりました。

――1960年代に赤瀬川原平らネオダダが主張したアンセム=「いまやアクションあるのみ」。その言葉は、アフター311&コロナ禍という今の時代でも有効に機能するのだろうか。アクションには必ずリスクがあるがそれをどう突破するのか。はたしてQアノンによるホワイトハウス襲撃はアートなのか。「9.11は最大のアート」(シュトックハウゼン)だったのか。激変する世界の中で、Chim↑Pomがやってきたこと、やろうとしていることの全体像を解き明かし、アートとアーティストの定義をあらためて問い直し、独自の美術史を語る全8講!!(本講義シラバスより)

●6月19日(土)は、鴻野わか菜さん(早稲田大学教授)にロシア現代美術の全貌を1日集中講義〜ソビエト崩壊以降のロシアでのアートの変貌を辿る〜でした。
——この講義では、1950年代から現代までのロシア美術史を俯瞰します。政治と美術の関係(公式芸術と非公式芸術、検閲の動向)、ソ連時代や新生ロシアにおける美術の「サバイバル」のプロセス、新生ロシアにおけるアートをめぐる環境の変化についてお話しします。(後略)日本や世界との交流、コロナ禍における新しい動向などの観点から、現代ロシアアートを読み解いていきます。(本講義シラバスより)

●7月4日(日)は、鎌田由美子さん(慶応大学准教授)による「イスラーム美術の世界」。日本ではほとんど知られていないイスラーム美術の世界を1日集中講義しました。

――「イスラーム美術」は、宗教美術(モスクや、コーラン写本など)と世俗美術(アルハンブラ宮殿や、挿絵入り物語写本など)の両方を含みます。その点が「キリスト教美術」や「仏教美術」と大きく異なります。広大なイスラーム圏では、各地の美術伝統と、イスラームが合わさって、独特の美しさと魅力を持つ美術工芸品が生み出されてきました。本講では、イスラーム美術と西洋、日本とのかかわりを考察することを通じて、華やかなイスラーム美術の世界をご紹介します。(本講義シラバスより)

●10月31日(日)は、森川嘉一郎さん(明治大学准教授)による「おたく文化史」。「おたく」誕生から38年! 激変した「おたく」の変遷を、おたく文化の国際展示の第一人者が集中講義しました。
https://wezz-y.com/archives/93610


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