【雑感】2022年J2リーグ 第16節 対水戸ホーリーホック~青すぎるDF陣への試練~

東京ヴェルディ 0-2 水戸ホーリーホック

試合終了後、まばらな拍手と足早に席を立つサポーター。これがこの試合に対してのサポーターの評価だろう。変わらぬメンバーで繰り返すかのようなミスでの失点、敗北。この日も露骨に表れた場面を触れつつ試合を振り返りたい。

スタメン

 前節新潟に3-4で負けたヴェルディ。脳震盪で離脱していた山本理仁が復帰。右ワイドには阿野真拓が起用される。
 一方の水戸は前節・町田と0-0の引き分け。この日は黒石、森、新里、安藤、木下と5名を入れ替えて臨む。

前半

 スタートから左に入った新井が立ち上がり、いきなり存在感を示す。タッチライン際からカットインすると右足を振りぬき挨拶代わりにミドルシュートを放つ。続いて、ライン間でボールを貰った森田晃樹が右から中央に移りつつ左足で果敢にシュートを放つ。シュートが少ない傾向にあるチームでこの日は良い入りをしたかに思えた。
 立ち上がり早々に2発ミドルシュートを放たれた水戸はボール非保持時に1442で守り、前線2トップ+中盤4枚の6枚が敵陣に入るほど前がかりになり最終ラインもハーフラインくらいまでかなり高い位置を取り対応する。これにヴェルディはGK高木和+4バック+アンカー山本理仁の同数6枚で応じる。IH森田晃樹と梶川が水戸中盤の背中に位置取り、ここでボールを貰おうとする。

 ただ、圧縮された陣形に苦労したヴェルディは立ち上がりこそ良い形が取れたがそのあとは自陣でのミスも重なりシュートへ転ずる機会が減って行く。そこで、ボールを左右に揺さぶり水戸の最終ラインを徐々に下げて行きサイドからのクロスで仕留めようとする。左から新井がクロスを入れて、PA内で動き出した森田晃樹がファーで折り返し気味に合わせるも左ポスト直撃、SB深澤大輝が攻撃参加からヘディングシュート放つも枠を捉えきれずとチャンスは作れていた。

 チャンスは出来ていたが、左からの攻撃に偏りがあったこと、攻撃陣に高さがないこと、本職と呼べる選手が佐藤凌我しかいなかったことでPA内での動き出し・駆け引き、シュート精度に欠き、水戸DF陣に脅威を与えていたのかは微妙な感じを受け取った。

 対する水戸はボールを握ると気持ちが良いくらいにゴール方向へ選手たちのベクトルが向いていた。2トップ安藤と木下の個人技、両SH森と椿のサイドからの仕掛けと素早い攻撃が中心であったがボールを握るとしっかりと組み立てる場面もあった。

 DH前田と新里が縦関係になり片方が最終ラインに下がり3バックを形成し、SBは外へ開く。これに対してヴェルディは佐藤凌我と森田晃樹の2トップ化で1442で守るもSHになる阿野真拓が対面する椿のスピードに警戒するあまりSB大崎やCB鈴木へのプレスが甘くなりこの2枚へのプレッシャーが緩いことが目立った。特に鈴木には自由を与えすぎてしまい、簡単に利き足である左足で縦パスを通されることが増え一気に守備ラインを1列2列と突破される。

 椿にスピード乗った仕掛けを許し、阿野真拓は単純にスピード勝負に負けて交わされて、ピンチを招いた。久しぶりのスタメン起用になった阿野だが攻撃面ではサイドで起点を作ることが何回かあったがシュートを放つなど目立ったプレーもなく、守備面では対面する椿と大崎に苦労することが多く厳しい内容で前半で交代を余儀なくされた。

 水戸がボールを握るとどんどんゴールへ向かって攻めてくることもありボールが行ったり来たりすること多い前半だった。
 ヴェルディがネガトラ時の約束事がしっかりと整理されてなく、ボールホルダーへ寄せるだけで残りの選手が守備位置に戻ることが遅いため2CB+アンカーが広大なスペースをカバーする必要が出てくる。ただ、3名ともにスプリント力が優れている訳でもなく振り切られて一気にピンチを招いていた。水戸の安藤と木下の2CFが攻め残りしており、この2名だけでもフィニッシュまで持って行くこともあったし、森や椿が後方から追い抜くことも加わりポジトラの迫力が出ていた。

 一方でヴェルディは佐藤凌我が2回ほどドリブルで持ち運ぶ場面が見られたが、対する水戸は2CB残した状態でありこの時点で数的不利であり周囲のサポートも遅く結局、ゴールから遠のくように誘導されてフィニッシュまで持っていけなかった。凌我のドリブルコース取りなども課題があるがトランジションでの強度の低さが明確であった。

 内容では水戸に圧倒されるも辛うじてスコアレスでハーフタイムを迎えることが出来た。

後半

 ヴェルディはハーフタイム明けに阿野に代えてバスケスバイロンを投入してそのまま右サイドに入る。ここ数試合連続でスタメン起用したワイドの選手が前半で下げているのはゲームプランなのか上手く行っていないのか疑問が残る采配である。

 3戦連発と勢いあるバイロンの気迫に水戸も押されたのか立ち上がりにペースを握ったのはヴェルディだった。右からはバイロンと深澤大輝、左は新井と加藤蓮がコンビネーションから攻め込むことが増えてクロス供給しゴールに迫っていく。

 さぁ先制点の匂いがしてきたぞと思った矢先、まさかの出来事が起きた。54分、自陣深い位置まで戻されたボールを高木和を含めてパス交換を行っていくと、水戸の選手たちも追いかけてプレスをかけていくと、谷口栄斗のパス?クリア?を交代出場した曽根田がカットGK高木和の位置を見ながらPA外からコントロールシュートを決めて水戸が先制する。良い流れが出来ていたヴェルディには悔やまれる失点である。これまでも見られた谷口栄斗のパスミスからの失点がこの日も繰り返されてしまった・・・。繋ぎのパスとクリアの状況判断が鈍いことは深刻な課題だろう。

 ビハインドの状況にヴェルディは森田と佐藤凌我に代えて石浦大雅と河村を投入。しかしこの交代がパッとしなかった。河村は走って前線から追いかけ、裏抜けを狙おうとするも肝心なシュートが無くあまり効果が無かった。このタイミングなら流動的にポジション取りをしてくれる杉本竜士の出番だっただろう。

 先制点を挙げた水戸がエネルギーを増して盛り返すとヴェルディは攻め込む回数が減って行く。水戸がボールを回しながら追加点を伺いに行くとGK山口からのロングボールに安藤と馬場が競り合うがお互いにボールに触れられず通過すると、木下が抜け出してそのまま持ち込みシュートを決めて2点目を挙げる。馬場も競り合いで触れられず後ろへ渡すことが毎試合のようにあり空中戦の対応に課題を感じる。

 後半立ち上がりにやっと攻撃のリズムが出来て押し込めていた時に自滅するように2失点。完全に雰囲気がぶち壊れた。水戸は守備を固めつつ選手交代やファールで倒れて上手く時間を使い試合を進めて行く。
 ボールホルダーへの寄せも速くコースを限定することでGK山口もシュートを確実に防ぎ、ヴェルディが17本放ったとされるシュートにも安定のセービングを魅せて完封シャットアウト。ヴェルディは2連敗を喫した。初黒星から8試合で6敗と重症である。

まとめ

 馬場晴也と谷口栄斗の2CBコンビを起用し続けている限り、残留争いや降格の覚悟が頭をよぎる。”若いわり”には光るものもあるが、J2でスタメンを張る他クラブ選手と比べて、守備能力が格段に高いわけでもなく、スプリントやビルドアップ力が優れているわけではないと思っている。難しいことばかりをしようとして毎試合ミスを連発して失点が敗戦に直結する繰り返しは非常に悪い状態だ。実力と経験の浅さから一度失点すると立て続けに失点をすることが散見される。この事態でもずっと起用されることは、他選手たちへのモチベーションにも影響が出ているだろう。平やンドカ、山越と経験ある選手を軸に立て直しを望むが、それでも序列が変わらないようであればとても厳しい未来が待ちうけているだろう。
 最終ラインの編成もさることながら、中盤も構成を替える時期に差し掛かっている。上述の通りに攻撃時に可変システムになるが、ネガトラ時の配置がしっかりとリスクマネジメントされていないためボールの失い方が悪いと失点に結びつくようなピンチの連発である。まずは守備から、完封するような固いブロックを作ることが成績向上の必須科目となる。