【雑感】2021年J2リーグ 第37節 対モンテディオ山形~土台を作り上げていく~

東京ヴェルディ 2-1 モンテディオ山形

 敵地・山形で勝ったのは、なんと2014年ぶり。ホームでの試合も含めても勝った印象がほとんどない苦手なチーム相手に内容はともあれ勝つことが出来たのは好材料だ。主審が主役になった残念な試合であったが、活気ある選手たちの戦いぶりを振り返ってみたい。

スタメン

 前節・甲府相手に身体張った集中した守備でスコアレスドローに持ち込んだヴェルディ。中3日で迎えたこの日は左SBに前節はDHだった山本理仁。DHには加藤弘堅を起用。前線にはトップ起用されていた小池を右SHに配置して最前線に佐藤凌我を起用。森田晃樹をトップ下にした14231システムで臨む。ベンチには怪我から復帰した平が半年ぶりに入る。
 一方の山形は前節・栃木に2-1で勝利して4連勝。こちらは中2日での戦いになる。左SBに吉田、左SH加藤を入れ替えて臨む。南秀仁にとっては古巣との一戦になる。

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前半

 ヴェルディは戦い方とメンバーを変えてスコアレスドローに持ち込んだ前節・甲府戦をベースにして上積みしていくと監督や選手たちが口をそろえて決意表明した。それを受けての立ち上がりを注目してみると、その言葉は間違ってなかったと気持ちが伝わる内容だった。

 最前線の佐藤凌我はヴェルディの選手の中では守備意識の高さ、献身的な守備、運動量がトップクラスであり、久しぶりのスタメン起用に応えるようにキックオフの笛と同時にアグレッシブにピッチを駆け回る。すると、早々からチャンスを作る。高い位置でボールを繋ぐと、凌我を経由して最後は右サイドの小池がPA内へ入っていき、シュートを放つ。開始早々から強度高く取り組んでいく姿勢が感じられた。

 トップ下に入る晃樹は攻撃時には凌我と近い距離を保ちながら相手選手から離れてフリーでボールを持ち、チャンスメイク。守備時には2トップ化して山形最終ラインのボールホルダーへチェックする凌我とは別にDHへのパスコースを切るような役割を担っていた。凌我のプレスに連動するように左SH杉本竜士もスピード溢れるプレスで寄せて行き、山形にバックパスを蹴らす場面が多い。DH藤田と南に対しては梶川と加藤が喰いつく形でマークして開始序盤はヴェルディペースで進む。

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 10分くらい経過してきて、山形の徐々にヴェルデイのスピード感溢れるテンポに慣れてくるとビルドアップでショートパスを多用して一旦、ゲームを落ち着かせ始める。右SB半田、DH藤田は流動的に立ち位置を変えてスペースでボールを受けては前進させ陣地を押し進めていくと、前線のターゲットマン・ヴィニシウス中心にヴェルディゴールへ迫る。

 ただ、主導権はヴェルディが握っていただろう。山形の前線のヴィニシウスと山田、SH中原と加藤がヴェルディのビルドアップ隊にプレスをかけに行くもDH藤田と南はリトリートするようなことが多く、梶川と加藤がピッチ中央でフリーになる場面が何度か見られた。また、フリーになることを恐れてケアすると、ヴェルディのビルドアップ隊の誰かがフリーになり、ロングボールを蹴り入れる。特に右サイドの小池へのボールが目立ち、対面する左SB吉田に勝り、何度もサイドを切り裂く。

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守備に攻撃に勢いを持ったプレーを続けるヴェルディが優位に試合を進めていくと、前半18分ごろ、先述のとおりにフリーになりパス交換する梶川と加藤が組み立てていき、凌我に渡ると振り向きざまにシュートを放つ。これが相手選手の手に当たり、CKの判定へ。これにヴェルディの選手たちがハンドを主張した結果PKへ。ここからが主審の酷さが始まる。
  この判定に山形の選手や監督が「ハンドではない」ようなことを抗議すると、再びCKの判定に。これにヴェルディ側が再度抗議して結果的にはPKで落ち着いた。長い間、いろんなカテゴリーや国の試合を見てきたが二転三転四転もするように判定がコロコロ変わるのは初めて見た。VARが導入されていないにもかかわらず、なぜこのようなことになったのか主審のレベルの低さに言葉を失った。
 5分~10分程度の時間がかかり、ようやく試合が再開。直後のPKを小池が相手GK藤嶋の動きを冷静に見て、ネットを揺らしヴェルディが先制する。

 その後、山形がボールを握る時間が増えてパス本数も多くなるもヴェルディの前線からの守備、攻め込まれても加藤、若狭、ンドカ中心に身体を張る守備でシュートを許さずに試合を進める。

40分、ピッチ中央でパスを受けたフリーの梶川は楽々と前を向きながら、右の小池へ浮き球のパス。小池は見事な裏抜けからゴールラインギリギリで中へ折り返す。これを凌我がダイレクトで合わせてヴェルディが追加点。開始からフリーになりがちなDHの梶川、サイド制圧した小池が見事に結果に応えて貴重な追加点を挙げる。

 そのあともCKから加藤が決定的なヘディングシュートを放つ場面もあり、大方の予想を覆すようにヴェルディが2-0でリードして前半を終える。

後半

 2点ビハインドの山形がサイド攻撃からPA内で落とし、際どいシュートを放ち、何度もゴールを脅かす。ヴェルディは守備ラインがジリジリと下がっていき、クリアするのがやっとになり敵陣に侵入する回数が減って行き、防戦一方で苦しくなる。山形のビルドアップに対しても前半のように前線から連動することが減って行き、加藤と梶川がボール回収・インターセプトの鋭さも落ちてきて中央を使われて一気に運ばれることが増えてくる。

 69分、中原のシュートがンドカのハンドを誘い、今度は山形がPK獲得する。これをヴィニシウスが決めて1点を返す。

 1点差に詰め寄られ、残り20分。嫌な予感がしてきたなかで状況を変えたのは小池に代わり途中出場した新井だった。堀体制になってからジョーカー的役割で短い時間ながら何度もドリブルを仕掛けてはチャンスメイクをする好調さがこの日も発揮される。右サイドをドリブルで駆け上がり相手を交わしては陣地回復。敵陣に入ると勢いもったままシュートと劣勢の状況を挽回する活躍で盛り返す。

 負けじと山形もサイド攻撃からヴィニシウス、半田、そして交代出場のマルティノスがシュートを放っていくもマテウスのファインセーブ連発。山形がCB熊本を上げてパワープレー、対するヴェルディはキャプテン・平がた6か月ぶりに出場して1点を守り切り、ヴェルディが2-1で勝利を挙げて5試合ぶりの勝ち点3を手に入れた。

まとめ

 試合を通してみると、主審の残念さが印象に残るものであったが、ヴェルディの選手たちの頑張りは確かなものだった。前節からの継続性がどうなるかと注目してみたら、見事に継続する形が見られた。ここ数年ではあまり見られないような雰囲気を感じ取り、次節、次々節がどうなるかますます気になっていく。
 ボランチに加藤、CFに佐藤凌我、サイドに小池と適材適所で本職の選手たちを並べたことでその能力が遺憾なく発揮され、締まった試合になったと考える。一時期は絶不調だった若狭もメンタル面での復活もあったのかパフォーマンスが上がりつつあり、地味ではあるがマテウスのシュートカバーで何度もゴール内を守るなど堅実さも出ている。
 また、途中出場の新井が短い時間ながら何度もドリブルを仕掛け、試合終盤で両チームの選手が足が止まるなかで良いアクセントをつけている。そろそろ得点やアシストが見たいところだ。
 この勝利で残留は数字上でもほぼ確定した。今後に向けての戦いになるのか、次節長崎を見守りたい。