【雑感】2022年J2リーグ 第15節 対アルビレックス新潟~位置的優位のシーソーゲーム~

東京ヴェルディ 3-4 アルビレックス新潟

 せっかく同点まで追いついたのだから勝ちたい試合であった。試合を通して、お互いに流れを掴んだ理由を考えてみたい。

スタメン

 前節・仙台に3-1で勝利して6戦ぶりに勝点3を挙げたヴェルディ。中3日の連戦も勢いを持続したいこともあってか同じ11名で臨む。システムも同様に14123を採用。
 対する新潟は前節・金沢に1-0で勝ち、7戦負け無しと好調を維持している。この日は舞行龍、松田、高木の3名が入れ替わり起用。14231システムで臨む。

前半

 前節、6戦ぶりの勝利で息を吹き返したかと注目したヴェルディの立ち上がり14411で守る新潟に対してハーフスペースで梶川や森田晃樹がボールを受ける良いプレーを見せ、相手守備ラインを突破してアタッキングサードへ入ろうと試みるも中をしっかりと固めた新潟陣形を崩すことが出来ず、前節の先制点のようなブロック中へ入ることが難しく手を焼いてしまう。ここで多少強引にでも入っていく積極性が立ち上がりから見られるかと期待していただけにちょっぴり残念ではあった。


 一方の新潟はボールを握ると好調さもあり、落ち着きじっくりと相手の守備位置を見ながらパスを回し様子を伺う。ヴェルディが2トップ化で1442で守る陣形に対して大外~ハーフスペースを連携で崩してPA内に人数をかけてフィニッシュへ持ち込む。序盤から右SH松田は対面する加藤蓮への仕掛けが目立ち、素直にクロスを上げると思いきや切り返しで中へ入るなど動きも加わり押し込んで行く展開となる。

 時間が経過すると、シュートが目立つ新潟が主導権を握り試合を進めて行く。GK小島も使いながらビルドアップを行ない、DHが最終ラインに下がりSBを押し上げる形も見せて行く。ここで光ったのが右SB藤原のポジショニングだった。ビルドアップ時にDH横まで上がり、さらに高い位置も取りヴェルディSHDH間に上手く立つ。ヴェルディは藤原を誰がみるか曖昧になり中盤を割られて縦パスを通されると、藤原がゲームメイクをしていく。

 すると26分、最終ラインからの縦パスが入ると藤原が良い位置でボールを受けて右サイドへ展開。松田が切り返しで中を向くとPA内の高木へパス。ボールを貰った高木は反転しながら左足を振りぬき新潟が先制する。ヴェルディは三男・大輔(山口)、長男・俊幸(千葉)、次男・善朗(新潟)の三兄弟に恩返し弾を喰らってしまった。

 先制点を挙げた新潟はその勢いに乗り左右サイド中心に攻撃を仕掛けると今度は左から展開されたボールを中央で受けた松田がこの日何度も見せていたキックフェイントでヴェルディの選手たちをキレイに体勢を崩しシュートを決めて差を2点と広げる。

これだけでは終わらない。右の松田だけでなく左の三戸もSB裏を上手くつき攻撃を仕掛けて行くと35分CKからの流れでPA内のクロスをファーで舞行龍が合わせて電光石火の3点目。

昨季0-7で敗戦を喫したヴェルディにはあの悪夢が蘇る最悪な流れを与えてしまった。新潟の選手たちは相手を見ながら、上手く喰いつかせてパスを出しておりスペースを作りそこに味方が走り、さらにパスを繋ぐ良い形が出来ていた。対するヴェルディは球離れが早かったり遅すぎたりで守備者からはパスコースを予測しやすくなっていたのだろう。

 また、SHSBの間で新潟は上手くボールを貰い、SB裏を使う場面も多く見られた。そして、SH松田と三戸は深すぎる位置を取らずに前方にスペースを残しつつ半身でボールを貰えていたことからそのリズムに乗ったままスムーズにドリブル移行が出来ており、攻撃に迫力が出ていた。

対するヴェルディは新井、杉本竜士がボールを貰う位置が高すぎたのか相手の背後スペースが自然消滅しており前向きの守備だけでOKという状況に陥っていた。

 前半終盤になってようやくチャンスが生まれ、加藤蓮が攻撃参加から味方を追い抜く動きでPA内に入りクロス。佐藤凌我がスルーして最後はファーで走りこんだ深澤大輝が狙い澄ましたシュートを放つも枠を捉えられず無得点で前半を折り返す。超決定機でこういうところを決めるか決められないかの積み重ねなんだよと悲観的な気持ちでハーフタイムを迎えることになった。

後半

 0-3と劣勢の中、ヴェルディはなんと4枚替えに出た。ンドカ、阿野真拓、バスケスバイロン、河村を投入して以下のような配置にした。

基本配置は前半と変わらないが、右サイドにいた新井を前節同様に左に回したことで一気に流れを手繰り寄せた。前節も右に居た時はまるでさっぱりでありこの日も・・・どういう意図で右でスタートさせているのかはとても気になるところである。

 3点ビハインド、若干のやけくそ感もあるかのように前がかり気持ちでスタートした後半。ヴェルディはボールを握るとCB馬場晴也が一列二列上がる独特な配置を取った。また、スピード活かしたドリブルを得意とする新井とバイロンの立ち位置をやや下げたことが功を奏した。ボールを持って前にスペースがあることで個人技が光った。

 すると、50分、左サイドから新井がカットインしてシュートを放つと相手選手に若干触れたかのような軌道を描きそのままゴールイン。1点を返した。

 新潟はフワッとした後半の入りになり、ヴェルディの勢いを止められない。ボールを奪うと素早く前線へパスを出し、DFの裏を取る。全体を押し上げて敵陣に入り圧をかけて猛攻に出る。2点目も時間の問題だった。左サイドでボールを受けた新井が早い段階でインスイングのボールを入れるとバイロンが見事な飛び出しから右足で合わせて差を1点とする。

 完全に押せ押せ状態のヴェルディ。攻撃参加する馬場晴也が上がっていくと中央から見事なスルーパスを入れる。これに反応し、抜け出したバイロンがGKとの1対1を落ち着いて決めてとうとう同点に追いついた。

 新潟はゲームを落ち着かせようと高、本間と立て続けに投入。ここがターニングポイントになった。同点に追いつき、さらに勢いが増すかと思いきやややトーンダウンしていき一方で新潟が交代選手の頑張りで盛り返していく。高が中盤で時間を作れば、本間は左サイドで脅威を発揮。流れを完全に取り戻した新潟は試合終盤に投入された矢村が豪快なミドルシュートを叩き込み4-3としタイムアップ。一方的な展開だった前半から一転した試合となった。

まとめ

 3点ビハインドの絶望的状況から怒涛の反撃で追いついたのだから、勝ちが欲しかった。サポーター以上に選手たちは相当悔しかっただろう。スコアは1点差であったが90分を通してみるとヴェルディの時間帯は20分程度だっただろうか、ほとんどは新潟が支配していたように内容に感じた。特に、上述のようにポジショニング(位置的優位性の確保)や相手を喰いつかせてのパス、連動性と言った組織的な部分での差は歴然としていた。
 ヴェルディは複数失点が多く失点数もリーグで悪い方から数えた方が早いくらいだ。トランジションで相手を上回れば一気に得点を奪うことが出来たことが証明され、「攻撃が最大の防御」というわけではないが、ボールを握っておくこと、陣地を奪う事で相手の攻撃機会を少なくする守備をもっと増やしていくことが必要だろう。
 GW連戦が終わり、リーグ戦も中盤戦に差し掛かってくる。ここからの連勝、連敗がシーズンを左右する局面だ。1週間空いて迎える次節・水戸戦での躍動を期待したい。