【雑感】2023年J2リーグ 第14節 対V・ファーレン長崎~念願のラインダンス~

東京ヴェルディ 2-1 V・ファーレン長崎

 このチームの節目は雨が多いのは何かの運命だろうか。「長崎は今日も雨だった♪」と毎年対戦するたびにふとつぶやきながら早10年。ついに掴んだ長崎の地での初勝利。雨のなかでの決戦を振り返りたい。

スタメン

 前節・磐田と0-0スコアレスドローのヴェルディは北島、加藤蓮、山田の3名がスタメン復帰。ベンチには負傷明けの奈良輪、佐川が入った。
 一方の長崎は前節・長崎に4-0で大勝。5連勝と好調でリーグ2位につける。ヴェルディにとって天敵とも言えるカイオセザールがスタメン復帰した。

前半

 上位戦線に踏みとどまりたいヴェルディにとって勝点差3で上へ行く長崎とは6ポイントマッチになる。GW3連戦の最終戦はここまでスタメン出場していた杉本竜士とエンゲルスでは無く北島と山田の若手を起用。SHスタートしていた森田晃樹もDHに配置して加藤蓮をSHに入れた。コンディションなのか調子の良さかなど変更の理由は分からないがこの日は起用されたメンバーの活躍が目立つことになった。

 ボール非保持時に北島と山田の2トップでいつものように1442で構えるヴェルディ。先述のコンビよりもさらにプレスやプレスバックの強度を上がり臨機応変に3枚4枚でビルドアップする長崎へ襲い掛かる。スプリント力もあるが守備意識、献身性に加えてこの出場機会をモノにしようとする意気込みが伝わるプレーぶりであった。長崎はボール保持、ビルドアップ時に2CB+SBやDH下りてきて3枚になったりSBが目一杯に開いて4バック形成と変化をつけてくる。後ろが4枚のときはヴェルディも2トップ+2SHと同数で当てれてプレスの迫力が出ていた。しかし、この日は降り続く大雨でピッチ上にも水溜まりが出来つつある悪コンディション。至るところでボールが止まり出すと、後方から繋ぐことよりもGK波多野を含めてロングボールを蹴り入れてリスク回避を選択。前線からの守備では持ち味を存分に発揮という訳にはいかなかった。

 対戦するたびにその圧倒的な存在感でいつもいいようにやられるカイオセザールが中盤には君臨。最前線には8得点で得点ランク2位のフアンマがいて、ロングボールのターゲットになる。前節の映像を見てもビルドアップの組み立ては行なうものの敵陣へ入るとフアンマの個人技やロングスロー、FKやCKのセットプレーでの得点が多い長崎でありこの大雨でさらに割り切ったように波多野がロングボールを入れる場面が目立った。ここに対してヴェルディはCB林、平と188㌢の長身DH綱島悠斗の3名で上手く挟み込み競り合いに対応してみせる。周囲の選手たちのセカンドボールへの反応も良くヴェルディがボールキープし、素早く攻撃へ転じることが増えて行った。

 ボール奪取すると左ならば加藤蓮、右はバスケスバイロンに当ててサイドからクロスボール供給もしくはCKを獲得する狙いが見られた。ヴェルディも前節磐田戦の前半と同様に守りから入ってセットプレーでの先制点を目指すことも意図しての攻撃であった。

 左右へのロングボールで攻めることに加えて長崎CB櫛引とヴァウドの動き方をよく分析した攻撃も見せる。サイドから攻められても基本的にPA幅からは出ないで自陣ゴール前でステイ、相手FWが下がってポストプレーしようとしても喰いつかないとスペース埋める守り方を見せる。これをよく見て岡野とヴァウドの間、櫛引と米田の間を突くような攻撃であったり、ボール奪取して楔のパスを入れると北島と山田が最前線から下がってライン間でボールを受けて前進する場面が見られた。ただ、全体的な押し上げが鈍く単騎突破を余儀なくされ、得点までには至らなかった。23分に、山田との接触で痛めた鍬先が負傷交代を強いられて秋野と交代する。

 30分すぎまではヴェルディが長崎陣地でプレーする時間帯が主であった。防戦一方になった長崎であるが、アバウトなボールからクリアミスで獲得した久々の敵陣でのスローイン。試合立ち上がりぶりくらいに岡野が時間をかけてロングスローを入れる。一旦、試合を止めて、時間をかけたプレーをすることで全体を押し上げる。そのあともロングボールからセットプレー獲得と徐々に盛り返していくと左で起点を作り中央経由し右へ展開。ここまで眠っていた笠柳がカットインして切れ味鋭いミドルシュートを放つもマテウスの好守。今季存在感を示す19歳の若手アタッカーが見せ場を作った。

 悪天候であったが時間経過ともにお互いにアジャストし、次第にゴールへ迫るも前半はスコアレスで折り返す。

後半

 ハーフタイムでのメンバー交代は両者無し。このタイミングで1枚目のカードを切ることが多い城福ヴェルディでは珍しい光景であった。
 勝利を目指し前半よりもギアを上げて前がかり気味になり、お互いにこのタイミングを待ってましたとばかりに仕掛けることでオープンな展開へ。ピッチは間延びし始めてスペースが多くなる。
 これを上手く活かしたのヴェルディだった。前半以上に長崎のDFMF間のスペースが目立ち、山田、北島がボールを上手く受けて前進してゴール前まで迫る。スタートから3列目起用されている森田晃樹が相手をいなすようにボールキープであらゆるところに顔を出し、ドリブルやワンタッチパスでリズムを作る。ここまであまり触れてこなかったが、SH起用時よりも中央に居ることで必然的にボールに関与する機会が増えてここ数試合に比べると良い動きを見せていた。サイドでは加藤蓮とバイロンも仕掛ける時間が作れ、難しい時は後方でフリーになるDH綱島悠斗へ戻し、そこからの展開で仕切り直しヴェルディのターンが続く。

 良い流れが出来ているヴェルディは北島に代えて佐川を投入。187㌢と上背有りパワフルなプレーが持ち味であるが彼を最前線におかずに依然として山田を配置。佐川はライン間でポストプレーを上手くこなしたり、力溢れるドリブルで突進する役割を担う。長崎ゴール前へ迫る展開を見せるなか右サイドでバイロンを追い越すように攻撃参加した宮原がクロス。これが米田のハンドを誘いPKを獲得。キッカーのバイロンが蹴ったボールは波多野に防がれるもそのこぼれ球がラッキーにもバイロンの目の前へ戻ってきて楽々プッシュしてヴェルディが60分に先制する。

 長崎は笠柳と加藤大に代えて澤田と都倉を投入。フアンマと都倉の2トップへ変更。パワープレー気味に2枚を最前線に並べて反撃に出るとすぐに効果が出る。右サイドからのロングスローで今度は佐川のハンドを誘い長崎がPKを獲得。これを投入されたばかりの都倉がマテウスにコースは読まれながらもスピードの速いボールを蹴り込み同点に追いつく。

 敵地でせっかく先制したのに同点に追いつかれて落胆するかと思いきやこの日の緑のイレブンは違った。直後のリスタートから前線へボールを運ぶとPA内の混戦から山田が決めてすぐさまヴェルディが勝ち越す。前節の土壇場での悔しさ、この日は攻守にわたりチームを牽引してきた山田へのご褒美は嬉しいプロ初ゴールとなった。

 勝ち越したことで再びエネルギーを取り戻したヴェルディ。追加点を取るべく、長崎のCBDH間のスペースを上手く使いながらもそのあとも攻撃に転じる。追加点が取れれば勝負ありという展開であったがそうはいかず試合終盤へ差し掛かる。

 本職はSBの加藤聖をSHで投入した長崎。左からの鋭いクロスを供給する狙い通りの攻撃からチャンスを作るもマテウスのスーパーセーブが炸裂。ヴェルディは山越、負傷明けの奈良輪と守備的な選手を投入し1点差で逃げ切り2試合ぶりの勝利。一方の長崎は6試合ぶりの敗戦で連勝は5でストップ。

まとめ

 攻守で相手を分析して戦えていた。2位長崎相手にこれまで勝ち無しのアウェイゲームという難しい状況での試合となったが試合運びも上手く念願の長崎での初勝利。これで勝点で並び得失点差で上回り3位浮上。着実にチーム力がついてきていることを実感する白星だ。長崎は連戦、悪天候、審判との相性で苦労したように見えたがここ先も勝点は積み上げて行くチームではあるだろう。
 ヴェルディの選手に目を向けると、水戸戦で今季初得点、前節磐田戦でもフル出場で活躍しこの日も先制点を挙げたバスケスバイロンは覚醒しつつあるようにプレー強度が高く好パフォーマンスが続く。この調子を維持してもらいものだ。プロ初得点の山田、J1経験者相手にも屈せずに存在感を示した佐川の大卒FW2トップはその結果以上に手応えと自信を手に入れたようにも思えるプレーであった。中盤戦に差し掛かり新戦力の台頭がチームの勝敗を左右する時期であり、嬉しい材料である。FWのシュート意識の高さはチーム全体にも好影響を与え、攻撃がアグレッシブにもなっていた。
 次節は東京クラシック、首位町田戦。今季を占う超重要な一戦になることは間違いない。好調チーム同士の熱戦に期待したい。