【雑感】2020年J2リーグ 第30節 対アルビレックス新潟~不思議な力~

東京ヴェルディ 2-2 アルビレックス新潟

 ここのところ絶不調のチーム、試合立ち上がりからの出来に暗雲漂いながらもゴール前の混戦から4試合ぶりの得点を挙げる。得点者の藤田譲瑠チマもプロデビューの地でのプロ初得点、これは”お得意様”の新潟との何かの縁なのだろうか。流れの中から奪った2得点はそれぞれ、その前のプレーからの再現性がありしっかりと結果になったと考える。試合を振り返りながら、その狙いを紐解いてみたい。

スタメン

前節・山形に0-4と完敗を喫したヴェルディ。守備崩壊よりも3試合無得点の攻撃陣が深刻である。この日は右SBに若狭を起用。中盤底に藤田譲瑠チマ、フロントボランチに山本理仁と古巣対戦になる佐藤優平を起用。最前線には小池、端戸と久しぶりに復帰した井出が入り、スタートシステムは14141で臨む。負傷離脱していた奈良輪も久しぶりにベンチへ名を連ねる。
 対する新潟は、ここ2試合連続引き分け中。この日のスタメンは前節・徳島戦と変わらない11名。トップ下に入る高木は古巣ヴェルディとの一戦となった。ベンチには1年だけレンタル移籍でプレーしていた森も入る。

画像1

誘導しているのか、されているのか

 昇格へ向けて僅かな望みにかける新潟が試合立ち上がりからアグレッシブにプレーをしてくる。

 ボール保持時のヴェルディは、前節山形戦では中盤底を1枚であったがそれでは周囲から狙われるため2枚にしてパスコースを増やしてマークを分散させる狙いがあった。ジョエルの脇に右SB若狭や左フロントボランチ理仁が立ち位置を取ることがある。福村が上がり、若狭が最終ラインに残る変則3バック化で、理仁がジョエルの脇に居る状況が多かった。ビルドアップ時のパスコースを作ることと、新潟トップ下の高木へのケアを果たす。

 対する新潟はボール非保持時に14231でセットしてチョンテセ、高木、中島、本間がヴェルディビルドアップ隊へプレッシングをかけて行く。若狭、祥平へプレスをかけながらマテウス、平の方向へチェイスしてパスコースを制限していく(新潟から見ると左から右方向)ことが多かった。ヴェルディを片サイドへ誘導することで高い位置でボール奪取してショートカウンターからゴールを狙っていく。

画像2

 試合開始1分、ヴェルディが自陣PA付近からビルドアップをしていくが、マテウスが福村を目掛けて蹴ったパスを新潟がカットして素早く繋ぎ、高木がシュートを放つもポスト直撃。11分には自陣左サイドでボールを持った井出が右サイドへ展開しようとするも中島がパスカット、持ち上がりシュートを放ち、こぼれ球にもチョンテセが詰めるもいずれもマテウスがセーブしてピンチを何とか防ぐ。

 新潟の圧に耐えて、次第にプレッシングに慣れてきたヴェルディ。誘導されたかのように見える平であったが、ここへプレッシャーをかけてくるのが中島1枚でありDH福田やSB田上が連動してこないことが多い事をしっかりと見極めて、福村と理仁が平へ寄っていくことでパスコースを作り中島のプレスを剥がし始める。

 平の縦パスが通り始めることでようやく敵陣でボールを扱えるヴェルディ。プレスをかける右SH中島の裏スペースが空き、新潟最終ラインと中盤の間で井出がボールを受けようとすることが増えてくる。フリーでボールを受ける井出は簡単に反転してゴール方向へ仕掛けていき、攻撃参加する左SB福村との連携から新潟右SB田上を背後を突くように斜めのフリーランからPA深い位置が入り込んでいく。過去の試合で手薄になっていたクロスへ合わせる枚数も井出が時間を作ることで、端戸と反対サイドの小池以外にも中盤の優平とジョエルが入ってくるなど複数名での対応をしていた。

画像3

 井出が何度か新潟PA付近まで攻め込む場面を見せていき、ようやく得点の匂いがしてきたヴェルディ。この流れを活かして先制点を挙げる。敵陣まで侵入していくがバックパスで最終ラインへ戻し組み立てし直す。複数のパスコースを視野に入れた平は、理仁では無くてトップに張る端戸まで一気に縦パスを通す。端戸は左サイドの福村へ展開。井出が斜めへ走り田上の裏を取ると左足でダイレクトで折り返してGK小島のファンブルを誘い、最後は詰めていたジョエルが押し込み、この日の初シュートでヴェルディが4試合ぶりに得点を挙げる。ジョエルは嬉しいプロ初得点!

 1点ビハインドになった新潟はチョンテセを中心に攻撃を仕掛けていく。ヴェルディ2CBの背後を狙う動きをみせていくと、30分にはチョンテセが抜け出してシュート、34分には右サイドからのFKに田上が詰めるがマテウスが好守を魅せる。しかし、踏ん張り切れず36分、左サイドからのCKをチョンテセが頭で合わせて同点に追いつかれる。

両サイドからの徹底した攻撃

 前半途中に負傷した理仁に代えて、後半開始から山下を投入したヴェルディ。井出を左フロントボランチに回して、山下が左ワイドに入る。一方の新潟もGK小島の負傷により藤田が入る。

画像4

 小池、山下とスピード溢れる選手を両サイドに配置したことで新潟SBの裏を取る狙いがさらに顕著になる。後半立ち上がりから山下が田上をスピードでぶっち切り、PA内へ切れ込んでいく。端戸も中央から左サイド斜めの動きを見せていく。交代したばかりなのか新潟GK藤田のゴールキックは右サイドタッチラインを割るようなボールを蹴る場面もあって安定性を欠き、ヴェルディ勝ち越し点の予兆を表しているかのようであった。

画像5

 48分、GK藤田が蹴ったロングキックは相手CBの平へ渡り、平は自陣中央でクリアするのでは無くてしっかりとヘディングでジョエルへ繋ぐ。ここで新潟の2列目までを飛ばすことになり、ジョエルは前方の優平へパス。すかさず優平は右サイドの小池へ展開。攻撃を仕掛けようとして高い位置を取ろうとしていたSB早川は裏を取られる形になり、小池はフリーでPA内右サイドからクロスを挙げて、最後は端戸がしっかりと合わせて勝ち越しに成功する。

 再び1点リードしたヴェルディは左ワイド山下中心に新潟ゴールへ襲い掛かる。前半に起用されていた井出以上にスピードがある山下に新潟は手を焼き、田上だけではなくてCBマウロもカバーリングをしていく。すると、中央ががら空きになり、クロスに飛び込むような動きが増えていき、流れを掴む。

 しかし、追加点を奪えずにいると、69分にまたしてもCKから失点を許し、試合は再び振出しへ。

 両者、PA内まで攻め込むも守備陣の身体張ったディフェンスで一進一退の攻防が続くと残り10分あまりでヴェルディはCB近藤を入れて変化をつける。セットプレーから2回やられていることでの高さ対策はもちろん、ロングボール対策、そして、3バック化で祥平を左サイドへ回してより攻撃的にいく。84分には攻撃参加していた祥平がPA内でシュート、その直後にはCKからニアで若狭がヘディングを合わせるも得点を決めきれない。
 試合終了間際には途中出場の松橋優安が左からのクロスを右サイドで折り返して同じく途中出場の森田晃樹がボレーシュートを放つもポストに嫌われて勝ち越し点を奪えずに2-2でタイムアップ。2度のリードを守り切れず、悔しい引き分けとなった。

画像6

まとめ

 久しぶりの得点を挙げるまではなかなかシュートまで持っていけず、雲行きが怪しい展開であったが、ようやくの得点に選手たちもプレッシャーから解放されたかのように後半は活き活きとしていた。これまでの公式戦で負け知らずの新潟相手には”不思議な力”があるのだろうかと実感してしまった。
 前節まで苦労していたビルドアップ、クロスへのPA内への侵入などは枚数を変えることで改善されている様子が見られたので継続性を見守りたい。怪我から復帰後、本調子では無かった端戸も得点を挙げたことで一安心だろう。やはり、高い位置で相手を背負いながらポストプレーをしてくれる選手が居るだけで攻撃の幅が広がる。
 一方、守備では、セットプレーからまたしても失点を許した。試合後の新潟選手コメントにもあるようにセットプレーの守り方に課題があることは相手からの分析されており、対策は必要である。