【雑感】2023年J2リーグ 第34節 対レノファ山口~ぼくたちの夢は終わらない~

東京ヴェルディ 2-0 レノファ山口

 長い長いトンネルを抜けてホームでは5か月ぶりに訪れた歓喜。試合序盤からエンジン全開で良い入りが出来て得点を挙げて主導権を握りそのまま勝利した試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・金沢に3-0で快勝したヴェルディ。メンバー、配置いずれも変えず同じ11名で臨む。ベンチには奈良輪が復帰した。
 一方の山口は前節・水戸に1-2で敗戦。生駒が出場停止でヘナンが代わりに入る。神垣、成岡、五十嵐、梅木もスタメン起用され、計5名を入れ替えて臨む。

前半

 前節3バックスタートだった山口であったがこの日は4バックの1442を採用。中盤の枚数を増やして厚みある攻撃をしたかったということだったがホームのヴェルディがそれを上回る気迫があった。アップ開始前に選手+監督コーチも一緒にサポーターへ挨拶してそのまま円陣を組んでピッチへ向かう。5か月勝ち無しの状態に何かを変えたいとチーム一丸の気持ちが試合前から感じられた。

 キックオフ直後から出力高く、山口へ襲い掛かると4バックの左SBキムに対して中原がピン留め、くいつかせてここで1対1を作り仕掛け、インナーラップする齋藤へパスを出してヘナンを引っ張り出してのクロス。もしくはハイラインの背後へ抜け出す染野へのパスと複数の選択肢を持った攻撃を披露。

 3分、自陣から繋ぎ宮原、齋藤とパスが渡り右サイドに張る中原へ。キムがくいついてきて生まれたパスコースを通すようにハイラインを敷く山口最終ラインの背後にダイレクトパスを入れて染野を走らせる。抜け出した染野は関との1対1になるもシュートを決めきれなかった。完璧な崩しから決定機に至るも仕留めきれない勿体ない場面だった。

 山口がボールを持ってもボールホルダーへの素早い寄せ、山口のミスもありヴェルディが再びボールを握る機会が多い。山口は前線からプレッシングかけに行くも1列目と2列目と3列目の連動性が薄く、ヴェルディの平や谷口栄斗を中心とした最終ラインに左右に揺さぶられてコースが空くと縦パスを通されて一気にピンチになっていた。全体がコンパクトになっているのでスペースに大きく展開されヴェルディがPA内まで攻め込まれる場面が多々あり。2DH神垣と成岡は縦スライドでプレスするのは良かったが、誘導されるようになってしまっててその空いたスペースに斎藤や長谷川に使われ放題だった。

 ヴェルディが押し気味に入ると、10分、この日はじめてのCK。右サイドから中原がインスイングのボールを入れるとファーサイドで固まっていた選手たちが飛び込み最後は谷口栄斗が頭で合わしてヴェルディ先制。ホーム勝ち無しの重苦しい雰囲気の中、秋田戦以来の先制点が立ち上がり早い時間に入った。

 この1点で完全に主導権を握ることをヴェルディは成功した。

 そのあとも右サイドの中原がキムを引き付けて齋藤がインナーラップでヘナンを引っ張り出して右からクロスという崩しが目立つ。ポジションングセンスが冴えわたる齋藤が間、間に上手く顔を出してくれてリズムを作る。長谷川が加入したとは言え、前線からの守備スイッチやパスの受け手、ボールへの飛び込みを考えると齋藤が真ん中の方が合っているのだろう。

 前節終了後に結婚を電撃発表した主将の森田晃樹。小柄ながらも身体の強さと入れ方の上手さでボール奪取出来ることが増えてきた。稲見の守備が目立つなか着実にスキルアップしている。攻守において中盤が流動的にプレーすることで山口の的を絞らせず一方的なペースとなる。

 すると25分に2点目が生まれる。右サイドからのクロスに、間に立つ齋藤が頭で逸らし中央へ。浮き球を山口DFにヘディングでクリアするもそのこぼれ球からの混戦に素早く反応した稲見が左足振り抜き追加点。前半は山口の選手たちの集中力が欠けていたのかプレーが止まることが多かった。前と関が気持ちを切らさずにプレーしていてなんとか2失点で免れたもののそれ以外にも被決定機は幾度もあった事態だった。

 飲水タイム明けから山口は河野を左SHのような配置にして14141へ変更した。しかし、ボール非保持時はあまり効果出てないプレス強度が緩く、カラーコーン守備のようになり、DAZN解説の森勇介が云うようにヴェルディの崩しの練習状態になってしまった。

 29分、左サイドで起点を作ると、長谷川がインナーラップで左サイドを突破し、PA内に侵入しシュート。その直後には晃樹も同様のプレー。右サイドでやっていたことを左サイドでも繰り広げる。

 31分には谷口栄斗が持ち上がり中央を切り裂く縦パス。パスを受けた晃樹がダイレクトで縦へ繋ぐとそこから染野が抜け出すもシュートには至らず。結果として勝利したから良かったのものの、前半の何度かあったチャンスに染野がしっかりと決めてくれるようにならないければと物足りなさを感じてしまうこともある。

 2点ビハインドの山口は試合開始からボール保持時、神垣が下りて2CBと3バック形成して13142となる。ヴェルディは1アンカーとなる成岡を潰しにかかり、山口は高い位置を取るSBがIHとの連携でサイド攻撃を仕掛ける構図だ。1442で守るヴェルディは13142でビルドアップする相手にはライン間に立たれてしまい苦手としており、この日もサイドで数的不利になり追われる守備になってしまった。

 吉岡と五十嵐が中央でボールを経由出来るようになり、そこから梅木と河野を走らせてチャンス作れるようになると、45分、右からの崩しに最後は梅木のシュートもマテウスがセーブ。山口にとっては前半最後にしてようやく良い崩しになったが2点リードでヴェルディが折り返す。

後半

 相手を圧倒する前半45分だったヴェルディ。後半頭からは長谷川に代えて新井投入した。長谷川は軽い熱中症の疑いがあったようで大事を取っての交代になった。

 後半もライン間で上手く立ちフリーになる齋藤へボールを集めるヴェルディ。齋藤は交代出場の新井へ展開して左からのサイド攻撃で追加点を奪いに行く後半の入りだった。横パスを繋ぐことで両SB加藤蓮と宮原が攻撃参加する時間が作れて厚みある攻撃をするもゴールネットは揺らせない。

 54分、山口は前に代えて野寄を投入。左SBだったキムがCBに下りて前節と同じ3バックへ変更する。右サイドに入った野寄は高い位置を取り、ドリブルで仕掛ける対面する新井へ守備を意識させる。
 システム変更した山口に対してマークが曖昧になったこととボールを大きく動かすことで山口がリズム作ることで新井の背後を使って野寄がボールを貰い、右から仕掛ける攻撃が増える。セットプレーのチャンスに梅木に代えて長身の皆川を投入。次のセットプレー時にはヴェルディも平と齋藤に代えて千田と山田を投入する。平はイエローカードを一枚貰っていることでエアバトラー千田を起用し、山田には前線へ配置することで攻守のスイッチを再び入れて欲しい狙いがあった。

 右サイドから押す展開の山口は沼田、池上、佐藤謙介と実力者を投入。本当はスタートから出てる方が敵からしたら厄介ではあるが、短い時間でも技術の高さは健在であった。

 同点やビハインドで投入されガンガン仕掛ける意味では抜群の存在感を魅せる新井も守備に追われるとまだ苦しい部分もあり、その新井をフォローする意味もあったのか左SBにベテラン奈良輪を入れて試合を締めにかかるヴェルディ。

 84分、右からのFKに皆川がヘディングで合わせる。クロスバー直撃でヒヤリとするも途中出場の千田、奈良輪に変わったヴェルディ最終ラインは最後まで集中力高く跳ね返す。終盤には染野に代えて河村を投入。力強さ、強引さでボールを収めて時間を作ってくれることで押され気味になったところを盛り返してくれた。

 後半はスコア動かず2-0のままタイムアップ。ヴェルディが嬉しい5か月ぶりのホーム白星を手に入れた。

まとめ

 良い試合の入りから先制、追加点で主導権を握りそのまま逃げ切った。少し涼しくなったこともあったのか7月8月の試合に比べるとプレー強度が上がったようにも見えた。それ以上にこの試合に懸けるクラブの気持ちの強さを十分に受け取ったものであった。山口ハイラインの最終ラインの背後、SBCB間と相手の嫌がるところを上手く突き決定機をしっかりとモノに出来たことが勝負分かれ目だっただろう。
 山口も攻撃の形はできていたがあと少しというものであった。守備時のプレス強度や球際の寄せなどには前節の金沢同様にチーム状態の悪さがそのままピッチでも表れてしまい残留争いにどっぷりと浸かってしまっている。
 上位陣へ喰らいつくためにも勝ち続けなければいけないなかで鬼門となっていた味スタでようやく勝利。呪縛が解けた。残り試合、ラストスパートへ入る。