【雑感】2020年J2リーグ 第13節 対松本山雅~絶対に勝てるじゃんけん~

東京ヴェルディ 3-0 松本山雅

 何かと悔しい思い出が多い松本相手に完勝。サポーターにとっても嬉しい結果になっただろう。引いて守るであろう相手に予想を覆す完勝劇に繋がった理由を試合を振り返りながら探ってみたい。

スタメン

 2連勝中のヴェルディ。この日はフレッシュなメンバーで臨む。ここまで主軸として活躍する端戸を休養、井出と佐藤優平をベンチに温存。フロントボランチに森田晃樹と山本理仁、前線の中央には井上潮音、そして左ワイドにはプロ初出場・初スタメンの松橋優安が起用された。リベロの藤田譲瑠チマを含めてアカデミー卒の若い選手たちが多く起用して14141システムでスタート。
 対する松本は前節・福岡に勝利して6試合ぶりの白星を挙げるがここまで低空飛行が続いている。WB2枚入れ替えて、鈴木と前が起用され、13421システムでスタート。

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どうやって中央を崩すのか

 大方の予想通り、『ボールを持ち攻撃するヴェルディ対守備を固めてカウンター攻撃の松本』という展開になる。
 ヴェルディはボール保持時に最終ラインを4バックもしくは奈良輪が上がり3バック化する。リベロ・ジョエル1枚を経由して1列前に5枚、6枚が並ぶ。最前線は不在になることもあり14150や13160と言った表現になるだろうか。松本は1541と引いた形で守備ブロック形成して1トップと2SHになる3枚がプレスかけるが、さほど強くもなく、自然とリトリートして松本陣地にフィールドプレーヤー全員が入ることも珍しくなかった。

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 ヴェルディの最近の対戦相手はピッチ横幅を4枚で守る1442という形を取るクラブが多かっただけに5-4ブロックをどのように崩すのか、崩し切るのか注目した。

  ボールを回し、松本の第1守備ラインである前線の選手たちを交わすようにヴェルディ最終ラインが組み立てをすると、サイドへ展開することよりも中央を経由する攻撃が多かった印象がある。フロントボランチの理仁と晃樹が松本2DHの脇でボールを受けるが相手のプレッシャーや陣営が崩せないと判断したら再び戻すもしくはサイドへ展開してリスタートする。これの繰り返しからゴールへ迫る。
 ①理仁と晃樹がボールを受けようとすると松本2DHがマークに来ると、そこのスペースが開くから潮音が下りてきて潮音がボールを受けて反転して前へ仕掛ける。

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 ②マークにつかないとフリーでボール貰える。③もしくは対面のCBを釣り出すことが出来れば潮音やワイドの小池、優安が斜めに走りがそのスペースを狙う。

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 このようにボールを持ち主導権を握ることで相手を見ながら3パターンの選択肢を上手く使いながらゴールを目指す。
 しかし、松本の守備陣がコンパクトに守り、適切な距離感をとる事でスペースをあまり与えなかったため崩し切りことまでは出来なかった。前半はお互いにトランジションからのカウンターでチャンスを迎えることになった。
 4分、ショートカウンターから晃樹が左へ展開してプロデビューとなる優安が仕掛けてカットインしながらコントロールシュートを放つもポストに嫌われる。17分には自陣でボール奪取すると晃樹が長い距離を運びそのまま左足で強烈なミドルシュートを蹴り込むも圍にセーブされる。対する松本も11分、カウンターからセルジーニョのドリブルから攻撃参加した前が左サイドを上がりシュートを放つもマテウスが確りとセーブ。スコアレスで前半を折り返す。

緊張の糸が解けたら

 前線からのプレス強度を上げるかのように後半開始から松本は3枚替えをする。高橋、阪野、久保田を投入。前が左WBからDHへ移り、高橋が左WBに入る。後半も変わらずボールを握るヴェルディも55分に井出と山下、61分には佐藤優平を投入して勝負に出る。

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 スピードある山下のスプリントからの裏抜けの動き、井出と優平の巧みなボールコントロールから攻撃の質を高めて行き、松本守備陣へボディブローのように疲労を与えていく。
 そして、歓喜の時が訪れる。68分、松本が自陣深い位置からのスローインをクリアしたこぼれ球をジョエルが回収。松本の守備陣営が整わないスキを見逃さず余裕をもって2DHの間に構える潮音へパス。CBを釣り出すことが出来、潮音は斜めに走りながらPA内へ入る山下へパスを出すと、身体を反転させながら右足を振りぬきシュートを流し込み見事に先制する。前半からの狙いが見事に当たり崩すことが出来たゴールだった。持ちこたえていた松本守備をついて突破することに成功した。

 ようやく先制点を挙げたヴェルディ、ここから試合を一気に支配していく。73分、ジョエルから攻撃参加した福村へ縦パスを入れる。一度はボールを失うも潮音がすぐさま奪取すると、福村とのワンツーで相手を置き去りにして左サイドからGKとの1対1を落ち着いて決めて追加点を挙げる。

 松本は米原を投入して4バックへする。後ろの枚数が減ったことがヴェルディの攻撃を加速させる。右サイド小池、左サイド山下と福村が幅を取り左右に揺さぶりながら敵陣でボールを繋ぎ80分以降は松本にほとんどボールを触れさせないくらいに圧倒する。
 84分、2分近くヴェルディがボールを繋ぐと左サイドでボールを持った井出が大外から中へ走り込む福村へノールックパス。走り込んだ福村は倒れながらもグラウンダーの速いクロスを入れて右ワイドの小池が流し込み3点目。ヴェルディが目指すワイド⇒ワイドの崩しから追加点を挙げる。

 後半のゴールラッシュ、ボール支配率70%と圧倒する内容で終わってみれば3-0の完勝で見事に3連勝を飾った。

まとめ

 どうやって松本守備陣を崩せるかという戦前の注目ポイントに前半は手こずりながらも確りとした狙いが見えた。後半も継続していくことで徐々に相手に綻びが生まれ、見事にチャンスをモノにした。その後は自分たちのペースを掴み完全に主導権を握る完勝劇となった。サイド攻撃だけでは無くて中央突破でも数的優位を作る方法がうまく機能したと結果である。
 守備陣も相手攻撃陣にほとんど仕事をさせず2試合連続完封シャットアウト。だんだんと安定感が増してきた。そしてこの試合では連戦を考慮して主軸を温存して晃樹、理仁、ジョエル、優安とアカデミー卒の若い選手たちをスタートから起用。このメンバーで勝ち点3を獲得出来たことが大きい。彼らも物応じせずに堂々としたプレーを披露して今後の活躍にも期待が持てる。7連勝と絶好調の北九州との次節がとても楽しみになる。