【雑感】2023年J2リーグ 第37節 対ザスパクサツ群馬~色を消し合う痛み分け~

東京ヴェルディ 0-0 ザスパクサツ群馬

 内容、結果ともに今季を象徴するようなゲームになってしまった。群馬も良いサッカーをしていたことは間違いないが、課題が顕著に出てしまった試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・藤枝に2度リードしながらも追いつかれて2-2の引き分けに終わったヴェルディ。林と奈良輪の2名がスタメン復帰。ベンチには山越と佐川が入った。
 一方の群馬は水曜日に試合中断した金沢との再開試合を行ない1-1引き分け。契約上、杉本竜士が出場不可。高木がスタメン入りで前節から1名を入れ替えることで臨む。古巣対戦になった内田がベンチ入りした。

前半

 リーグ戦、天皇杯と合わせて3回目の顔合わせとなったカード。シーズン終盤に昇格を争うことになるとは開幕前には想像もしていなかった。ヴェルディから期限付き移籍をして左SHでレギュラーになった杉本竜士がこの日は契約上、出場不可。この位置にはトップを務めることも多い川本が起用された。岡山時代も含めてヴェルディ戦でよく得点を決めるいわゆる”キラー”ぶりを発揮し、いつもやられるこの男に立ち上がり早々にサイドを抉られる。得意のサイド攻撃をいきなり仕掛けてくる。

 大槻体制になり可変システムを取り入れ、ボールをしっかり繋ぐ攻撃とブロックをしっかりと固めた守備で組織力高く、クラブ史上最高のシーズンを過ごしている群馬。ボールを握ると前回対戦同様に右SBが1列2列高い位置を取り13241となる。この日、右SB起用された川上はスルスルと上がり前線に位置を取る。右サイドで張るレフティ佐藤はタッチラインに足を踏むくらい身体を開き、左足でボールを扱いやすいようになり、ダイレクトで中へ入れたり縦へ仕掛けたり、川上と連携したりとJ2挑戦1年目ながら充実なシーズンを表すように自信をもってプレーしている。

 ヴェルディはボール非保持時1442で構え、染野と齋藤が2トップ化。中塩が残って3バック化する群馬に対してプレスをかけていくが横幅目一杯に広がってビルドアップするためスプリントする距離が長く繋がれることが多い。天笠と風間の2DHがその前にいるため長谷川や中原、稲見がケアしながらサイドへ広がる佐藤と川本へプレスする。しかし、ここも距離が開いているため追いつかないことが多く、こういったところから佐藤や川本にボールを運ばれた理由になるだろう。

 ただ、群馬の攻撃をヴェルディ最終ラインが跳ね返すことが多く、ボールを握る比率はヴェルディの方が圧倒していた。1442で構える群馬の様子を見るように林と谷口栄斗が縦パスを出し入れして染野が下がってくるも相手は喰いつかず4-4ブロックを崩さない。それならばと間、間に上手く立ち縦パス、反転して前を向くという流れる攻撃をする。8分、森田晃樹が齋藤とワンツーでPA内へ入っていき、染野も絡みながら、攻撃参加した稲見へ。決定機であったが稲見は枠を捉えられず先制点のチャンスを逃した。流れるような良い崩しであり確りと仕留めたかった場面である。

 サイド守備を捨ててもOKと言うように城和、酒井を中心に真ん中を固める群馬。ヴェルディが長谷川と奈良輪、中原と宮原の両翼から攻め込むものの中の壁が分厚く牙城を崩せない。染野が1回だけヘディングシュートを放ったくらいでそれ以外はまるで敵わなかった。ならばとカットインしながらシュートを試みて、中原が得意の形から狙うも櫛引に防がれ得点には至らず前半スコアレスで折り返す。

後半

 ヴェルディは後半から長谷川に代えて加藤蓮を投入。そのまま左SHに入る。夏に加入してからスタメン出場が続く長谷川。昨季、横浜FCをJ1昇格へ導いた面影はどこへやら周囲の期待に応えられず低調なパフォーマンスが続く。負傷明けでの加入であったもののこの大事な局面で物足りなさを感じてしまう。

 大学サッカーがある新井が所属元の東洋大へ帰り、北島は欠場し、ゲームチェンジャーが出来る選手が不在ということで前節スタメンだった加藤蓮がベンチスタートになったのだと思う。左サイドに入った蓮はいきなり縦へ仕掛けてのクロスと単騎突破を魅せる。サイドからのクロッサーの役割もありながらも今季は右からのクロスに点で合わせるボックス内での迫力に期待され高い位置で起用されているのだろう。しかし、この日は右の中原や宮原からチャンスメイクは多くなく、中の城和と酒井を中心とした強固な群馬の守りを前にこれと言った見せ場を作ることは出来なかった。

 押されて自陣で守る時間帯の長い群馬であったが、左サイドへ選手を寄せると広大に空いた右サイドのスペースを使い、佐藤と川上がスプリント。背走する谷口栄斗が振り切られることが2回あったのは気がかりでカウンターからチャンスを作り反撃に出る。

 60分すぎにイエローカードを受けた奈良輪に代えて綱島悠斗を投入したヴェルディ。DH稲見がこの日も左SBへ下りた。前節に続くこの采配。稲見は機動力と身体の強さを活かすように流れの中でボール奪取守備が上手いのでSBのように静止するようなマッチアップではその持ち味は薄れてこの日もあまり機能したとは言えなかった。中盤の機動力も薄れ、途中出場の綱島悠斗はガタイの良さもありダイナミックなプレーをするも足癖の悪さがまたも出てファウルを何度も犯しては不用意なイエローカードを貰ってしまった。攻撃時にPA内での高さという期待もありながらも堅守の群馬に影を潜めてしまい目立つことは出来なかった。

 ならばと元気印の河村、長身の佐川、平を入れて後方を3バックのようにして谷口栄斗を前線に上げてサイズある選手、多少無理が効く選手を前に集めるもののパワープレーの精度を欠き、セットプレーもあまり奪えず、最後まで決定機を作ることは出来ず無念のスコアレスドローで痛み分けとなった。

まとめ

 順位の近いチームが勝点伸ばせないなかで、3試合連続ドローとお付き合いするよう勝点を伸ばし切れず勿体ない状況だ。攻撃の駒の質の物足りなさ、再現性の低さはライバルクラブに劣ってしまうものでここ一番で頼れる存在が居ない今季のチームを痛感してしまう直近の戦いぶりだ。
 だからと言って選手を入れ替えて配置も変えるも上手く行かず、むしろ、いじりすぎてしまい選手たちも落ち着いてプレー出来ていないようにも見えてしまった。サイド攻撃を意識しすぎるあまり、深さを取ったり、中央突破、ミドルシュートの意識に欠けてしまった。
 この試合では主審の判定やゲームコントロールは頂けなかったがイエローカード4枚もらったのは残り試合を考えると残念である。累積警告が溜まり肝心な場面での出場停止はなんとか避けて欲しい。大分、千葉、磐田と上位を狙うクラブとの3連戦、3連勝マストだ。