【雑感】2020年J2リーグ 第36節 対アビスパ福岡~真っ向勝負の勝ち点1~

東京ヴェルディ 1-1 アビスパ福岡

 冬のような寒さとなった水曜ナイター開催の一戦。3連勝中のヴェルディは昇格争いを繰り広げる2位福岡相手に堂々と自分たちのサッカーを披露。相手を見てサッカーをするという約束事に忠実なプレー内容を振り返りながら試合をみていきたい。

スタメン

 3連勝中のヴェルディは中2日となる。福村を左SB、山本理仁を右フロントボランチに起用して、出場停止明けの山下を左ワイドに入れて連戦であるが3枚の入れ替えのみ。システムはいつも通りの14141を採用。
 対する福岡は前節山形に1-1の引き分け、セランテス、福満、石津、重廣を入れ替えて臨む。2トップ山岸と遠野が縦関係になる1442システムでスタート。

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真逆に近い両者の崩し方

 試合立ち上がり、攻勢に出たのは福岡だった。ロングボールを蹴り込み、前線の山岸がポストになる。山岸がボールを収めると2トップ縦関係になって少し下がり目の遠野、両SH福満と石津は比較的近い距離感を形成してそのこぼれ球を繋ぎフィニッシュへ持ち込む。深さを作る動きも山岸が行なうため2列目になる選手たちは前を向いて容易にプレーが出来た。

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 または、SB輪湖とサロモンソンが高い位置を取り、最終ラインからの斜めのパスを受けてSHとの連携した崩しからクロスボール供給してチャンスを作る。

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 この2パターンの組み合わせが主となり攻撃を仕掛けていき、先制を狙い立ち上がりからアグレッシブにプレーしていくがゴールを奪うことが出来ない。

 福岡の序盤の反撃を凌いだヴェルディが徐々に試合を落ち着かせ始める。この両ワイドで起用された小池と山下はタッチライン際まで大きく開き幅を取り、最終ラインからの対角線上のボールを受けて仕掛けていく場面が出てくる。特に左サイドに入った山下は対面するサロモンソンとのスピード勝負へ持ち込んだり、時間を作って井出や福村との連携などを見せる。その結果として左サイドからファーサイドを狙ったクロスが目立ち小池や時にはオーバーラップした高橋祥平がシュートすることがあった。

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 ビルドアップ時には、福岡・長谷部監督の代名詞とも言える2トップ+ボールサイドのSHが縦プレスを上手く見極めてボールを繋いでいく。3枚でプレスをかけることで1442⇒1433となることで生まれるスペース(SHDHやDHDH)に縦パスを入れて端戸や井出がボールを受けてゾーン3の攻撃へ転じて行く。縦パスが入ることで福岡守備陣形を乱すことに成功すると、細かく繋ぎシュートへもっていく。右SB若狭が攻め上がってカットインして左足シュートでポスト直撃と言った惜しい場面も作る。

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 福岡中盤を広げて縦パスを入れる。狭いと見れば斜めのパスで山下と小池へ繋ぐ攻撃を繰り広げるも得点を奪えずスコアレスで前半を折り返す。

 両者ともにボール非保持時1442で守り似たようなプレスのかけたの守備でを行なうが、その崩し方は両極端に近いものであった。

確立されつつあるコンビネーション

 前半40分すぎに相手選手との接触で負傷した理仁に代わって森田晃樹がそのまま同じ位置に入って後半が始まった。主導権を握ったヴェルディは、3連勝中に見せてきた様々な攻撃の崩しを見せる。

 京都戦から何度も再現されてきている縦パスが効果発揮する。ビルドアップ時に若狭、祥平、平の3バック化すると福岡のプレスを引き付けて、空いたスペースに後半から投入された晃樹や端戸、井出が下りてボールを貰う場面が後半からの短い時間帯でも何度も見られ、『攻めの縦パス』が定着してきた。特に左SH石津に対しては小池が大外に張ることで若狭が縦の晃樹と斜めの小池の2つのパスコースを持つことで優位性を作ってパスの出し入れが出来ていた。

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 また、山口戦の決勝点のようにハーフスペースから反対のファーサイド目掛けてクロス。この日は井出が左から右足でふわりと浮かせたボールで右サイドの小池を目掛けて蹴り込む。わずかに合わなかったものの惜しい場面であった。

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 多様な攻撃パターンを見せるヴェルディが先制点を挙げる。若狭が対面する石津を引き付けて、大外で張る交代したばかりの佐藤優平へ斜めのパスを入れる。優平はCBSB間から裏抜けを狙う小池へパスを通すと、端戸が深さを取るようにCB上島を引き連れることで背後にスペースを作りマイナスのクロスを山下が落ち着いて右足でシュートを決める。まるで群馬戦の得点のようであった。

 堅い守備を誇る福岡を崩して見事に先制したヴェルディであったが、歓喜はあっという間に終わってしまう。山岸の個人技からPA内深い位置まで抉って折り返しのクロスを入れると福村のクリアが晃樹に当たってそのままゴールイン。すぐに1-1とスコアは振出しに戻る。

 同点となった福岡はその直後にも遠野が強烈なシュートを放つなど自分たちの時間になっていく。逆転を目指してフアンマ、増山とフレッシュな選手を投入すると攻撃陣の個人技からの強引な仕掛けだけでは無くて守り方を変えたことでヴェルディの勢いを封じ込めて行く。
 ここまでは2トップ+SHでプレッシングをかけていたが、SHの縦スライドを自重して中盤4枚がリトリート気味になり壁を作ることでスペースを消して縦パスを塞ぐことに繋がった。

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 こうすることで主導権を取り戻した福岡が猛攻へ出るも、何とか凌いだヴェルディ。奈良輪、松橋優安を入れて左サイドのメンバーを変えて試合終了間際に攻勢に出るもゴールを奪えず1-1でタイムアップ。お互いの良さが出る手に汗握る一戦は勝ち点1を分け合う結果となった。

まとめ

 引き分けに終わりJ1昇格の数字上での可能性は極めて低くなった。ただ、自分たちの狙いを持った攻撃サッカーで2位福岡相手に互角に戦い合えたことは見ていて面白い内容であった。上述のとおり、攻撃ではここ数試合で実を結んでいたパターンがこの日も何度も見られて再現性がかなり上がってきた。出場停止明けの山下は出場試合3戦連発と一気に調子を上げており自分のスタイルを確立しつつある。これには小池、端戸、井出、優平らの連携からの崩しが向上していることも忘れてはならない。積み上げてきたものが成果として出ていることは喜ばしい事である。
 不運なオウンゴールを献上したものの守備陣は屈強な福岡の選手たちと球際で激しく渡り合いそれ以外の攻撃は封じ込めた。
 目標が遠のいていき、モチベーション維持が難しくなってきたが、試合後に発表されたように永井監督の続投が決まり将来に向けて更なる質の追及に期待したい。